炎立つ 参 空への炎 (講談社文庫)

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  • 講談社
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レビュー : 37
  • Amazon.co.jp ・本 (438ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061859265

感想・レビュー・書評

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  • 歴史を題材にした小説は、ある意味結末ありき。
    登場人物たちがいつ何を行い、いつ亡くなったかは動かせません。

    この巻は読んでいて本当につまらなくて苦痛でした。
    主役の1人であろう安倍貞任には全く魅力もリーダーシップもない。
    最後はムリに人間性を出そうとして一族の長としての誇りすらなくなっていました。

    戦闘シーンも源義家と藤原経清の優秀さを出そうと頭脳戦ばかりで、カタルシスがない。
    その人間性も神経質なだけの小物に見えてしまいます。

    そして、美しいだけで頭が悪そうな女性陣。
    これ、絶世の美女設定じゃなければ、全く魅力がない人ばかり。

    本はつまらないものも含めて読みなれている自分が、何度も途中で読むのは時間のムダだからもうやめようかな…と思ってしまいました。

    内容的にかなり下調べがいるだろうし大変な作品だろうとは思うけれども、これはつまらない。
    これだけ登場人物がいるのならば、ある程度メリハリをつけないと…。

    とりあえず途中で投げ出すのは気持ちが悪いので、続きを読もうとは思いますが、期待はしない。
    実在の人物を想像で動かすんだから、こんなつまらない人間ばかりにしちゃ、可哀相ですね。

    ※ちなみに巻末にあった杉浦日向子さんの文章も酷かったです。

  • 大和の国の歴史とは、また違う、夷の国、男たちの国の物語 (^_^)b

  • あれほど強固だと思われた阿部の柵たちが、1つのきっかけで次々と落とされて、遂には経清、貞任までも。。。
    史実で結末が決まっているとはいえ、魅力的な人物たちが退場するのは無念です。

  •  経清、鋸引き。
     第一部は終幕するが、刊行時に内容面以外で物議を醸したことが思い起こされる三巻だ。キャラクターの性格設定が曖昧、或いは全体構想が甘いまま刊行を始めたことが雄弁に感じ取れる。

     この点、物語の展開としては勿論、女の浅知恵が、あるいは母・女としてだけの眼が、他氏の思惑といった世界への認識力を低下させ、近視眼的な対応に陥らせ、結果、安倍軍団を滅亡に至らせた展開は悪くはない。
     が、決め手たる清原参戦と彼らの源氏への思惑が不文明で、権力志向であったり、実利志向は勿論、冷徹さすら感じとれないので、どうにも座りが悪い。

     本筋とは違うが、結局、東北支配の決定は究極の淵源が京都政権にあり続けた。それを武力で叩き潰せず(叩き潰すだけの力を持ち得なかった)、自力で政権の正統性を掴み取れなかった。ここが源頼朝とはかなり違い、そうであれば、結局は、京都朝廷に東北支配を認めさせる争奪戦でしかなく、すなわち東北の内訌による漁夫の利は京都朝廷側が得るという構図が常態というのも理の当然であった。
     これが良く判る小説である。

  • 1051年前九年の役の物語、戦争終結。熱い武士の美学と、戦に勝つための策謀が活き活きと描かれる。おもしろい。


     何がいいって、蝦夷の地は朝廷に敗れた者の流れ着いた地という設定がきちんとあるというところだよね。
     そういう背景を背負っているからか、ジワジワくるものがある。そう、あらゆる情景がジワジワと読み手に作用していく、そんな作品。


     美学について考えさせられる。


    ______
    p16 清原氏
     安部氏は頼義との戦ののち、朝廷に恭順する姿勢を貫き、和議の手前まで我慢し漕ぎつけた。このまま安倍氏が存続できるようになれば、そこから力を十分に貯めて朝廷に匹敵する勢力を東北に気づくことができると考えていた。
     しかし、もしそうなると困るのは清原氏である。安倍が強くなるということは、東北に勢力を持つ清原氏は潰されるか飲み込まれるかのどちらかである。だから、もし安部氏が朝廷と和議を持つようなら、頼義としてもピンチだが、清原を味方に引き入れる最後のチャンスになるのである。

    p32 内部分裂
     貞任の母:瑞乃が貞任の考えを裏切ることをした。
     瑞乃は、今後の安部氏の本流が自分の血を継ぐ者でなくなることを恐れた。安倍頼良の側室の娘(結有)を婚姻を結んだ藤原経清が安部氏の中で重役に着くようになり、経清に安部氏を乗っ取られるのではないかと考えるようになった。血筋の良い経清は新たな陸奥国主になることが予想される。そうなれば、安部氏が経清の配下になるということ。瑞乃の孫である千代童丸が経清の子:清丸(奥州藤原三代の藤原清衡)の配下になるなんて悔しい、そんな風に甘んじるくらいなら源頼義と戦をしてどさくさに紛れて千代童丸が党首になれるように仕組んでやればいい。そういうことで、金為行(千代童丸の祖父)と安部氏の朝廷との和議不成立を画策、清原氏との内通を図った。
     実に恐ろしきは、手ごわい敵よりも、愚かな味方であるなぁ・・・。

    p46 罪
     安倍頼時(頼良)は金で罪を造った。その金によって敵を作り東北の地の平和を乱した。安倍貞任は力で罪を作った。その強すぎる力は恐怖を産み敵を作って、これから戦を始めさせる。誰が悪いわけではない。持ちすぎる「力」が罪を作るのである。まさに「悪」は「力」だ。
     これから清原が東北を納めるようになれば、そこからは清原が「悪」である。清原武則は一笑に付した。

    p54 都母ノ石碑(ツモノセキヒ)
     坂上田村麻呂が東北を津軽まで平定した暁に、「日本中央」の文字を刻み込んだ。それが朝廷の力の証になったが、それから百年もすると津軽の地は朝廷の入り込めない地となった。そして今の安部氏がいる。

    p61 蝦夷の祖先
     金売吉次は言う「この国は我らが開いた国だった。我らの祖先は出雲を本拠としていたが、帝の勢力に追われて諏訪や津軽に逃れた。斐伊川という川が出雲に流れているが、斐伊を本拠とした民ということで祖先は斐の本の民といわれた。陸奥に大國主を祀った神社が多いと思わなかったか。物部の祭神は蛇、素戔嗚が倒した八岐大蛇も蛇だ。大國主とて元は「大穴持」、火炉を持つ者よ。」
     物部氏の子孫の吉次は追われた者と言うこと。騙りだね。これ、QEDで読んだ。

    p62 長髄彦
     安倍の祖先は安倍長髄彦だという。神武天皇の東征で最後まで戦った近畿の豪族である。敗れて東北に逃れてきた。

    p244 戦馴れ
     源頼義の強さは何か。それは経験による忍耐強さにあると経清は読んだ。若さゆえに戦の勝機を逃すことがある。我慢できず無謀な戦闘をしたり、兵を死なせたショックから精神を病んだり、作戦失敗で早々に諦めてしまったり…。頼義は経験から陸奥で12年も耐えて、この戦までこぎつけた。戦のチャンスを12年かけて熟成させたのである。こんなことができるなんて、稀代の強者よ。
     経清は戦慄した。

    p366 女のせいで
     貞任は母の瑞乃、妻の流麗のために頼義との戦に臨むことになった。女の情念のために、東北の民の命が何千と失われた。
     女は正義に生きる。それも、気色悪いほど清廉潔白な正義に生きる。その清さが毒となって、息を断たれる者が出る。
     女は…こわい…。

     とはいえ、これは貞任も悪そうだ。流麗と会話をしなかった貞任も悪い。交流せずに、理解し合おうとするから、相手の気持ちを捏造し合うことになって、狂気に行き着く。男は黙って…がカッコイイし、当時の武士はそういうもんだろうけれど、、、
     貞任、あなたに見習いたいと思う。

    p372 青い炎
     厨川の柵に籠城した安倍軍は義家の策の火攻めに遭っていた。流麗らは火消しの祈祷をすることにになった。それが流麗のせめてもの罪滅ぼし…、ウウッここ切ない。
     祈祷で護摩にくべられた呪符を燃やすと青い炎が上がった。これは呪符の裏に燐を塗り付けてあったからだが、演出としてこういう化学的なことが行われていたんだなぁ。これがきっと魔術なんだろうなぁ…。

    p433 伝承
     あとがきで作者は語る。義家が厨川の柵を攻めるために陣を張った八幡の森を訪ねたら、森はとっくに削られてバイパスができていたとのこと。それに対して、、、
     伝承と歴史は違う。だから史跡指定もされずに簡単に森が削られてしまったのだおうが、やはりさびしい思いを味わった。八百年の隔たりと言うことよりも、わずか2,3日張っただけの陣跡など無意味という判断だろう。こうして伝承はますます薄れていく。中央から抹殺された地方の歴史は地名や伝承に手がかりが隠されている。なのに地名を変え、伝承を持つ場所を破壊する。それを行いながら地方文化の復権を叫んだとて意味がないのではないかとつくづく感じた。せめて文字の上だけでもそれを果たしたい。それがこの巻の大きな支えとなったのは確かだ。

     ほぇ~。

    p435 差別
     「東北人はどんな逆境にもめげず黙々とわが道をゆくエライ人。スバラシイデスネー。」
     こう言われるのは褒められてると思っていたけど、よく考えたら、まるきり使役する側の理想だって。

     騙りだね。「君達は偉いねぇ~。働くのが好きなんだねぇ~。さすがだよぉ。じゃあこれもお願いしちゃおうっかなぁ~。」ブラック企業のやり口だ。東北人にそうあれと、言葉で、言霊で縛りをかけている。やべぇ。




    _______

     
     炎立つの炎とは

     QEDの読みすぎな僕からすると、タタラ場の火炉のことを指しているのかなと思う。製鉄民だった東北の人々が蜂起する。それは再びタタラ場に火が灯って、燃え盛る火炎となって朝廷の下まで燃やし尽くさん勢いを持つということなのかな。

     今回の吉次とかの言葉でぐっとそう思った。





     しかし、、、弱い。真面目すぎるからかなー。弱みに付け込まれて、炎は鎮火してしまう。昔からそうなのかもな、そう思ってしまう。敵を騙す強さを持っているから、朝廷は権力者になれているのだろう。

     やはり「強さ」=「悪」で、「弱さ」=「美」なのだろう。武士としての在り方・美学を貫けば、悪い敵には勝てっこないのだ。
     その美しくあることが東北の民には強制されているというのは…心が痛くなった。

     美しさは、個人が持つもの。「他人に美しさを持たされる」この状態を見つけたら恐ろしさを覚えるようにしよう。

  • 読了。レビューは最終巻で。

  • 前九年の戦の話がメイン。なす術なく京に帰任寸前の頼義達だったが、子の将来を憂う貞任の母、妻が内通者となり、安部側の情報を漏らしてしまい、それが原因で安部は滅んでしまう。全ては貞任とその親族のコミュニケーション不足による物として描かれている。怖いなと感じた。コミュニケーションは職場でも家庭でも大事な物という認識は有るが、本心を語るのは簡単なようでなかなか難しい。

  • 誰かがすべて悪いというわけじゃなくて。それぞれの思いが擦れ違っている所が切ない。
    登場人物も見所もすごく多い。擦れ違った思い達が繋がり、滅びが訪れる。
    ☆←ブログの方は纏め切れていませんが(汗)。

  • 奥州藤原氏を描いた歴史小説第3巻。
    前九年の役、出羽清原氏の参戦・安倍氏内部の裏切りによる安倍氏の滅亡まで。

  • 安倍一族の内紛、隣国清原氏の参入によって前九年の役は終わり、貞任・経清は最期を遂げます。あまりにも悲しい展開です。源頼義が好きになれません。
    「父上! これが源氏の武士道か」
    義家の言葉に救われた思いがしました。

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著者プロフィール

1947年、岩手県生まれ。早稲田大学卒。83年に『写楽殺人事件』で江戸川乱歩賞、86年に『総門谷』で吉川英治文学新人賞、87年に『北斎殺人事件』で日本推理作家協会賞、92年に『緋い記憶』で直木賞、2000年に『火怨』で吉川英治文学賞を受賞。本作『風の陣』(全五巻)は、「陸奥四部作」のうち、時代の順番としては最初の作品になる。以降、『火怨 北の燿星アテルイ』(上下巻)、『炎立つ』(全五巻)、『天を衝く』(全三巻)と続く。

「2018年 『風の陣 四 風雲篇』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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