変身 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061856981

感想・レビュー・書評

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  • 私自身は活字を目で追っているだけ、なのであるが。

    きっと脳内では
    得た情報を次々に高速処理し、
    認識され、記録され、映(想)像化する為のなんらかの処置がなされ、
    こんな私にでも理解出来るように、と
    忙しく動き回っているのであろう。

    こんな風に、
    自分と考える脳のことを切り離して思ってみたのは初めてだ。
    そして、
    その事をとても怖い、と思った。

    今は従順で平和な脳が、
    なんらかのきっかけで暴走し始めたら?

    体を支配し始めたら?

    自分が信頼している、今の自分が消えて、
    全く別の人格にて、乗っ取ろうと脳が企てたら?

    物語の主人公は、
    ある事故がきっかけで、脳にひどいダメージを受けた。
    今の医学では
    当然認められていない『脳移植』の手術をうけ、
    誰のものともわからない、
    他人の脳に命を救われたわけではあるが、

    やがて、その脳は
    体を得た事で、蘇ったように主人公の体を支配し始める…

    と、言う恐ろしい物語。

    自分の核となるものは一体何なのか?

    生かそうとする脳なのか?

    生きたいと願う体なのか?

    経験が培った心なのか?

    存在意識を抱えた魂なのか?

    それとも…。

    答えも見つからぬまま、物語の幕は閉じられた。

    二度と踏み入りたくない世界感であったが、

    二度も読む返す必要は無いほど、記憶には深く焼きついてしまった様だ。

  • 脳の断片でも生きていたら、人間に死の判定はできないのではないか? 
    この系統の東野圭吾の作品には、ストーリーの面白さに加えて、問題提起がある。ここでは、脳移植の意味。人格はどこに宿るか。

  • 東野圭吾の1991年作品。
    単行本が刊行されたのが1991年1月。バブル経済崩壊直前。まだ日本人は、この景気がずっと続くと思っていた頃。フジテレビでトレンディ・ドラマ『東京ラブストーリー』が放送されていた頃。
    バブル景気の時代の物語だから、この作品のそもそもの発端が、不動産会社からの現金強奪事件だったんですね。
    そんなバブリーな時代に、絵描きになるのを目指しながら製造業の工場でライン作業に従事する青年と、画材店の店員が主要登場人物に据えているところが、2010年代後半になってもあまり違和感無く読める理由でしょうね。
    まあ、自社の国内工場で、若い人達が派遣出なくて直雇用で働いている設定は、まだ景気が良かった頃、という、時代の違いを感じますけどね。
    物語のメインとなる脳移植手術が実現化していないのも、時代の変化で色褪せないのでしょう。
    言わずと知れた名作なので、割と大人しい作品だと思ってましたが、予想しなかった暴力描写がいくつかあり、自分としてはそこが良かったですね。

  • 今でこそ、数々のSFやサスペンスで描かれる「脳モノ」。
    映画やドラマ、小説等で触れる機会も多いせいか、本書を手に取った際、裏表紙のあらすじや帯のコメントを拝見して、なんとなく話の流れを想像してしまう本作。
    そうとなれば否が応でも期待とともに注目してしまう、その「変身」ぶりと、東野小説ならではの文章表現。

    「圧倒されました...」というのが正直な読後感です。

    主人公である成瀬純一の「変身」ぶりとそれに対する本人の恐怖・葛藤。
    立場・考え方・関係性がそれぞれに異なる周辺人物たちの人間模様。
    本作では、そのひとつひとつがとても丁寧に描かれています。

    また、物語の「視点」は終始、主人公の視点。
    他の登場人物のメモや日記という形で、異なる視点からの補足はあります。
    が、主たる「視点」が一貫しているからこそ、自らが「変身」していく様子や恐れ、周りからどのように見られ・周りの人間を信じてよいかどうかの不安を、主人公と同じ目線でより深く追体験できる。
    これが、より一層「変身」を引き立てます。

    ときにグロテスクな描写もあります。
    でも、だからこそ、「変身」前後の変化が際立つのかもしれない。
    また、そんな描写があるからこそ、それに抗おうとする姿が際立つのかもしれません。

    「生きているというのは・・・(中略)。それは足跡を残すってことなんだ。」という印象深い台詞。
    これに「後ろにある足跡を見て、たしかに自分がつけたものだとわかるのが、生きているということなんだ。」と続きます。
    誰しも、忘れてしまいたい過去や断ち切りたいしがらみなども多々あることでしょう。
    けれど、それらを全部ひっくるめた「足跡」によって、今、自分が生きていると実感できるのかな...とも思います。

    読了後のこのずっしり重量感。
    人間をつくるもの。自分を構成するもの。自分の思考や心はなにでできているのやら?
    ときには、そんな重いテーマに想いをはせるのも一興かもしれません。

  • 「アルジャーノンに花束を」を読んでまた読みたくなったので読んだ。
    この本を読むのは四度目か五度目だ。それくらい好きなんだけど、何故か俺の周りの評価はあまり高くない。友達は「胸糞悪い、二度と読みたくない」と言っていた。まぁそう言われれば確かにそうだ。
    人格の変化を表すために人を傷つけ過ぎかも知れない。それでもラスト10ページは何度読んでも感動出来る。
    また個人的な事を言わせてもらえば、京極の妹はもう少し出しゃばって欲しい。

  • 今まで読んだ東野圭吾の中で僕は一番好きです。死とは?自とは?人の死に対する概念の集約。物語は世界初の脳移植患者が、前の脳の持ち主に自分の脳が支配されていくというシンプルな物語。その脳のドナーや背景、人物像の設定、スピード感、愛、死、自我、すべてが良くて、一気読みできます。何回も読んで、何回も教えられる深い小説。大好きだ。

  • 全体的に暗いお話




    脳を移植されたらイライラする気持ちも映るのだろうか?
    それを抑える前頭葉は??

    国家の研究の被害者であることには同情出来るが、
    恨み、イライラだけで人をバラバラにしておいて、社会的制裁が無いのはいまいち理解できない。

  • 久しぶりの東野圭吾作品。

    主人公の変わっていく姿を想像してゾクッとした。
    科学と霊が、現実と仮想が、どんどんと入り混じっていく
    の事に圧倒された。

  • 東野圭吾さんの「よくぞここまで書いたな」と思える凄まじくホラー要素が強力な医学サスペンス・スリラーの衝撃作です。優しい青年・成瀬純一、凶悪犯の銃撃を受け絶体絶命の運命から奇跡の脳移植手術によって命が助かったのに、ああ!予測不能な何て不幸且つ残酷な運命が彼に襲い掛かったのでしょう!ストーリーに大きな意外性はなく想定の範囲内で主人公の運命がどんどん悪化の方向に向かうのを読者は唯々見守るしか術がないのですが、最後の最後に東野さんは悪魔的シナリオに一矢報いてくれましたね。恵さん見事に「最後に愛は勝つ!」でしたね。

  • 頭を銃で撃たれ、脳移植手術を受けて一命をとりとめた若者を主人公とするミステリー。

    著者の作風どおり、引き込まれる感覚で一気に読み進めた。

    ただ、最後の終わり方がやや平凡かな。

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著者プロフィール

東野圭吾(ひがしの けいご)
1958年大阪市生野区生まれ。大阪府立大学工学部電気工学科卒。大学在学中はアーチェリー部主将を務める。1981年に日本電装株式会社(現デンソー)にエンジニアとして入社し、勤務の傍ら推理小説を執筆する。1985年『放課後』で第31回江戸川乱歩賞を受賞し、小説家としてのキャリアをスタート。2006年『容疑者Xの献身』で第134回直木三十五賞を受賞。2013年『夢幻花』では第26回柴田錬三郎賞を受賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞受賞。現在、直木三十五賞選考委員を務めている。代表作としてガリレオ・新参者シリーズに加え、映画化された『手紙』『ラプラスの魔女』。ほかにもテレビドラマ・映画化された作品が多い。2018-19年の作品では、『人魚の眠る家』、『マスカレード・ホテル』、『ダイイング・アイ』、そして今後の映画化作として玉森裕太、吉岡里帆、染谷将太らの共演作『パラレルワールド・ラブストーリー』(2019年5月31日映画公開)がある。なお、中国で『ナミヤ雑貨店の奇蹟-再生-』が舞台化・映画化され、映画はジャッキー・チェンが西田敏行と同じ雑貨店店主役で出演する。2019年7月5日、「令和」初の最新書き下ろし長編ミステリー『希望の糸』を刊行。

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