遠いリング (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
4.50
  • (2)
  • (2)
  • (0)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 12
感想 : 1
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (494ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061853232

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ボクシングはハングリーな精神がなければ
    (試合)斗争ができないとしていた。
    しかし「ハングリー」だけではすまない なにかがあるようだ。
    「同じ体重、同じ腕 そして裸で斗う。」

    <素質について>
    ボクシングにおいて素質の占める割合は
    確かに大きいだろう。
    けれども、たとえば陸上競技における短距離ほどは
    決定的なものではないはずだ。

    百メートルを12秒でしか走れないものが
    いくら努力を重ねたところで10秒で走るのは
    不可能であろう。

    けれども、ボクシングは長距離レースであり
    先頭との差はいつかは詰めていくことができる。

    「正直いって、私もボクシングは素質だと
    長年思ってきたんですが、
    奥田を見てちょっと考えが変わりましたね。
    素質で持つのはせいぜい一年ですね。

    最後には努力を積み重ねている選手が勝ちますね。
    もちろん限度はあるにせよでしょうが。」

    「ボクシングは夢見ることを
    抜きに維持することのできないものである。

    その夢の中身や程度はそれぞれ違うし、
    その夢の実現度はほとんど問題ではない。
    たとえその夢が実現したところで、
    あまり変わり映えのしない日常
    があるだけなのかもしれない。
    であるならば、次の夢を乗せていけばいい。

    ともかく夢を見続けることが必要なのである。
    ボクシングを続けるとは、
    いわばどれだけ幻想を抱くことができるかどうか
    という能力にかかっているようにも思えるのだ。...

    そういう夢や幻想を抱くことができなくなったとき、
    ボクサーははじめてリング
    から去ることができるのではないだろうか。」

    「少しの差が、ときに微差の熱戦に、
    ときには大差になってあらわれる。」

    エディという男は実に文学的存在である。
    力道山がエディを日本につれてきて、
    そして日本にフリーランサーのトレーナーとして生活する。
    生活もつねにボクサーと一緒に生活する。
    ヘビースモーカーである。

    しかし「伝説」の人になればなる程、
    ボクサーにとって暗示にかかりやすくなる。

    *今時の若者に、のびさせるためにどうあればよいのか。
    日本人がやろうとする「意志」がなによりも大切である。
    =ほめること。評価すること。=

    ある意味で、
    ボクシングで脚光をあびなかった人も、
    ストリーとして「脚光」をあびさせていることに、
    大きな興味がある。

全1件中 1 - 1件を表示

著者プロフィール

1946年、京都市に生まれる。1972年、京都大学農学部を卒業。
ノンフィクション作家となり、医学、スポーツ、人物評伝などの分野で執筆を重ねる。
『空白の軌跡』(講談社文庫)で第四回潮ノンフィクション賞、『遠いリング』(岩波現代文庫)で第十二回講談社ノンフィクション賞、『リターンマッチ』(文春文庫)で第二十六回大宅壮一ノンフィクション賞、『清冽』(中央公論新社)で第十四回桑原武夫学芸賞、を受賞。

2016年、書き手として出発して以降、2010年までに刊行された主要作品のほとんどが収録されている「後藤正治ノンフィクション集(全10巻)」の刊行が完結。

他の著者に、『関西の新実力者たち』(ブレーンセンター.1990)、『刻まれたシーン』(ブレーンセンター.1995)、『秋の季節に』(ブレーンセンター.2003)、『節義のために』(ブレーンセンター.2012)、『探訪 名ノンフィクション』(中央公論新社.2013)、『天人 深代惇郎と新聞の時代』(講談社.2014)、『拗ね者たらん 本田靖春 人と作品』(講談社.2018)などがある。

「2021年 『拠るべなき時代に』 で使われていた紹介文から引用しています。」

後藤正治の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×