随筆集 春の夜航 (講談社文庫)

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  • 講談社 (1993年12月15日発売)
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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784061855601

作品紹介・あらすじ

ささやかな生活の断片に、人生の一齣をすくいとって、文学の香りをそえる…。生まれ育った故郷のこと、子どものころのこと、友人や家族のこと、移りゆく四季の実感、文学への想いを滋味豊かな筆致と人生への深く暖かい視線で綴る、三浦哲郎の名随筆。随筆集『せんべの耳』『春の夜航』より名文63編を精選。

感想・レビュー・書評

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  • 古本屋で持っていない三浦哲郎の本を見つけると、思わずアッと声を出しそうになる。誰もこちらのことなど気に留めていないはずなのに、辺りをきょろきょろとし、それからもう一度その本を見つめて一つ息をつく。じんわりと押し寄せる幸せな気持ちをよく噛みしめる。
    この随筆集はいつも懇意にしている古本屋さんの、まだ紐に括られて整理されていない本の山のなかに見つけた。「Mさーん」今までそんなことは一度もしたことはなかったのだけれど、店主さんの名前を呼んでいた。それで恐る恐るこの本を買えるかどうか訊いてみるとMさんは大丈夫だよ、と言ってくれた。

    すでに図書館で三浦哲郎の随筆集は何冊も読んでいたため、改めて読んだ本を手に入れるような、そんな気持ちだった。けれども読みはじめると触れたことのない文章ばかりでおや、と思った。この随筆集に収録されている『せんべの耳』も『春の夜航』は、ところどころ知っている随筆もあるけれど、そのほとんどが実ははじめてだったのだ。
    僕は三浦が家族を描く随筆が好きだ。小説だけをみると家族にまつわる悲劇、絆の脆さをどうしてもつよく感じるのだけど、随筆ではささやかな思い出が語られていることで彼らがあたたかみのある家族であったのもすこし分かってくる。小説のエピソードと似た話がいくつも出てき、小説のときとはまたちがった気持ちで読める。
    この随筆集はどこか随想の『笹舟日記』に近いような気がする。三浦の大切なテーマが点々と各随筆にこめられているようにみえた。これだけ彼の小説や歴史を追ってきたからこそ、今読んで心に沁み入る文章だった。

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著者プロフィール

三浦哲郎

一九三一(昭和六)年、青森県八戸市生まれ。早稲田大学文学部仏文科を卒業。在学中より井伏鱒二に師事した。五五年「十五歳の周囲」で新潮同人雑誌賞、六一年「忍ぶ川」で芥川賞、七六年『拳銃と十五の短篇』で野間文芸賞、八三年『少年讃歌』で日本文学大賞、八五年『白夜を旅する人々』で大佛次郎賞、九一年『みちづれ』で伊藤整文学賞を受賞。短篇小説の名手として知られ、優れた短篇作品に贈られる川端康成文学賞を、九〇年に「じねんじょ」、九五年に「みのむし」で二度にわたり受賞。他の著作に『ユタとふしぎな仲間たち』『おろおろ草紙』『三浦哲郎自選全集』(全十三巻)などがある。二〇一〇(平成二十二)年死去。

「2020年 『盆土産と十七の短篇』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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