逆命利君 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061853317

感想・レビュー・書評

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  • 教養の塊であり知の巨人。ビジネスマンとしてだけではなく、世界の中の日本人がどうあるべきかという点において示唆に富んでいる。特にタフ・ネゴシエーターの章は面白かった。

  •  逆名利君「命に逆らいて君を利する、之を忠と謂う」の略であり、住友商事の中で公然と日本的企業体質を非難し自分の正しいと思うやり方を実践した故鈴木朗夫の生き様をつづった書である。
     逆名利君を実践した男として数々のエピソードと実例が挙げられている。あまりに西欧的人間が、あまりに日本的な村社会、縦社会である企業でやってきたことは何であろうか。それは周りの人間に強く生きることを強烈に印象づけたことであると思う。「働く」「生きる」という根本的なことがあまりに今までもそして今も十分に理解できていないサラリーマンが多い事実を知らしめている。
     葉隠の世界に似ている。会社人間になりたくない。個が埋没するような会社組織の中で大学を卒業する頃には自分のライフスタイルを築いている人間が自分の考えで何もできないいらだちを感じる。それでもおかしいと思うこと正しいと思うことは歯に衣着せず発言する明快さと潔さで認められる。それでも反感を持つ人はいる。しかしその事実も当人の魅力の一つになる。まるで葉隠の佐賀武士の世界だ。おそらく芯が通るということは結果として似たような世界を呼び起こすのだろう。
     鈴木朗夫という人間が幸運だったのは伊藤正がいたためである。将来の住商を背負って立つ人物との出会いがなければこの本は成り立たない。まさしく人間臭さの世界である。しかれどもそのような人間として生きるには萎えることのない信念、忍耐、信ずるに足る自分自身がないといけないこともわかってくる。

  • 社会人として、自らのスタイルをもって仕事をすべきであり、こなすのではなく、格好良く仕事をするべきであることを改めて感じさせてくれた本。


    また、愛社精神といおうか、個人としてだけでなく住友商事として誇り高く仕事に打ち込んでいる姿にも強く共感した。

    再三同種のことが書かれているが、

    『思うことをそのまま書く』のでは、異文化間の建設的なコミュニケーションは成り立たない。『思うことをうまく書く』ことによって初めて、相互間のある種の精神的緊張が生まれ、敬意も芽生えるのである。

    は、今後に意識して取り組むことにする。

  • 命にさからいて、君を利する。これを忠という。
    鈴木朗夫;
    男の美学を追求・・スタイリスト、一生演技
    企画力、折衝力、語学力

    「命にさかわらざるをえない場合には、
    逆らってもあえて正しいと思うことをいう。
    ・・大体下の者が、上の者に
    『あなた間違っていますよ』
    とおもしろ半分でいえる者じゃないんです。
    それだけいわれたら、
    上の者はありがたいと思って、
    耳を傾けなければいけないんですよ」伊藤正 住商社長

    「鉄道や飛行機が、
    常識的に予想される荷重の倍近くの負荷
    に耐えられるような安全係数をもってつくられ、
    移動しているのと同様、
    此の処で謂う健康とは単に病気ではないと
    謂うだけでは駄目であり、
    倍近くの無理に耐えられる強靱でなければならない」  

    「男が、生涯を通じてビジネスに
    コミットする以上、其の処に厳しい倫理と
    端正な哲学がなければ何の意味もない
    と思いました。

    多くの人たちが、思想を離れ、
    哲学でメシは食えないよと謂う軽薄の時代に、
    哲学ある利潤を求めることはとても意義あること。」

    「だまされたということは不正者による
    被害を意味するが、しかしだまされたものは
    正しいとは古来いかなる辞書にも
    一切書いてないのである。

    ビジネスレターとは、
    「外に向かっての名乗り上げ、
    相手に対する語りかけは、
    全て商売の第1歩であり、基本です。
    そしてそれはかならず
    次の二つの条件を満たしていなければなりません。
    (1)相手に対する礼儀にかない、
    且つ、一流会社としての品格を保っていること。
    (2)論旨が、誤解の余地なく明確であること。
    自分は「何について」語っているのか
    「何をしたいのか」
    「何ができるのか」
    相手に「何をしてもらいたいのか」
    そして、動機と目的は何か・・・
    それらのことが、
    1通の手紙に盛り込まれていること。」

    国際化
    「一体、われわれは何をどうすれば
    国際化したことになるのか。
    何をしなければ国際化してないことになるのか。」

    「感性に訴え、足して二でわる式の
    日本式ネゴシエーションは、
    世界でも珍しい独特のものであり、
    国際ネゴシエーションの場に
    日本式で臨むことの愚かさは、
    数々の失敗例で証明されている。」

    (1)鮮明に自己主張をする。
    自己主張は、可能な限り相手の言葉と
    論理を用いておこなう。

    (2)対決の場面では、
    理由(ジェスティフィケーション)なく譲歩することはしない。

    (3)妥協する場合は、情緒的な妥協ではなく、
     必ず「論理ある妥協」「説明のつく妥協」をする。

    (4)相手に「押しつけられた」「損をした」
    と思わせない「よいディールをした」と思わせる。

    「相手が賢者ならば理解するはずである。
    相手が愚者ならば、更に説得は容易なはずである。
    相手が強者ならば、緒戦の先制攻撃で可能な限り、
    対等な立場で、
    ネゴシエーションをスタートさせなければならない。」

  • 偶々、役員が好きな言葉を知り、それが「逆命利君」であった。それがオリジナルの漢「説苑」に依るものであるかは定かではないが、期せずしてこの書にたどり着き、住友商事元常務 鈴木朗夫なる人を知った。

    一言で言えば、洗練かつ鮮烈なDisciplineを胸に抱く人である。
    振る舞いや洒落具合など、この人の真似をすることは到底叶わないが、この人の心意気を真似ることはすべきかと思った。
    戦後の吉田茂、白州次郎に通じるものがあった。自分の本懐が何なのか、立身出世や社内政治などいわゆる小賢しい、しかし離れることも難しいことを超越する強さを感じた。

    今の日本において、政治家だけではなく、経営者にもここまでの人がどれほどいるだろうか。
    こうした人がどれだけいるかが国力に関わるのかもしれない。

  • 住友商事元常務・鈴木朗夫のサラリーマンの生き様を知る。独特だけど、学ぶところも多い。

  • 日本の会社組織、サラリーマン社会としてはかなり異端な人物であり、後に住友商事の常務取締役にまでなった鈴木氏の回顧録。

    前半は関係者のコメントを中心に構成されて、臨場感たっぷりで楽しめるし、異端ぶりがこれでもかというくらい描写されている。

    住友精神を具体的に紹介するために、後半に入ると戦前の住商経営陣のエピソードが紹介されたり、飼い猫の話が出たりと少し焦点がぼけた感じもあり。

    主人公をもっと掘り下げてもらえるとより入り込めた気がしますが、この著者の別作品をまた読んでみたいと思わせるには十分な内容でした。

  • 強い敵は尊敬される。
    タフネゴシエーター。
    がんばるところはがんばって相手に存在を認めさせるところから、ネゴシエーションは始まる。
    鮮明に自己主張する。
    対決の場面では理由なく譲歩することはしない。
    投げられた球はHoldせずに即座に投げ返す。
    妥協する場合は情緒的な妥協でなく、必ず論理ある妥協をする。
    相手に押し付けられた、損をしたと思わせてはいけない。良いDeal をしたと思わせる。

  • 自分の信念を貫き通すのに疲れて、ぐらっときた時に読む本。
    もう何十回も読んでいます。
    ぱらぱらしているだけで、元気になります。

  • 29冊目。

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著者プロフィール

1945年山形県酒田市生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、郷里の高校教師、経済誌の編集長を経て、評論家となる。憲法行脚の会呼びかけ人。
近著に『新しい世界観を求めて』[寺島実郎との共著]『小沢一郎の功罪』(以上、毎日新聞社}、『平民宰相原敬伝説』(角川学芸出版)、『佐高信の俳論風発』(七つ森書館)ほか多数。

「2010年 『竹中平蔵こそ証人喚問を』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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