思い通りにエンドマーク (講談社文庫 さ 50-3)

著者 :
  • 講談社
2.84
  • (0)
  • (5)
  • (7)
  • (6)
  • (1)
本棚登録 : 41
感想 : 6
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (321ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061854604

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 探偵小説研究会編の本格ミステリ・ベスト100で100番目に紹介されていたミステリ。読んでみたいと思っていたけど,なかなか手に入らず…これもブックオフで偶然売っているのを見つけて購入。ラッキーだ。
    著者の斎藤肇は,星新一のショートショートコンテスト出身とのこと。ジュベナイル小説のような文体で,やや肌に合わなかった。
    本作は,「陣内先輩」シリーズ3部作の一つだが,ほかの二作もなかなか売っていない。3作目の「思いあがりのエピローグ」は文庫にすらなっていないという…。手に入るかな…。
    内容は,テニスの合宿先で殺人事件に巻き込まれた主人公「大垣洋司」が,推理の上,犯人を見つけるが,真犯人は別に存在し,主人公から話を聞いた陣内龍二郎が,真相を解明するというもの。文体はジュベナイルっぽいが,内容は全くジュベナイルっぽくない。犯人(♂)が、被害者の館の主人(♂)の愛人だったり,夫人も不倫をしているなど,人間関係がかなりドロドロしている。館と鍾乳洞がくっついており,鍾乳洞の探検をする辺りはジュベナイルっぽいのだが。
    なかなかトリッキーな真相なのだが,文体が肌に合わないのが全て。面白くないわけではないが…★3で。

  • 主人公がクローズド・サークルでの連続殺人事件を解決して無事生還しますが、大学の先輩・陣内に「お前の推理は滅茶苦茶だ」と否定され、真相を暴きに再び館を訪れます。

    従来のミステリーになかった手法が用いられているので、ある種のパイオニア的な作品(?)と言えますが、真犯人や動機は分かり易いですし、密室トリックはよく読めばいくつか疑問に思うことがありました。ガジェットは凝っていましたが、上手く活かされずいまいちな出来でした。

  • 【評価】
    お薦め通り、まさに「探偵のための探偵小説」。文体の稚拙、ネタ自体少々小粒の感はあるものの、ミステリの形式美に対する親しみと物語というものへの問いかけが織り込まれている。

  • 軽い推理小説。1人称目線の文体が引っかかって読みづらかった。真犯人は初めから怪しかったし。

  • 本書は、麻耶雄嵩や殊能将之が好きな人、または「名探偵という存在は何なのか?」なんてはしかのような悩みに現在進行形でかかっている方にうってつけである。

    本作には短い中に、名探偵、館、洞窟、クローズドサークル、怪奇的な伝説、見立て殺人、密室、読者への挑戦状(を少しひねったもの)といった定番のガジェットがこれでもかとばかりミッチリ詰まっている。
    だがそれらのお約束は、軽妙に外され、最後には「本格推理」を洒落のめす結末がつけられる。

    1988年時点で、早くもこの境地とは恐れ入る。作者の趣向がすべて成功してるとはいえないけども、ミステリファンなら「分かる分かる!」と作者の皮肉めいた筆致にニンマリとするだろう。

    本格マニアの自意識と、青春小説風のユーモアが組み合わさった、新本格初期の傑作。

  • 綾辻行人氏、法月綸太郎氏、歌野晶午氏、我孫子武丸氏ら4名の島田荘司推薦による作家たちの作品が「新本格」と名づけられ、ミステリ界に新本格ブームが巻き起こった。そのブームに有象無象の新本格作家が続々とデビューし、また消え去っていった。
    この斎藤氏もその中の1人であるが、ちょっと毛色が違って、本格ミステリだけでなく、『魔法物語』というファンタジーのシリーズ作品も書いている。

    また専業作家ではないようで、何年かに1冊の割合で細々と新作を発表している。
    その少ない作品の中で「思い」シリーズといわれるミステリシリーズがあり、本作はその第1作。

    推理マニアの大学生大垣は合宿先の殺人事件を見事解決して帰ってきたところだった。同じアパートに住む陣内からその一部始終を話してみろと云われ、大垣はその顛末について語る。
    彼は所属するテニスサークルの夏休み合宿で吊橋を渡った断崖にある洞窟と一体となった館に行った。そこで何者かに吊橋が切られ、外界との接触を断ち切られる。それを皮切りにその館で次々と殺人事件が起こり出す。

    この内容を見ても本格ミステリのコードを忠実に再現した作品であるといえよう。目新しいところでは物語の時間軸が既に探偵が事件を解決した後であるということだ。そしてそれを聞いた陣内がまんまと犯人のミスリードに嵌ってしまった探偵に代わって真相解明に乗り出すという二段構えの作品となっているところか。
    しかしこの斉藤氏の諸作は実に実験性に富んだ作風である。探偵不在の状況で真の探偵が事件を解明するという趣向、探偵役が後日事件を語るということによる事件の最中における探偵役の存在意義、そういったものが見え隠れする。

    しかしそのあまりに平板な文章はなんのケレン味もなく、物語にフックが感じられない。実験小説なのだろうが、何の血も通わない人々が行き来し、行動する様子をただ眺めているだけで、推理クイズに特化した作品のように感じた。
    寡作家の斉藤氏の文庫作品は全作品が文庫化されているわけではないため、輪を掛けて少ない。さらにそのほとんどが絶版である。しかし書物の森を逍遥して探し当てて読むほどの価値はないというのが私の個人的な意見だ。新本格草創期の幻の作品をぜひとも読みたい方のみお勧めする作品だ。

全6件中 1 - 6件を表示

斎藤肇の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×