炎立つ 四 冥き稲妻 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 43
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  • Amazon.co.jp ・本 (452ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061859272

作品紹介・あらすじ

仇の子となり奥州藤原氏の栄華を開いた忍ぶ男の戦い。安倍が滅び、出羽の清原一族が治めることとなった奥六郡に藤原経清の妻結有は忘れ形見の清丸とともに留まっていた。清原の嫡子武貞の妻としてである。亡き兄と夫の志を胸に秘め敵方の一族として忍従の戦いを続ける母子の前に源義家が陸奥守として現われる。清原一族の確執が「後3年の役」の嵐を呼び起こす。(講談社文庫)


仇の子となり奥州藤原氏の栄華を開いた忍ぶ男の戦い。

安倍が滅び、出羽の清原一族が治めることとなった奥六郡に藤原経清の妻結有は忘れ形見の清丸とともに留まっていた。清原の嫡子武貞の妻としてである。亡き兄と夫の志を胸に秘め敵方の一族として忍従の戦いを続ける母子の前に源義家が陸奥守として現われる。清原一族の確執が「後3年の役」の嵐を呼び起こす。

感想・レビュー・書評

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  • 久しぶりの「炎立つ」だけれど、4巻のみ。
    むか~し、夢中になっていた頃は、経清と安倍一族ばかり読んで、
    今で言う「聖地めぐり」までしていた。
    その分、後半の4,5巻の記憶が抜けている。
    (あらすじはわかっているけれど)
    後三年の役の舞台となった、出羽を旅するにあたり、読み返したわけ。
    いや~、止まらないわ。
    おもしろい。
    息をもつかせぬとは、このことだね。
    歴史の整理(出来事)には十分、旅の予習ができた。

  • いやいや、藤原清衡の人生、過酷過ぎないか。これまでの東北シリーズの主人公たちと違い、生き切るパターン。とはいえこの辛に耐える人生の激しさよ。ちょっともう辛いことに慣れて鈍感なくらいだもの。

  • R4.8.27~9.10

    (感想)
    前九年の役が終わり、清原氏が奥州に地位を築いた後、清原清衡が奥州の覇者になるまでを丁寧に描いた1冊。
    この章の最後に、清衡が藤原を名乗り、藤原三代の物語が始まる…ということは残りの1冊で、三代の勃興が描かれるわけですね。かなりスピード感があります。

  • 藤原経清と結有の子・清衡が主人公となり、前九年の役後から後三年の役後までを描いている。
    清衡の半生はひたすら忍耐に次ぐ忍耐の日々で、読んでいるこちらも辛く、ときには我慢ならなくなりながら物語を追った。
    清衡は「経清と貞任の思い描いた楽土の夢」「民のための国」という念願を成就させるために耐え続け、ついにそれを成し遂げる。
    ここまで来るのにどれ程の血が流れたのかを考えると、虚しくも感じる。しかし、遂に父や安倍一族、物部氏の大きな夢が果たされたのだった。
    それにしても、高橋克彦さんの想像力に圧倒される。

  • 四巻 1冊で後三年の役を描く。よいテンポで一気に読めた。

  • 清原内部での死闘、後三年の役が始まる。清原清衡、源義家が、死闘を掻い潜り、清衡がついに勝利を収める。
    それにしても、凄まじい身内同士の死闘。清原一族には、真の武将はいなかった。
    源義家が、藤原経清の妻、結有と対面し、義家が藤原経清らをまことの武士として、いかに尊敬していたか語る場面は、本当に感動。まさに「士は己を知る者の為に死す」ですね。

  • 駆け足で藤原清衡さんが奥州のトップになるまでのお話。
    途中の苦悩とかすっとばしなので、ある意味サクサク読めました。

    この作者さんは女性を深く描けないのか、女性は単純だと思ってるのか、どうも出てくる女性たちが「美しい」だけでつまらない。
    母親だからって盲目のえこひいきに走るタイプが多過ぎ。

    武士モノ時代劇に多いお家のために死ぬパターンも定番どおり過ぎて、あえてこのお話を読む必要があるのかな…と思いました。

    男性たちも悪い人は本当に悪いだけ。
    浅田次郎さんのお話のように悪人にも悪人の言い分があり、矜持がある…ということはありませんでした。

    清衡くんも良い人ではあるけれど、周りのサポートと運が良かっただけのようにも思えて、なんだかな~。

  • ここに来て急ピッチで物語が進行する。
    この本を読むまで存在さえ知らなかった清原家。奥州の陰にこんな一族の存在があったとは。
    結有や清衡の行動原理については賛否が難しいところ。大義のためにここまで己を殺して耐え忍ぶことについて、自分としては共感できない。
    作品を通して感じるのですが、脇役として位置付けられた人々が繰り広げる某略の醜いこと。。。私利私欲の権化となった権力者のみっともなさはいつの時代も同じですね。

  •  後三年の役。
     藤原(清原)清衡の勃興物語であるが、少数で勝ちを収める展開は、本来ならカタルシス満載のはずだ。
     が、余りに出来過ぎ。殊に前半、奥六郡の中の三郡を支配下におさめるまでがそうだ。その上、本巻の人物造形が、清衡に倫理的かつ全面的正義を仮託する如きなので、どうにも上っ面感が拭い去れない。
     清原氏に対する復讐心と忍従の日々による心理的成長が齎した清衡自身の謀略戦という展開の方が納得し易いが…。

     しかも一巻に全部を盛り込むため全体的に舌足らず。藤原経清の物語と比較して、バランスの悪さは顕著である。
     それゆえか、義家や結有の心理変化がト書き的に展開されるのみで、ホントに小説かと目を疑ってしまった。
     清衡が奥六郡に覇権を立てようとする上で、彼の心の裡を描くのに、母や疑似父との確執や葛藤は避けて通れない重要な要素と考えるからなのだが…。
     ここは台詞や行動、会話で描くべきだったのではないだろうか。

  • 後三年の役を舞台にした東北武士の物語。ここから奥州藤原氏は始まる。源義経を理解するならここから読み始めろ!!


     東北の歴史はブツブツと知る程度だけれど、脈々と続いていたことがよくわかって、歴史の勉強としても非常に理解が深まる。確かに正史ではないかもしれないけれど、この解釈は非常に納得がいく。というか、気持ちいい。


     前巻までの安部貞時や藤原経清らのように熱い感じは少ない。だけれど、生き残るには生死をかけないといけない、弱肉強食の時代を感じられる壮絶さを描いている。迫力ある描写は読みごたえあり。なんていうか…ページをめくるとその先は、血でべっとりしてる!!



     藤原清衡は…、我慢強かったから藤原清衡になれたんだろうと強く感じた。
     武士道とは「潔いこと」だと新渡戸稲造の著書で勘違いが広まってしまった。本当は、「初志貫徹」こそが武士道である。己の定めた崇高な志を実現するために、どんな困難も耐え、壁を乗り越える。
     「志」という不定形の物のために己を捨ててまで執着する。その心意気が「武士道」なのである。
     清衡にはその武士道を感じる。父である経清のようにプライドであっさり志を諦めるような体裁を気にする男じゃあない。
     江戸時代に作られた美学的武士像。そういうんじゃなない、リアリストな当時の武士像がわかる。

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著者プロフィール

1947年岩手県生まれ。早稲田大学卒業。83年『写楽殺人事件』で江戸川乱歩賞、87年『北斎殺人事件』で日本推理作家協会賞、92年『緋い記憶』で直木賞、2000年『火怨』で吉川英治文学賞を受賞する。他の著書に『炎立つ』(全5巻)、『天を衝く』(全3巻)などがある。

「2009年 『To Tempt Heaven』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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