- Amazon.co.jp ・本 (620ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061859890
作品紹介・あらすじ
法月綸太郎のもとに深夜かかってきた電話。救いを求めてきたのはあのアイドル歌手畠中有里奈だった。ラジオ局の一室で刺されたはずの自分は無傷で、刺した男が死体で発見される。恐怖と混乱に溢れた悪夢の一夜に耐えきれず、法月父子に助けを願い出た。百鬼夜行のアイドル業界で"少女に何が起こったか"。
感想・レビュー・書評
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今年は積読本を消化する年!だいぶ前に購入して途中まで読んだ法月さんの本が今年の1冊め。
「雪密室」と「頼子のために」を読んでからでないと法月さん(主人公)の気持ちについていけないかも。と言うのも、ミステリーなので"誰が犯人でどういう方法を使ったか"と同じくらい"過去の事件から生じた法月さんの探偵(・小説家)としての苦悩"に焦点が当たった作品だから。
後者の決着の付け方が良かった。自分を美化したり正当化したりするのではなくて"これからの事件との関わり方によって自分が試されてるんだ"という箇所が良かった。
最近色んなものを引きずりながら生きている感じがするよ。良いものもあんまり見たくないものもね。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
頼子のために、で傷を負った法月綸太郎の
復活物語。 -
長かったーf^_^;この作家さん、生首に聞いてみろ以来好きなんですが…今作はどうかなぁ…。とにかくみんな秘密にして黙ってること多すぎ。犯罪者が犯罪を隠すのはわかるけど、刑事の父とか名探偵も被害者のこと、匿って秘密にしてる。娘が精神崩壊してるのに秘密にして放置だし。そうじゃないと話は進まないんでしょうけど…90年代のお話で懐かしい場面もあり。シリーズものとは知らずに読んでしまったので前作読んでみなくては。
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最近法月綸太郎気になると思ってテキトーに手に入るものから読んでたら冒頭いきなりまだ読んでない頼子のためにの犯人の名前が出てきてびっくりした。
一瞬で忘れたからとりあえず先に頼子のためにを読んだけど。
で、戻ってきたら今度は雪密室の話題が出てきて、今度は雪密室かよって思ったけどもういいやと思ってこっちを先に読んだ。
法月さんて本は刊行順にしか読まない人なのかな。
みんなうじうじしてるからハッピーエンドのはずなのによかったねって気持ちになれない話。
あと不要なエピソード多すぎ。
調べたこと全部書かないと気が済まないタイプなのかな。 -
探偵の傷が深く、読んでいて痛々しいです。こんなに後ろ向きでなくても、と思うほどですが彼は自分で乗り越えなければ彼女を救えない、と祈るような気持ちで読み進めました。しっかり読み応えがありました。この三作品は家族の話ですが、再読にあたって初めて読んだ時と現在とでは自分の家族構成や立場というものが全く違っていたので同じ物語でも受けた印象がかなり変わった気がします。以前はもう少しさらっと読んでいたような?綸太郎が復活しなくてはいけないので珍しく後味がよいのが嬉しいです。
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『奇抜な仮説を弄んだり、人の死を記号のように扱ったり、人間関係を机上の図式に収めたり、嬉々として他人の罪を暴いたりー
そうしたことの全てに興味を持てなくなっただけです。いつまでも、遊びの時間は続きません。探偵ごっこはこしまいです。』
悩める探偵、法月綸太郎の作品はどれも面白い。解説が笠井潔で最高。この二人はミステリに哲学を持ち込む素敵な作家で大好きだ。
それにしても、エラリー・クイーンがまた読みたくなった。クイーンにハマったの小学生の頃だったから内容あまり覚えてないんだよね〜。 -
実は大学生の頃に読んだのは『頼子のために』までで、その後別の作家に移った。これは単純にその頃出ていた彼の作品の文庫が『頼子のために』しかなかったからだ。本作を読んだのはかなり後で、数年経った頃。そして本作は『頼子のために』と『一の悲劇』と合わせて悲劇三部作という謳い文句でもあり、しかも先に書いた感想でも解るように、私の中では読後数年を経て、『頼子のために』の記憶は美化されていた。手にした時の期待感は推して量るべしだろう。
まず前知識としてあったのは「悩める探偵法月綸太郎」というキャッチフレーズだ。前作で「後期クイーン問題」に直面した法月氏(この場合、作者と作中登場人物両者を指す)は自らの存在意義を見出せず、苦悶する日々を送っている。シリーズでも最長を誇る本作は、実はこの悩みのためにほとんど進まないといっていい。本作の大半は法月氏の内部葛藤と答えの見えない問いに対する自問自答で覆いつくされている。確か精神錯乱者の書いたような内容が暴走している章もあったように記憶している。
この悩みのため、実は事件そのものに関する記憶が希薄。刺された被害者であったアイドル歌手が失神から回復すると無傷であり、刺した加害者が逆に刺殺体となって横たわっていたというパラドクシカルな発端だったが、結局どんな真相だったのか覚えていない。しかしもしこれを今読むと上の星評価はもっと下がるのは確実だろう。
『頼子のために』でも最後に探偵法月が犯人に下した所業について不評の声が上がっているのを目にしたが、本作でも法月警視が行った行為は一警察官とは思えぬ乱暴な行動を取っている。あいにくこの辺については当時全く考慮が届かず、そのまま読み飛ばしてしまったが、もしかなりミステリをこなした今ならば、その時点でもうこの物語を受け入れられないことは間違いない。だからあえて本書は再読しないようにしておこう。ついでに美しい読後感保持のためにも『頼子のために』も同様である。
結局延々と繰り返される法月氏自身の問題は結局答えは出ず、これはなんと『生首に聞いてみろ』が出るまで続いた。そしてどうやら『生首~』では、吹っ切れたように悩める法月の影はなく、淡々と探偵の役割を果たしているようだ(未読なので以上の話は各種の書評から受け取った私の印象)。
調べてびっくりしたのは、本作はなんと絶版になっているらしい。法月綸太郎といえばけっこうネームヴァリューもあると思うのだが、絶版になったりするんだなぁ。これはやはり上に書いた警察官とは思えぬ法月警視の行動によるところが大きいのだろうか。