あのポプラの上が空 (講談社文庫 み 6-11)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (350ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061852648

感想・レビュー・書評

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  • 人間というのは弱い。
    あんなことを言わなければ仲のいい夫婦で一生を終えることもできたかもしれないという
    陶吉のことばがあったが、
    人間は罪ひとつなく人生を終わることはないのかもしれない。
    そして誰しもが何かに傷ついて、悩んで、逃げたくなるような時がある。

    覚せい剤というのは自分にとって身近なものではなく、
    登場人物たちの行動は常軌を逸したものではあったけれど、
    人間の弱さというものや人間関係の複雑さというものについて考えさせられた。

  • うちには宗教がない。
    ハッとさせられる言葉ですね。

    薬物中毒者が家族にいる恐怖が余り伝わってきませんでした。
    最近も薬物使用で話題になっているスポーツ選手がいましたね。
    弱いから手を出してしまうとか、本当に言い訳以外の何物でもないと思います。

    三浦綾子作品の良さが今一出切ってない作品だなぁ。

  • 大変な家だ。家業を守るためには、子供の生き方を親が完全に掌握するしかないようだ。

  • 「この家には宗教がない」がキーワード。
    医師・薬剤師一家と同居人の予備校生の物語。
    宗教、戦争がストーリーに絡められている。

  • テレビのドラマを見ているようで、一気に読んだ。

  • 主人公は医師を目指す青年、惇一。
    父親を亡くした惇一は亡き父の戦友である陶吉を頼り、東京から北海道行きの列車に乗る。
    陶吉は戦場で惇一の父に重病にかかっていた所を助けてもらった事を恩義に思い、何くれとなく惇一一家に援助をしてくれた人。
    今は薬剤師として成功し、息子は病院院長である陶吉は父親を亡くした惇一を自宅に居候させ学費の面倒をみると申し出てくれた。

    そうして居候する事となった陶吉一家は家族がそれぞれに変わっていて、気持ちもバラバラなら生活時間もバラバラな家族。
    それは貧しく狭い家ながらも心の通い合った家族の中で暮らしてきた惇一には理解しがたいものだった。

    陶吉は包容力とユーモアを有する人物だが、どこかつかみきれない所がある。
    その息子で病院長である浜雄は初対面の惇一に一瞥もくれず無視したといういきさつがあり、惇一には気重な存在。
    浜雄の妻である那千子は日によって色とりどりのかつらを変える、厚化粧の女性。
    二人の娘である初美は妙にさばけた所があり、惇一が再会を楽しみにしていた景子は乱暴な言葉づかいの拗ねた不良少女になっていた。
    そして、初美に言わせると、この一家の癌は陶吉の妻である式子だと言う。
    やがて惇一も陶吉の家で暮らす日々の中、自然にその言葉の意味を知る事となる。
    それは純粋な青年である惇一にとってあまりに衝撃的な出来事だった-。

    人というものはどれほど弱く、業の強いものであるか-それを分かりやすく描いた話。
    この本を読んで私が思ったのは、人が人を本当の意味で許すとはどれだけ難しいかという事。
    陶吉は大人物だが、そんな人物でも若い時は過ちをおかしていた。
    たった一つの過ち-それを妻の式子は許す事ができない。
    それが全ての出来事につながっている。
    そして、その根底には戦争という非常で残酷な出来事が絡んでいる。

    たった一つの出来事が自分の子孫をも破滅に追い込むような事態に発展してしまう。
    人が人を許せないという事はどれだけ根強く罪深い事であるか。
    個人だけのものでは終わらないのだと・・・これを見て感じました。

    それでも、一時はグレながらも物事の本質をしっかりと見つめ、向き合った景子という女性に希望を感じる。
    ドロドロした話ながらも、北海道の自然の描写の壮大さに救われる、そんな話で、それはそのまま物事を複雑にする大人たちと景子のような純粋な存在の対比のように感じられました。

  • 早くに父親を失い、大学への進学を諦めていた主人公は、亡くなった父親に命を助けられたという父親の友人の援助によって、大学進学の夢を果たす。父親の友人と名乗る病院長の男の家に下宿をしながら主人公は医者を目指すのだが、下宿先の家庭事情には、決して外へもらせない秘密があった。病院を経営する立場でありながら、覚醒剤、麻薬に蝕まれていく家族。家族の絆の崩壊が描かれている。ラストはいまいちしっくり来なかったけど、ドロドロ具合にはまった。本の中のお話としては、このドロドロ感が面白いです。

  • 病院・薬局経営の一家に大学生の主人公が居候する。
    でもその一家は麻薬汚染されていた。

  • 今から10年程前の作品なだけあり、古風な感じが出ている。
    覚醒剤や麻薬の恐ろしさをもう少し強く表現してもよかったのではないかと思ったが、それよりもこの物語のテーマは「生きることの意味をさぐり、人間の絆を問う」こと。
    初美や景子の、家族に対する思いが何とも切ないように思われた。
    読みやすかったが、自分の中でもっと深く考えを掘り進められる気がする。

  • (メモ:高等部1年のときに読了。
     その後、購入し、数回読みました。)

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著者プロフィール

1922年4月、北海道旭川市生まれ。1959年、三浦光世と結婚。1964年、朝日新聞の1000万円懸賞小説に『氷点』で入選し作家活動に入る。その後も『塩狩峠』『道ありき』『泥流地帯』『母』『銃口』など数多くの小説、エッセイ等を発表した。1998年、旭川市に三浦綾子記念文学館が開館。1999年10月、逝去。

「2023年 『横書き・総ルビ 氷点(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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