宿命 (講談社文庫)

  • 講談社 (1993年7月6日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (378ページ) / ISBN・EAN: 9784061854444

作品紹介・あらすじ

高校時代の初恋の女性と心ならずも別れなければならなかった男は、苦闘の青春を過ごした後、警察官となった。男の前に10年ぶりに現れたのは学生時代のライバルだった男で、奇しくも初恋の女の夫となっていた。刑事と容疑者、幼なじみの2人が宿命の対決を果すとき、余りにも皮肉で感動的な結末が用意される。

みんなの感想まとめ

運命に翻弄される人間関係を描いた本作は、主人公の苦悩と成長を通じて、深い感動を呼び起こします。34年前に刊行された作品ながら、今なお新鮮さを感じさせ、読みやすい文体と巧妙な伏線が魅力です。物語は、高校...

感想・レビュー・書評

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  • 面白かったです!失敗したなと思ったのはつい先日、先に「変身」を読み終えていた点。まー、そこまで大きな失敗ではありませんが。当時、東野さん的に脳ブームだったようですね。本作、34年程前に刊行されたものですが、そこまで古さは感じません。読みやすく、謎、伏線、その解明と回収がわかりやすく表現されてます。この主人公2人にはどういった宿命が!?ラストのくだり、終章からですが、そこまでは予想してなかったので「あらま、そうなんですか!」と、個人的には楽しめました。意外性。
    引き続き、東野さん未読作読み進めていきたいと思います。

  • 東野圭吾先生の長編小説。
    高校時代の初恋の相手が、ずっと勝てなかったライバルの妻だった。そしてその二人と刑事として対峙する主人公という人間ドラマとそこに隠された謎を明らかにするミステリー要素がとても面白かったです。
    UR電産社長殺害事件の真相から始まり、過去のレンガ病院入院患者の死の真相や、隠された禁断の実験、そして勇作と晃彦の因縁の理由まで全てが伏線で綺麗に繋がっていてとても面白かったです。
    最初の晃彦の印象は、いけ好かないインテリ野郎なのだと思っていたら、まさかそんな葛藤を抱えていたなんて、と思わされました。
    最後の場面は勇作と晃彦が解き放たれ1つの兄弟としての会話だなと思い、爽やかなラストだと思いました。とても面白かったです。

    この作品をアニメ化した際の声優陣を自分なりのキャスティングしてみたので読む際に参考にしてください(敬称略)。
    和倉勇作:中村悠一
    瓜生晃彦:安元洋貴
    瓜生美佐子:佐藤聡美
    須貝正清:津田健次郎
    日野早苗:早見沙織
    瓜生弘昌:鳥海浩輔
    瓜生園子:日笠陽子
    内田澄江:遠藤綾
    松村顕治:遊佐浩二
    江島壮介:千葉繁
    瓜生亜耶子:小山茉美
    尾藤高久:三宅健太

  • 昔の話として割り切って読む テレフォンカードなどが出てくるとどーしても古さが際立ってしまう 内容はさすが東野圭吾と思わせる内容でただの妬みだけの人間関係の話ではない結末 宿命というタイトルがピッタリでした

  • 最後の方までもやもやしていましたが、終章でそれまでの謎が解けました。
    読後感の良い小説でした。流石です。

  • 初期の東野作品でまだ読んでいなかった本書をチョイスしてみました。

    地域の有力企業の新社長が、ボウガンの矢に刺されて殺害されるという事件が発生。
    捜査にあたることになった刑事の和倉勇作は、事件関係者である企業一族に、かつて何をやっても敵わなかった“ライバル”・瓜生晃彦がいることに、複雑な心境に陥ります。
    しかも晃彦は、勇作の昔の恋人・美佐子と結婚していて・・。

    ミステリであると同時に人間ドラマとしての要素も多分に含まれている内容で、勇作たちが追う“社長射殺事件”は、あくまでエピソードの一つであって、その事件を拠点とした勇作・晃彦・美佐子を結びつける、数奇な“運命の糸”の謎に惹き込まれました。
    さらに冒頭で綴られている、勇作が子どもの頃に慕っていた女性・サナエさんの不審な転落死事件との関わりと、その背後に何があったのか・・。
    グイグイ読ませる安定のリーダビリティで、勇作と晃彦のバックボーンを描きながら、その因縁めいた関係性と事件の謎が絶妙に絡み合って展開していきます。
    後半、勇作は完全に公私混同状態で、現在担当している事件より過去の“サナエ事件”の方にメインで追っていたような感じなのですが、その間に“社長射殺事件”は他の刑事によって解決しちゃいましたw(こっちはこっちで、動機は弱めとはいえ犯人の意外性はありましたけど)。
    そして、終盤にいくにしたがって“サナエ事件”の真相と共に、彼らを結びつける「糸」の背景も明かになってきて、最後の勇作と晃彦の会話シーンで一気に“伏線回収”されていく感じが良くできてますね~。
    さらにダメ押しで明かされた勇作と晃彦の“関係”には驚きましたが、まさにタイトルそのものの“宿命”だったのだな・・と感慨深いもの感じました。
    “ラストの一行”がこれまた秀逸で、東野さんもこの一行を気に入っているらしいとのことです。

    因みに解説で、本書は『変身』に繋がるとあったのですが、実はこちらも未読なので、“まだ読んでいない東野初期作品シリーズ”、次は『変身』を読んでみようかな・・と目論んでおります。

  • いうまでもなく‥‥完璧に持っていかれました。
    こんなに前の作品でも、そうなのですね。
    最後の最後に、こういうこととは‥‥面白いに決まってます・・・

  • ブクトモ様方の感想から手にした本。解説からも読み取れる本作への作者の熱量が凄い。30年以上前の作品を今、読む事が宿命だったのだろうか。解説で紹介されていた別作品も手にとりたい。

  • 殺人事件そのものより、過去になにがあったのか、二人を繋ぐ宿命とは何なのか。そこに重点を置いたストーリー。
    読みたかった系統ではなかったが、それなりに楽しめた。最後の男性2人の会話が粋な感じで良かった。

  • パート先で東野圭吾さんについて話題になりましたが、ほとんど読んだことがなかったため、これを機に読んでみようと思いました。
    前から気になっていた『ガリレオ』シリーズは図書館で貸出中だったため、あらすじが面白そうな『宿命』を手に取りました。

    しかし第1章の内容があらすじと全然違っていたので疑問に思い、何度かブックカバーを外して裏表紙のあらすじを確認し、戻すのを繰り返していました。
    ですが第2章ではようやくあらすじの「宿命の対決」の片鱗が現れてくるので、ご安心ください。
    ちなみに借りた時に、表紙よりも裏表紙のほうがヨレが激しい気がしたのですが、早速その謎が解けました( *˙ω˙*)و グッ

    また肝心の殺人事件の推理ですが、全然違う方を疑ってしまいました(すみませんm(._.)m)。
    ですがこの作品では犯人よりも、それ以外の謎のほうが魅力的と言いますか、個人的に気になりました。
    王道の推理モノと、その裏側に存在したある人々の目論見。
    それが10年ぶりに再会を果たした幼なじみ(容疑者)と主人公(警察官)の「宿命の対決」と上手く話が繋がっていて、さすが有名な作家さんだと思いました。

    これで今度から、パート先で東野圭吾さんの話題になっても問題なしです。
    ただ、会話となるとおそろしく口下手なので
    「この前おっしゃってた東野圭吾さん、読みましたよ。」
    「本当ですか、どうでした?」
    「よかったです。」
    「へえ、そうなんですね。」
    〜会話終了〜
    になりそうな予感がひしひしとするため、東野圭吾さんよりも『伝え方が9割』の本を読んだほうが良かったかもしれません。

  • ストーリー終盤でのスピード感のある展開、ラスト1行の意外性など読了後、タイトルの意味に納得。

    しかしながら主要人物のバックボーン、殺人事件の犯人やトリックが、いまいちインパクトに欠け、ドラマとして感情移入までに至れなかった。

  • 医者を目指し受験日親が倒れ警察官になった男。そのライバルはあっさり医者になり、かつて愛した女性と結婚までしていた。何故かそいつのことが気になってしょーがない。ある日おきた事件をきっかけに警察官として再開。謎が解かれた先の真実!!!!!!!!!!不思議な縁の謎がわかる最後。

  • 「宿命」の意味合いが読む前と読んだ後でガラリと変わる、ラストの数ページにこの小説の面白さが込められていると感じた。とある殺人事件を舞台に三人の主要人物たちの過去の掘り下げがされていく。
    一人目は主人公の刑事、二人目は事件の容疑者の一人。彼らはかつて同じ学舎で育ち、そしてライバル関係があった。三人目は容疑者の妻、彼女はかつて主人公の刑事の恋人であった。三人の三角関係の構図がとても掴みが良く、ワクワクしながら話を読み進めることができた。その中で次第に明らかになる三人の過去の繋がり、因縁。
    殺人事件はあくまでも舞台装置であったのかなとも感じるほどに殺人事件の動機とかトリックとかよりも、過去の出来事の方の掘り下げが気になる。そして序章の出来事が終章でどのように回収されていくのかという過程がとても魅力的であった。最後の一行のなんとなく感じる緩やかさがこの話の締めくくりにとても良い。

  • 読みながら、なぜ題名を「宿敵」にしなかったのだろうか?と思っていたが、なるほど、納得の結末だった。

    1990年作品、本書を書くにあたり「犯人は誰?トリックは?の意外性だけでない、別のタイプの意外性を創造したい」と東野圭吾氏(解説より) 。

    父親と同じ刑事になった和倉勇作は、幼い頃によく遊んでいたレンガ病院の記憶を呼び覚ますような事件と遭遇する。

    因縁のライバル:瓜生晃彦と元恋人:美佐子との再会がきっかけとなり——。

    先述の犯人とトリック以外の意外性が堪能できた!

  • 警察官の主人公と、かつてライバル視していた忘れられない友人?とかつての女性と、過去と様々な要因がはらんだ事件が起こる。

    その中で主人公の過去の清算、新たな人生を歩み始める萌芽を感じるラストになっている。
    事件の全容を知ることで過去との折り合いをつけ前を向いて歩く主人公にのめり込んでしまった。

  • 図書館で東野作品で何か良さそうなのはないかなと本棚をみたが、あまり棚の蔵書が多くなく、たまたま有ったこの作品を借りでみた。東野作品の中ではあまり有名でなく地味な感じのする本だなという印象。

    読み終わっての感想。印象通りだった。
    単なる殺人トリックやフーダニットではなく、もっと人間の宿命といった側面から描かれた推理小説という感じだが、著者に見事に騙された快感というものは全くなかった。

    最後に明かされる真実は、ちょっとそんな事あるの?というほどぶっ飛んでいて、頭を捻ってしまう。
    登場人物たちの関係性や、そもそもの一連の事件の原因など荒唐無稽としか思えず、いくらミステリーだからといって、この意外な結末に、「なるほど、そういう事だったのか!」と感嘆の声というわけにはいかない。ストーリーに無理がありすぎて、納得感がちっとも感じられない。

    この小説を面白いと思う人はもちろんいるだろうけど、自分はとても楽しむことはできなかった。
    やはり、東野圭吾ほどの作家でも当たり外れはあるのだなと感じた一冊であった。

  • すごく良かった。
    東野さんはやっぱりこういう作品がいい。
    解説によると、最後の一行のために練りに練ったとか。
    確かに意外な一文で、そしてなんか微笑ましく感じる一文。
    犯人も予想外で、あの人が見抜いていたというのも意外だった。
    脳科学も、こういうことができるのか?と夢か現実か分からないくらいの部分が面白いんだと、解説に納得。

  • 凄い一冊でした。

    何が凄いか、それは単なる殺人事件の謎解きミステリーではなく、そこに関わった2人の謎。

    宿命のタイトル通り、本作は明らかにその宿命を解き明かすことが主題となっているミステリー作品ということに尽きる。

    サブタイトルをつけるなら糸ということになるのだろう。

    計算し尽くされた見事の内容は迷わず☆5つであったが、今まで読んだ東野作品の中で、あくまでも私見だが登場人物が多かった^^;

    相関関係を理解しながら読み進める力がまだまだ足りない事に気づかせてくれた一冊になるが、その分だけ最初は東野作品として読み進めるのに苦労した。(結果、読み終えるのに3日もかかってしまった(苦笑))

    その分だけ☆1つマイナスをつけたが、これは作品の評価ではなく、自分に対しての戒めの意味を込めてである。

    学生時代から続く優作と晃彦の宿命とは。

    晃彦の妻であり、優作の初恋の人でもある美佐子を繋ぐ糸とは。

    単なる殺人事件の謎解きミステリーではない本作の深みはここにあり、ラスト1行の一言「君の方だ」で結ばれる。

    本作の中で重要な脳の謎。

    これが、次作となる変身へのプロットとなる。

    説明
    内容紹介
    高校時代の初恋の女性と心ならずも別れなければならなかった男は、苦闘の青春を過ごした後、警察官となった。男の前に10年ぶりに現れたのは学生時代のライバルだった男で、奇しくも初恋の女の夫となっていた。刑事と容疑者、幼なじみの2人が宿命の対決を果すとき、余りにも皮肉で感動的な結末が用意される。
    内容(「BOOK」データベースより)
    高校時代の初恋の女性と心ならずも別れなければならなかった男は、苦闘の青春を過ごした後、警察官となった。男の前に十年ぶりに現れたのは学生時代ライバルだった男で、奇しくも初恋の女の夫となっていた。刑事と容疑者、幼なじみの二人が宿命の対決を果すとき、余りにも皮肉で感動的な結末が用意される。

  • 【感想】
    東野圭吾の作品って、タイトルがシンプルかつディープなものばかりだ。
    タイトルにすごく拘りを持っているんだろうなという作品が多い。
    この「宿命」もその1冊で、主人公の勇作と晃彦は勿論、須貝正清や上原先生や父の興司などそれぞれの登場人物達の「宿命」も読んでいて感じさせられた。

    また、「あとがき」に書いてあったが、東野圭吾は本作品においては特に最後の一行に特にこだわり、むしろ最後の一行を書きたいが為に、全文章を考えたんだとか。
    それぐらい素晴らしいラストだったと読んでいて感じた。

    物語は小学生の頃からの宿敵である警察官の勇作と医者の晃彦に焦点が合わされ、1つの殺人事件を絡めてストーリーが進行していく。
    勇作に何か恨みでもあるのか?というくらい嫌味でスペックの高い晃彦少年と、晃彦少年にすべてにおいていつも負けてしまう勇作少年。
    少年時代からの確執を本事件の解決によって清算しようとする勇作の気概からして、もう少し殺伐としたラストになるかと思ったが、、、

    タイトルセンスと作中の大ドンデン返し、事件そのものの完成度の高さ、そして自他ともに認めるラスト一文の構成力の素晴らしさ。
    色んな要素の詰まった名作でした。


    【あらすじ】
    高校時代の初恋の女性と心ならずも別れなければならなかった男は、苦闘の青春を過ごした後、警察官となった。
    男の前に十年ぶりに現れたのは学生時代ライバルだった男で、奇しくも初恋の女の夫となっていた。
    刑事と容疑者、幼なじみの二人が宿命の対決を果すとき、余りにも皮肉で感動的な結末が用意される。


    【引用】
    p68
    公平だな、と勇作は思った。死ぬ時は公平だ。考えてみれば、人間の世界で唯一フェアな部分かもしれない。


    p75
    自分とは何の関わりもないのに、どうにも心に引っかかる人間というのがいる。
    その人物に魅力を感じているわけでも、恨みがあるわけでもない。
    それなのにどういうわけか、その顔を見ると、心が俄かに動揺するという相手だ。
    勇作にとって、瓜生晃彦がまさにそういう存在だった。
    友人になりたいとかいう明朗な心理ではない。何となく気に入らない奴だ、という陰湿な種類のものだった。


    p82
    勇作はこれまで、人に後れをとったことなど殆どなかった。勉強にしても、運動にしても、絵や書道についてもだ。
    もちろんその陰には彼なりの努力があった。ところが彼が苦労して手に入れてきたトップの座を、瓜生は鼻歌でも歌いながら奪いとっていくのだ。


    p90
    サナエさんの死に、瓜生親子が関係しているのか?だがそれは、どういう関係だ?
    この疑問が、勇作にとって瓜生晃彦をさらに特別な存在にしたのだった。


    p192
    このノートを見て、勇作は何とか真相を確かめたいと思った。それが興司の望みでもあるように思えたからだ。
    興司は出世はしなかったが、事件のたびに全力を尽くし、常に納得できる形で処理していった。おそらく唯一の心残りが「脳外科病院怪死事件」であったはずだ。

    やってみよう、と勇作は思った。今度の事件が実際どの程度サナエ事件に関係しているのかは不明だが、とにかくやれるだけやってみよう。
    (この事件は俺の事件だ。俺の青春がかかっている。)
    ノートを握りしめ、勇作は心の中で叫んだ。


    p334
    それにしても、サナエさんも実験台にされた一人だったとは。
    覚悟したことだったが、やはり勇作の推理は的中していた。
    瓜生和晃がサナエの身元引受人になったことや、彼女がレンガ病院に入院していたこと、そして彼女の死にも、実験に関する秘密が絡んでいるに違いない。
    さらに彼女の知能に障害があったこと。
    あれはもしかすると、実験の後遺症か何かではないのか?サナエも元々は普通の大人の女性だったのではないのか?


    p357
    「須貝正清の父親も実験に加わっていた。ところが凍結された後も、密かに自分が再開させることを考えていたらしい。親子とも負けず劣らずの変人だよ。
    おそらく正清は父親から、あの計画を須貝家の手で再開させるよう命じられていたのだろう。半ば執念みたいなものさ。
    だから僕の父親が倒れて自分の天下が近づくと見ると、着々とその準備を始めたりしたんだ。」


    p366
    「サナエさんは双子を産んだんだ。そして一人は瓜生直明に、もう一人はやはり妻が不妊症の夫婦に引き取られた。二人は二卵性双生児で、ふつうの双子のように瓜二つというわけではなかった。」

    「高校二年の時、自分に兄弟がいることは知った。しかしそれが誰なのかは教わらなかった。まさか君だったとはな。」
    晃彦は嘆息し、しみじみとした調子で言った。


    p368
    晃彦は何か眩しいものでも見るように目を細めた。
    「自分にどういう血が流れているのかは関係ないんだ。重要なのは、自分にはどういう宿命が与えられているかだ。」
    その言葉は、勇作の頭の奥底に響いた。同時に、つい先ほど瓜生家に引き取られた晃彦を妬んだことを恥じた。
    その宿命のために子供らしさを失い、人生の殆どを犠牲にしなければならない立場を、どうして羨むことができるのだ。


    p371
    「全敗だ」
    勇作は呟いた。「えっ?」と晃彦が聞いたので、「何でもない」と首を振った。

    「最後にもう一つ聞いていいかな?」
    「なんだい?」
    「先に生まれたのはどっちだ?」
    すると暗闇の中で晃彦は小さく笑い、
    「君の方だ」と、少しおどけた声を送ってきた。

  • まさに宿命。
    これぞ宿命。

    ずっと負け続けていた宿敵に対して、最後の1行は勝ったと捉える事ができる。

  • 殺人事件と、幼少期からの「宿敵」である勇作と晃彦の関係性の真実、この2つの謎解きが同時進行で進んでいく。

    序盤から登場人物が多くて、相関関係を書き出そうか迷いながら読み進めましたが、ある程度流れが分かると問題なしでした。

    宿命とは生まれながらに定められた変えることのできない人間の運命。この物語のタイトルは「宿命」という言葉以外では表せないことが読み終わった今はよく分かる。

    殺人事件の真相解明よりも、悲しい宿命を背負う登場人物たちの真実が分かることの方が衝撃的だった。

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著者プロフィール

1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業後、生産技術エンジニアとして会社勤めの傍ら、ミステリーを執筆。1985年『放課後』(講談社文庫)で第31回江戸川乱歩賞を受賞、専業作家に。1999年『秘密』(文春文庫)で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者χの献身』(文春文庫)で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、2012年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(角川書店)で第7回中央公論文芸賞、2013年『夢幻花』(PHP研究所)で第26回柴田錬三郎賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞を受賞。

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