ここに地終わり海始まる(下) (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.35
  • (31)
  • (66)
  • (197)
  • (13)
  • (3)
本棚登録 : 748
感想 : 41
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061857988

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • もと芸能界にいた梶井、そして18年間の闘病生活を送って社会復帰をした志穂子

    言葉をうまく伝えられませんが、気持ちのいい作品、

    読後感がその余韻に浸っていたいそんな作品です。

    恋愛観だけでなく、人生そのものに視点を与えているそんな作品です。


    表題が気に入って手に取った作品でしたが、読んでよかったと思える作品でした。

  • 6歳の時から18年間、北軽井沢の結核療養所で過ごした志穂子。
    彼女は奇跡的に病気を克服する。
    きっかけは、以前療養所にコンサートで来たコーラスグループの梶井克哉より届いた1枚の絵葉書。
    ポルトガルから届いたその絵葉書には、<ここに地終わり海始まる>という言葉が刻まれた石碑が写っていた。
    彼女は退院後、生まれて初めて電車に乗り克哉に会いに行く。
    そしてそのコーラスグループは解散しており、克哉の行方も知れない事を知る。
    一方、克哉は悪質な芸能プロダクションから逃れ、志穂子と同じ診療所にいた女性のもとに身を寄せていた。
    実は例の絵葉書はその女性にあてたつもりで書かれたものが、間違って志穂子に届けられたものだった。

    20年以上前に読んだ本ですが、読み返して全く内容を覚えていない事にビックリしました。
    これだけスッポリ記憶から抜けているという事は、当時の私にはあまり心に響かなかったのだと思います。
    今読むと、とても興味深く、しみじみ読める内容だと思いました。

    主人公の志穂子は18年間診療所にいた事もあり、世間ズレしてなくて頼りなげな所がありますが、その反面人を見る目がある。
    それは診療所の人間関係を見て養われた感覚だという事で、そのあたりは作者の経験がそのまま文章になっているように思いました。
    上巻を読み直して十分読み応えのある面白いお話だと思いました。
    今読み返してよかったと思います。

  • 初めての宮本輝作品。
    優しくて温かい文章構成で、一気にファンに。
    結核を患い長年入院生活を送ってきた主人公。二人の男性と出会い、揺れ動く女心がとても繊細で純粋でとてもチャーミングで可愛らしい女性にキュン。

  • 完全な終わりはなく、そこからまた何かがはじまる。人生も、時間も。句読点の連続ですね。

  • 結局は、最後がどうなるとははっきりと描かれてはいない。
    人間として信頼の置ける尾辻より、人間として筋の通っていない梶井を選ぶ志穂子。
    それはなぜなのだろう。
    人は危ういものに惹かれるというのだろうか。
    しかも結論は1年先まで待つという。
    そこまでは物語は描いてはいない。
    ただはっきりとわかるのは、1年後の志穂子はさらに人間としての魅力を増しているであろうということ。
    読了後の爽快感はない。

  • もうだいぶ読んだ筈なので、古本屋さんでまだ読んでいない宮本さんの作品があることに気づいた時は嬉しかった。

    この作品は終わり方がいいですね。

    新聞小説だったらしく、かなり小刻みに状況が動いて行くけれど、リズム良く読ませるのは宮本さんの筆力だと思います。

    ともあれ、質の良い時間を過ごせました。

    この分量だったら上下巻にわける必要はないように思うんだけど、例によってオトナの事情ってやつでしょうか。

  • 〈再読〉久しぶりに読んだが、やはり宮本輝の作品だなあ、という感じ。挫折があって、そこから周りの人との関わりあいを通して再生が見えてきたところでラスト、という慣れ親しんだ展開。個人的には、尾辻とダテコがちょっぴりかわいそう。

  •  終わりは始まり。
     一つの結論も通過点でしかないし、その果てしなく続く物事の連続に疲れることもある。それでも生きていこうという人間の美しさを、再確認した気がする。
     18年間肺結核と戦い療養施設で暮らしたヒロイン志穂子には、社会で培われる(もしくは型にはめられる)常識というものが備わっていない。だから打算も駆け引きもない。量産型の人間にはないものをたくさん持っていて、それが人々を魅了するのだとおもう。こんないい子おるか!と思うけど、成長著しい18年間を社会との繋がらず生きてきた人を知らないからなんとも言えない。その点梶井はどう考えてもクソだけど、人間らしいよね。
     この後のそれぞれの人生に想像を巡らさざるを得ない終わり方が、またこの題名とリンクしていると思います。志穂子、働くんや。がんばりや。
     どうでもいいけどあとがきの人の解釈の広さ、想像力のたくましさ半端ない。

  • (上)を読み終え、(下)を読む気になれなかったけれど、何となく読んでしまいました。宮本さんらしい不幸からの、でした。梶井の人間性は最後まで腹立たしく、読後感は今一かな。

  • ロカ岬

全41件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1947年兵庫生まれ。追手門学院大学文学部卒。「泥の河」で第13回太宰治賞を受賞し、デビュー。「蛍川」で第78回芥川龍之介賞、「優俊」で吉川英治文学賞を、歴代最年少で受賞する。以後「花の降る午後」「草原の椅子」など、数々の作品を執筆する傍ら、芥川賞の選考委員も務める。2000年には紫綬勲章を受章。

「2018年 『螢川』 で使われていた紹介文から引用しています。」

宮本輝の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×