乳房 (講談社文庫)

著者 :
制作 : 久世 光彦 
  • 講談社
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本棚登録 : 329
レビュー : 47
  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061855175

感想・レビュー・書評

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  • あとがきに久世光彦氏が「不良の文学、または作家の死」というタイトルで寄せている。その中で松井邦雄氏を「知識や経験を身につけ、感じることに時間がかかった分、それを表現する時間を失ったのである」と評していた。人間の寿命にも触れているのだが、表現者の時間配分の難しさを感じた。

  • どこか不器用な、そしてどうしようもない蓄積を抱えながら生きてきた大人の断片を切り取った短編集。
    シンプルな文体の中に、複雑系な人間の機微、やるせなさなどが描かれていて余韻が楽しめるというか、行間の美というか、中々楽しめました。

  • ★2009年1月22日 7冊目『乳房』伊集院静著 評価B
    決して悪い作品ではないのだが、インパクトがないかな?!
    くらげ、乳房、残塁、桃の宵橋、クレープなどの短編
    離婚して離れ離れに暮らしていた男親が十数年ぶりの中3になった娘に会う時の微妙な心理を描かれている<クレープ>がGOOD。

  • 夏目雅子さんへの想いが詰まっている。愛ですね。

  • 短編集。「残塁」と「桃の宵橋」が印象深かった。どの話も最後にオチのようなものはなく、静かに終わっている。それが大人の小説というものかと思う。個人的にはオチのようなものが付いた話が好きなのだが。

  • 1999.12.7~ 8 読了

  • 知人の勧めで読了。

     「くらげ」
     「乳房」
     「残塁」
     「桃の宵橋」
     「クレープ」

  • 乳房

    短編だからか、結末がなく消化不良。

    野球のはなしとか、乳房の末期ガンの妻の話とか、自伝をいれているのか。。。

    リピ読みはない。

  • 家庭に落ち着かない中年男。せつないほどまっすぐな、凛とした少女。
    どこか非現実的だけど、ふいに現実感が迫りくる物語の短篇集。
    現実を観ないように暮らして来た主人公達は、
    家族の「死」や「失踪」「トラブル」などで生身の人生に向き合う。
    終始、透明感というか霞がかった情景描写の中で、ふいに訪れる現実感が
    なんだかせつなく 心に残る。
    なんか ようわからんけど、伊集院 静はやっぱもてるわ、と思いました。

    ●くらげ
    行方不明の弟を探しに漕ぎ出した海で見た無数の海月。
    海月は薄緑色に見えたり、淡い紫色になったり、銀白色になって泳いでいた。
    ぺちゃぺちゃと船べりを叩く水の音が聞え出した。
    私はその時、弟は死んでいるのだと確信した。
    そう思った時、海月は意思も感情もない浮遊物だとわかった。
    ●乳房
    病気の妻と病室から眺めた満月。
    私を待ち続けたちいさな背中が月明かりに小鹿の背のような影をつくっていた。
    背後からパジャマを着させると、妻は私の手を自分の乳房にあてた。
    細い指が私の手を乳房におしつけるようにした。掌の中に、妻のたしかな重みがあった。
    静かに私の手にほおずりをしながら、窓の外を見上げて言った。
    「なんか、ロマンチックだね」
    ●残塁
    20年ぶりに大学野球部の友人と再会する主人公。
    彼は20年間自らを欺き、取り残され続けていたものを、
    助けを求めて、再会に来たのだった。
    ●桃の宵橋
    家族に迷惑をかけ続けた父の売春宿の店番をすることになった長女。
    そこへ帰ってきた父が、真っ赤に塗った蛍光灯を店の古い蛍光灯と取り替える。
    年老いた女たちの肌はみずみずしく生まれかわり、父は遠い日の若々しい表情だった。
    桃色の海の底で、父と冴子と女たちは やわらなか沈黙を続けていた・・・。
    「三月だもの」そう つぶやいた途端、今夜が ひな祭りで父の飾った花が
    桜ではなく、桃の花なのに気付いた。
    ●クレープ
    高校生に成長した娘と再会して観た学生野球。
    緊張して喋れなかった娘が突き出したハンカチには、数個のキャンデーが乗っていた。
    「食べませんか」
    「空色のをひとつもらおうか」
    「パパは野球をしてたんだってね」
    パパと言われ驚いた私は、ガリガリとキャンデーを噛み、目を開いて野球をみた。
    返事ができなかった。
    「もうひとつ食べる?」
    今度はオレンジ色を食べた。音がするほど噛んだ。さし歯が折れそうだった。かまわないと思った。
    「元気の出るキャンデーだね」
    「本当に」
    娘の白い歯が見えた。頬に小さなえくぼがのぞいていた。
    二人とも不器用なのだと思った。応援の声を出しては、私はキャンデーを噛んだ。

  • 乳房はすべてを包み込み終結する。

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著者プロフィール

伊集院静(いじゅういん しずか)
1950年山口県防府市生まれ。72年立教大学文学部卒業。81年短編小説『皐月』でデビュー。91年『乳房』で第12回吉川英治文学新人賞、92年『受け月』で第107回直木賞、94年『機関車先生』で第7回柴田錬三郎賞、2002年『ごろごろ』で第36回吉川英治文学賞をそれぞれ受賞。作詞家として『ギンギラギンにさりげなく』『愚か者』『春の旅人』などを手がけている。エッセイも多く、『大人の流儀』シリーズはベストセラーとなっている。2017年日本経済新聞の連載『琥珀の夢』が刊行され、2018年10月5日、ドラマ化。2019年10月から日本経済新聞にて夏目漱石を主人公にした作品「ミチクサ先生」を連載開始。

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