- Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061858299
感想・レビュー・書評
-
山田詠美さんの本は、放課後の音符に続きこれで二冊目。
どちらも、大人になってすっかり忘れてた、中学、高校生時代の何となく不安定だった自分を思い出す。子供でもなく、大人でもなく、早く大人になりたくて、でも何だか大人になるのは恐いような、そんな気持ちだった。
最後の「ひよこの眼」は、朝読み終えるには辛かった。夜、寝る前に読み終えるのがおすすめです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
色んなお話が入ってるんだけど、
ひよこの眼がとてもすき。
高校の時に授業で取り扱ったんだけど、
なんていうか、 切ないし とても綺麗な鮮明な世界観。
澄み切ってる。 -
むかし現代文の授業中に教科書の文章を端から読んでいて、
そのとき出会った「海の方の子」に衝撃をうけ、
山田詠美を読むようになったのだった。
思えばあれが、私の中の日本文学との出会い。
で、約15年ぶりに図書館で借りて読んでみたら
今でも凄く面白い。「海の方の子」以外ももちろん。
人の気持ちの機微。自意識。男女のいろいろ。
あのとき高校生だった私ももう三十路。
他の昔の作品も読み直さなくちゃ。 -
「ひよこの目」の男の子は、周りの子よりも早く大人になってしまった。それはどうしようもない事情のせい。
こどもでいられる時間って本当に貴重なのだなと思いました。 -
「晩年の子供」
狂犬病に蝕まれて、死を覚悟して過ごす晩年の子供。
死と向き合い、死とは何かのひらめきを受ける話。
いままで山田詠美は濃いめのエッセイととらえていたけれど、
ああ、私小説なのか!と気がついた。すごくテーマが強い。
「堤防」
ある日、運命に呼ばれて堤防から落ちてしまった運命論者の少女のお話。
すべて「運命だから」といって生きるのは、気だるい人のする事であって。
山田詠美はどこか気だるい。
この人、生まれてこのかた気だるい人なんだろうか。
「花火 」
世間でいうビッチな姉、山田詠美世界でいう自由な女のもとに、
真面目な妹が夏休みの間に会いに行く話。
山田詠美の美意識は、確立されてんなー!とおもった。
姉は、愛しあっている男がいる。
ただ、本当に愛しているから体を重ねるのが苦痛なのだと。
そういうかんじで別れちゃう長年カップルよくいるよなあ、と思った。
そして人間、そういう風に作られているんだともおもう。
「桔梗」
隣の家に住む、儚げなお姉さん。
主人公の少女は、その人を桔梗のように紫で美しいと思う。
年上の浮世離れした女性への憧れ。あるある。
お姉さんが男の人の肌を舐めているのをみて、まだ無知な子供が、
恐ろしいような魅了されたような、複雑さを抱える。あるある。
病気で床に伏せている祖父の部屋を、
死が湧く場所だと思っている子供心の描写が、すごくリアルだった。
あるある。
「海の方の子」
山田詠美世界のなかで、「転校生は特別」意識つよいなあw
国語の教科書にのっているらしく、海の方の子で調べたらこんなのHITした。http://lrc.cornell.edu/students/workbooks/japanese/Japanese44014402/1/8/3
すげー難問。
解答欄にものすごくモラルに反する発想で書きこまなきゃいけないから、
教科書にのせるのはよくないとおもう。
山田詠美は日本人の子供のお手本になるような作家じゃない。
「迷子」
よそのこを引き取った(愛人の子供)家族の話。
大人になって食べるものに困らないようにと、よそのこは食べ物を地面に埋める。その子を叱った、継母の気持ちって本当のとこどうだったんだろ。
「蝉」
おとうとができる少女。もやもやしたストレスを抱えている。
ふと、蝉の腹を開いてみる。蝉の腹の中身は、 空洞だった。
不満をたらして泣きわめいて、ああ自分は蝉だったのだとさとる。
そう解釈した。
自分は弟も妹もいないけど、できるってどんな心境なのかねー。
友達の子供みてると、え?そんなに親に執着心あるの?
え?そんなにかまってほしいの?
ってびっくりするので、そんなかまってちゃんが、
赤ちゃんに親とられるってどんなもんなんだろう。 -
ひよこの眼が忘れられなくて購入。
高校の授業を思い出します。 -
山田詠美の短編集。どの話も青春前期の少女が主人公だ。
感ずることは多々あるように思うのだけど、言葉にするのは難しい。山田詠美の小説はそんなのばかりで困る。人に勧めたくなる小説もあるのだけど、好きな小説家かと問われると素直に首肯もし難い。ただ、心に何かしこりを残すものが多く、この作品群も同様である。 -
10歳くらいの少女たちを描いた短編集。
死だとか性だとか、もしくは愛だとか、そういったものを知る瞬間を描かれていたように思う。子供だからこそ直線距離でつかまえて自分なりに寄り添って、共存してる。
ちょっと「風葬の教室」みたいな感じ。
「海の方の子」が好きだったな。死を知るより愛を知る瞬間のほうがいいに決まってる。
でも一番印象に残ってるのは「ひよこの眼」かな。せつない。というか、苦しい。 -
私って変な子どもだったなと思っていたけれど、この小説を読んで「子どもの考えることって、みんな結構ナーバスだったりするのかな」と思った。
-
“公園には、何組かの恋人たちがいたが、私は、自分と幹生が一番、せつないと思った。”
その物語の中で、私の一番好きな一節だ。読者が悟ることさえできない、そのせつなさの深い部分。背筋がゾクッとするのだった。
国語の教科書で山田詠美の「ひよこの眼」を読んだことがある方も少なくないと思う。あの短い傑作は、何度読んでも泣ける。読者はその酷な展開をどうにもすることができないまま、ただ取り残される。そんな気がしてならない。
今日紹介する山田詠美「晩年の子供」は、表題作から始まり「ひよこの眼」で終わる、8編からなる短編集。タイトルのとおり主人公は「子供」であるのだが、ひと味、いやふた味も違う子供たち。何かを悟っているかのようなその様は、好奇心のようなものでもないし、それは私の少ないボキャブラリーによって伝えることは難しい。
でも、読んでほしい。高校の教科書で「ひよこの眼」だけ読んだ人も、もう一度読んでみてほしい。今のあなたは、どう感じるだろう。
この文庫本には4つの☆を付けておいたが、「ひよこの眼」に関しては☆がいくつあっても足りないということを補足しておきたい。
http://ippeintel.com/archives/570