ガラス張りの誘拐 (講談社文庫)

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本棚登録 : 132
レビュー : 17
  • Amazon.co.jp ・本 (314ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061859777

感想・レビュー・書評

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  • さて歌野氏がシリーズ物を排して望んだノンシリーズ第1弾がこの『ガラス張りの誘拐』だ。本書の特徴はまず最初に第二の事件があって、第三の事件、そして最後に第一の事件が語られるという構成の妙にある。時系列に敢えて沿わずに進行する物語はそれ自体トリッキーであり、私は当時観た映画タランティーノの『パルプ・フィクション』を思い浮かべたものだ。
    また語られる誘拐事件も犯人が警察を呼べとか、マスコミに知らせろなどと通常タブーとしていることを逆に被害者に強いるところがなかなかトリッキー。読者はその裏に隠された企みを推理しながら読み進めるがなかなか先が読めない。私もその一人だった。

    一見何の関係もなさそうな事件が最後になって関連性を持って一つの事件になるというのは現在、連作短編集でよく使われている手法だが、あの手の作品にはちょっとこじつけというか強引さが目立つし、仕掛けが細かすぎて単に作者の自己満足に終っているきらいがないでもない。しかし本作では長編なのにそれぞれの章が独立している短編集のようだという全く逆の味わいがあり、私はこっちの方を好む。読了後私はすぐさま島田荘司氏の『網走発遥かなり』を思い浮かべた。というよりも一読、これはこの作品へのオマージュに違いないと確信した。
    逆に云えば、先にそちらを読んでいただけに本作における歌野氏の企みというか試みが二番煎じに感じてしまったのが非常に残念だ。『網走発~』と比べると、どうしても消化不良感が否めなかった。第ニ、第三の事件がもやもやとした形で括られることもあるし、なんだかやはりアイデアを支える技量が不足していると思った。

    今までの感想にあったように私もどちらかといえば歌野氏を完成されていない作家として見ており、その成長を見守っているスタンスであるので、どうしても上から目線で批評してしまう姿勢が拭えなかった(これは今ではどうなのか解らない)。そのためもあり、彼の諸作については先達の作品の影がちらついて作品そのものへの正当なる評価が出来ていないように感じることがある。これは反省すべき点だと私も感じている。

    さて私が歌野作品から遠ざかって早や20年が経ってしまった。そろそろ彼の作品に触れるべきかも知れない。あの頃と違って私もミステリを数こなし、作品ごとに作者の意図すること、行間に込めたメッセージ、テーマ性、そして当時の社会的背景などを考慮して論じることが、未成熟なりにも出来てきた。次の作品から一読者と一ミステリ作家として対等に取り組んで見ようと思う(すごい偉そうな態度ですな、しかし)。

  • 連続婦女殺人魔の犯人は誰?犯行声明文を出したのは誰? 
    中年刑事・佐原の娘を誘拐したのは誰?身代金の受け渡しに要求してきた犯人の目的とは? 
    謎だらけでどうなるのか楽しみでどんどん読み進む。と急にストップがかかる。戸惑いながら読んでいき新たな真実にぶつかる。
    ただの殺人事件で終わらないところがやっぱり歌野晶午だなと勝手に思って感心してしまった。

  • 3つの事件の短編集。かと思いきや、3つの事件は繋がっていた。2つ目の短編のあと、なんだなんだ、と思うけど、最後には種明かしもされ、スッキリしました。

  • 被害者への聴取が嫌になりサウナに逃げてしまう刑事、佐原真一。連続少女誘拐殺人事件の捜査担当だった彼は、新聞に載った犯人からの声明文と現在誘拐されている女生徒の養護教諭である松浦梨香に助けられながら、犯人を追い詰めるが――。
     第二章、第三章、第一章の順番でつながる物語。読み終わってなるほどーと思ったけど、この手は古典に代表作があることにいま気づいた。二つの誘拐事件と主人公である佐原の「病気」などなど、誘拐がテーマな割には少しのんびりしていたかなあ。
     物語としてはあまり複雑性はなかったように思いますし、ラストもそれほど驚くに値しなかったかな、と。これといった大仕掛がされているわけでもなかったのですが、ストレートなミステリとして楽しむことができました。

  • 全三部作の連作中編。
    しかし時系列的に一番最初の話を最後に持ってきて、最後まで読むと真相が分かるといった構成。
    ただ、そこまでの驚きはないし、ご都合主義な展開が結構あるのが気になった。
    読みやすいので一気には読める。

  • こう言う作風が後々葉桜…に繋がるのかぁと思いながら読み進めた。
    プロローグとも言える第一の事件をエピローグの前に持ってくるあたりが面白い。

    ここで、オヤッ?となるので少々ネタバレ感はあるけれど…

  • 家シリーズ終わったのか?
    幽霊の誘拐ってとこかな。

  • 読み終わって、「さ、レビューでも書くか~」と、他の人のレビュー拾い読みしたら、「話の順番が・・・」とか「最後の話が・・・」とか書いてあって、なんとなく読み返してしまった。
    いつもそうだけどプロローグとか目次とか、中盤終わるころにはすっかり忘れてるんだよね。
    メメントには難しすぎる要求でしょう(怒)

    で、わざわざ読み返したんですが、期待してたほどの感動なし。
    やっぱり同じ本2回読むのはつらいわ~。

    話のきっかけは誘拐。しかも被害者は女子高生。事件のきっかけは、やる気無し刑事の娘が消えて脅迫状が来たから。まー普通に被害者・犯人両方を探す調査をするんですが刑事は娘の通う高校の養護教諭に事態の相談をする。理由はだた娘が保健室通い組みだったから。
    この単なる相談役として出てくる先生がネックになってくるんですね~!
    一番最初(に書かれてる)事件は名探偵として、2番目の事件では犯人として、最後の事件は動機付けのエピソード、主人公として。
    で、この最後の事件、時候的には一番最初なんです。

    だから読み手としては「あんなに頼りになって頭も切れる綺麗な先生が何で!?」って思ったところでネタばれ~という流れに行き着くわけですが・・・そう思わなかった人はどうなんでしょう(自分含む)?

    だって先生、自分で言ってたじゃん、「家出は一度引き戻されても二度、三度と繰り返す」「再犯をとめるためには多少荒治療でも親と子の絆がしっかり結ばれるべきである。」みたいなこと。
    だから最後の話は印象に残らなかったんだな~。
    同じような内容を、もうちょっとドラマチックにしただけで、しかも語り口調ががらっと変わって読みにくかったし。

    もう一つ嫌なことを上げるなら家出しちゃう女子高生のことなめすぎ。
    別に女子高生ではないが、奴らが家出する理由なんて絶対に分からんでしょ。本人ですら分かってるか怪しいのに。
    だから「親子の絆」だの「お互いの存在の大切さ」などアピールしても本当に家出が直るのかね?
    理想論に執着しすぎてリアリティーに欠けた感がありました。

    ガラス張りの誘拐ってどういう意味でつけられたんでしょうね?ショーウィンドーに飾られた、理想的な結末が待つ誘拐とか?

  •  "優しさ"と思春期の娘に手を焼く刑事の物語。


     "優しさ"が邪魔をして取り調べができない刑事・佐原は、毎日のようにサウナで時間を潰す毎日を過ごしていた。そんな中連続婦女暴行殺人事件の被害者が逃げ出してきたことで事件の波に飲み込まれていく。
     物語は第2の事件・連続婦女暴行殺人事件、第3の事件・身代金誘拐、そして第1の事件へと焦点を変えていくという、少し変わった章立てとなっている。
     3つの事件の裏に横たわる、違和感。そのあたりの書き方はさすが歌野さん、と思う半面物足りなさがある。と、いうのも細かくはわからなくとも「あ、これは事件に絡んでいるな」とわかってしまったから。先が読めてしまうこと自体は悪くないんだけど、あれくらいわかりやすく書くなら、読者に先読みされてることを前提としてもっとひっくり返してほしかった。
     しかし終わり方は清々しく好きだ。

  • 取調べが苦手で勤務中にサウナに逃げ込む刑事・佐原。
    彼が担当する連続婦女殺人事件が一応の決着を見るもつかの間、
    彼自身の娘が誘拐されてしまった。
    身代金目当ての誘拐の成功率は極めて低い。
    娘を信じ、犯人を信じた結果は…

    なかなか新しい発想だと思う。善意からくる悪。
    でもなんだか腑に落ちなかった。
    善意だけでここまで大掛かりなことをするかなぁ。

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著者プロフィール

歌野 晶午(うたの・しょうご)
1988年『長い家の殺人』でデビュー。’04年『葉桜の季節に君を想うということ』で第57回日本推理作家協会賞、第4回本格ミステリ大賞をダブル受賞。’10年『密室殺人ゲーム2.0』で第10回本格ミステリ大賞をふたたび受賞。近著に『Dの殺人事件、まことに恐ろしきは』、『間宵の母』など。

「2020年 『7人の名探偵』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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