月光の夏 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.62
  • (16)
  • (25)
  • (39)
  • (3)
  • (1)
本棚登録 : 201
レビュー : 31
  • Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061859944

作品紹介・あらすじ

若き二人の特攻隊員は、ベートーヴェンの名曲「月光」を、小学生たちの前で弾き、南溟の空に出撃していった。ある夏の日のピアノの響きは、痛切な思い出として刻みこまれた。そして今、過酷な運命に翻弄された青春の行方をさぐる一人の女性がいた。愛と哀しみの感動にあふれるドキュメンタリー・ノベル。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 鳥栖小学校の古いグランドピアノの廃棄処分が決まった。
    年配の教師吉岡は、そのピアノを前に、45年前の特攻隊員の話を語った。

    『永遠の0』など、特攻隊の話はいくつか読みました。
    突撃に失敗したり、機械不良などで不時着したり、戻ってきたりした隊員がいた事もそこで知りましたが、振武寮の存在とその意味は今回初めて知りました。
    どの話を読んでも、戦争の不幸ばかりを知らされる思いです。

    様々な事実を知らな過ぎた私は、更に学ぶ必要があると思います。
    そして、多くの人にも知ってもらい、このような不幸が再び起こることがない世の中を皆で作り続けていかなければならないと改めて強く思います。

  • 実話に基づく小説(ノンフィクション・ノベル)である。たぶん特攻隊員のプライバシーに配慮したのだろう。ある小学校で古いピアノが処分されることとなった。定年を控えた女性教師が「ピアノを譲り受けたい」と申し出た。古ぼけたピアノにはあるエピソードがあった。それは45年も前の話だった。感動的なエピソードが全校生徒の前で紹介され、報道を通して多くの人々が知ることとなった。
    http://sessendo.blogspot.jp/2016/03/blog-post_4.html

  • 知覧の特攻平和会館に行く度に、館内の売店で関連の本を一冊買うことにしている。
    この時は、ちょうどピアノが展示されていた。

  • P236
    悲しき特攻隊員の物語、とにかく泣けました。

  • 「永遠の0」が小説、映画で評判になりました。
    これは「もうひつの0」です。

    ある小学校に廃棄寸前のピアノがありました。

    「死ぬまえに一度、思いっきり、ピアノを弾かせてください」

    終戦を迎える直前、突然ふたりの特攻隊員が訪れ、演奏したピアノです。
    そのエピソードを語り継ごう、そのピアノを残そう、その特攻隊員を探そう・・・・。
    そのエピソードが人々を動かします。

    ラジオ番組制作のスタッフがその二人の足取りを辿ろうと、取材する元特攻隊員たちの口は重いものでした。

    出撃の機会のなかったり、出撃後、機材の故障などで不時着したり帰還したり者に、饒舌に語る過去はありません。

    感動のエピソードに湧く現代の人たちと、心の底に残る重しのような体験をもつ生きながらえた者たちは対照的です。

    この人になら語っていい、この人には真実を伝えなければならない、と思わせるのは、好奇心や興味を超えた心です。

    「もうひとつの0」は、「真実の0」でもあります。

  •  夏の本で思い出すのは『月光の夏』という戦争小説。
     
     ある小学校で古くなったピアノを処分することになったが、老年の女性教師がそのピアノにまつわる思い出を語ったことから、一転して、保存することになった。
     
     そのピアノは日本でも数台しかない貴重なものだった。  戦時中、特攻を翌日に控えた二人の音大出身の学徒兵が、この世の名残にどうしてもその貴重なピアノを弾きたいと、遠くからやってきて、生徒たちの前でベートーベンの『月光』を演奏したことがあった。その美しい音色は少年たちの心に、そして若い女性教師のこころに深く刻まれた。
     
     思い残すことのなくなった二人の学徒兵は、翌日勇んで特攻機に乗りこみ、敵艦隊に体当たりするために出撃していったが、しかし…
     
     この小説は特攻の町・知覧近郊で実際に起きた実話を基に脚色された小説だ。


     ピアノに纏わる悲劇の歴史は語り継がなくてはならないとの声が広がり、講演会や、ラジオドラマなどを通じて、次第に多くの人に知られていくようになった。しかし、肝心の兵士の名前がわからなかったことから、老教師の捏造ではないかとの疑惑も生じた。


     そんな時、特攻兵の二人のうち一人が生き残っていたことが調査でわかった。しかし本人は「特攻前夜にピアノを弾いたことなんてない」と否定した。そのため疑惑は深まり、捏造ではなくとも記憶違いだとか、兵士ではなかったのではないかと憶測が憶測を呼び、疑いの目は老教師の人格の否定へとつながっていった。


     その窮状を知った元特攻兵は、ついに重い口を開いた。そしてピアノを弾いたことを認めた。なぜ彼はピアノを弾いた事実を隠そうとしていたのか。
     
     彼は特攻に出撃したが、機体の不良により近くの島に不時着した。けして臆したわけでもなく、特攻に行きたくないと思ったわけでもない。敵に体当たりするまでは機を無駄にしてはならないと判断しただけだ。
     不時着後、すぐにまた特攻の命令が下ると思っていた彼に下った命は、「ある寮に入るように」というものだった。


     その寮は振武寮と言い、そこには彼と同じように特攻に出撃したのちに、何らかの理由で不時着した搭乗員が送り込まれていた。100人近く入寮していることもあった。そこで彼らを待つ受けているものは、来る日も来る日も軍人勅諭を書かされ、上官からの罵倒と暴力に耐えることだった。彼らが引き返したのは例外なく臆病のゆえに、卑怯のゆえにとされた。そんなレッテルを貼られた彼らに再特攻の命はなかなか下りない。
     
     また、特攻隊員は出撃後は、成果の如何によらず、その死を以って軍神となる。肉親にもそのような通達が届く。ために一度出撃した隊員が生き残っていては都合が悪いし、原隊への復帰もあり得ない。つまり彼らは生きているのに、すでに死んだことになっているので、その存在を隠し続けるために「振武寮」に入れられた。外出も肉親への連絡はもちろん禁止。寮の存在そのものが軍の極秘事項だった。
     おそらく、その後に再特攻の命を受けたとしても、遺族に知らされる命日は最初に特攻に出撃した日であり、その後、どんな気持ちで日々を耐え、最期を迎えたかも知らされることはなかったことと思う。


     元特攻隊員がピアノを弾いた事実を言わなかったのは、特攻に再び出撃できる機会がないまま、終戦を迎えたために、どうして生き残っているのかという矛盾を説明できなかったからだ。そして、同じ日に特攻に行った仲間はみんな帰らなかったのに、自分だけ生き残ってしまったことに対して罪責の念を感じていたからだ。
     
     祖国を愛し、音楽を愛した青年の赤誠を、戦争という狂気はこんなにも踏みにじったのかと怒りがこみ上げてくる。

     
     特攻隊員に対して国家が精神的な虐待を加えた事実は、もっと広く知られていていいと思う。

  • この手の話は読まずにいられない。
    読みながらずっと涙目。
    外で読んじゃまずかったです(笑)
    実話を元にした半ドキュメント。
    作品の中で、この話を聞いた時の
    子供たちの感想が素晴らしかったです。
    若い世代にぜひとも読んでほしい作品でした。

  • 知覧に訪れた時買った本。今の今まで本棚に置いたままでした。思い出したように読みました。
    特攻隊員が最後に弾いたピアノ曲、実話をもとにしたお話。死地に赴く特攻隊員の悲劇、そして死ねなかった者の悲劇を語っています。日本人として、読むべき本だと思います。

  • おそらく、戦後の日本には無数の風間氏がいたことだろう。
    戦火の中を生き延びた、ということを喜びではなく一生の十字架として背負っていく。

    読みながら、ずっと頭の中にさだまさしの『戦友会』という曲が流れていた。


    戦地に赴いた無数の若い命も、それを見送った人々も、必死だった。
    それは正しいとか正しくないという尺度とは次元の違う話であり。

    それでも、戦争は悲しい。
    戦没者に敬意を払うならば、簡単に戦争しろ!などと口にすべきではない。
    平和がそんなに軽いものならば、祖国を、大事な人たちを守るためだと信じて運命を受け容れ、戦に散った無数の命が報われない。



    (以下、さだまさし『戦友会』より歌詞抜粋)


    「命懸けてお前たちを守った」
    と言わせてやれ
    それを正義と言うつもりはないが
    時代と片付けたくもない

    今の青春を
    羨ましくなくもないが
    替わろうかと言われても
    断るだろう
    不幸な時代の若者たちは
    それでも青春を確かに見たのだ

    銃弾に倒れた友の顔を
    忘れることなどできない
    “あいつの分も、あいつの分も”と
    生きる想いは分かるまい

    いつか消えゆく集いなのだ
    春の名残の雪なのだ
    そして必ず二度と必ず
    降ってはならない雪なのだ

    雪が降る
    今日もどこかで誰かがふるえてる

    遠くでバイクの走り去る青春がきこえた

  • とある地方の小学校に残されている、出撃前の学徒出身の特攻隊員が演奏したというエピソードが残る古いグランドピアノ。これを残そうとする、当時の現場に立ち会っていた元教師と、このエピソードに興味を持ち取材を重ねるラジオ局のスタッフ達。

    史実に基づいたお話(プライバシーに配慮して当事者個人が特定できないようにしている)だそうです。

    数十年たった今でも、まだ戦後は終わっていないのだなぁ。

全31件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

作家。1933年福岡県生まれ。
1964年、テレビドラマ脚本『十八年目の召集』で第1回久保田万太郎賞を受ける。
日本放送作家協会理事、文部省社会教育審議会委員・専門委員などをつとめた。
小説、ドラマ、ドキュメンタリーなど戦争と戦後問題をテーマとする作品が多い。
『月光の夏』は自らの企画、脚本で映画化、映画(神山征二郎監督)は観客210万人という大ヒット作となった。オーディオドラマ『ヒロシマの黒い十字架』(中国放送)は2000年度文化庁芸術祭大賞を受ける。
著書に『夢にむかって飛べ 宇宙飛行士エリソン・オニヅカ物語』(講談社)、『虹の絆』(毎日新聞社)など。最近刊『子犬よさらば、愛しきいのち/ユキは十七歳、特攻で死んだ』(ポプラ社)。

「2004年 『ピアノは知っている 月光の夏』 で使われていた紹介文から引用しています。」

毛利恒之の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
宮部みゆき
有効な右矢印 無効な右矢印

月光の夏 (講談社文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする
×