村上春樹全作品 1990~2000 第3巻 短編集II

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 170
感想 : 20
  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061879430

作品紹介・あらすじ

名作「神の子どもたちはみな踊る」「レキシントンの幽霊」収録。全篇加筆訂正。著者による書下ろし「解題」入り。

感想・レビュー・書評

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  • 村上春樹は苦手・・・だったのですが、短編はとてもよかった。
    長編で見られるナルシズムや女性の生理的なものに対する細かな描写が薄くなっているのがよかったのだと思う。

    「氷男」「緑色の獣」「かえるくん、東京を救う」のような、日常世界で異世界の何かとの遭遇を描いた作品が好きです。

    苦手と思いつつ読むのは、独自の世界観と、癖のある文体に妙な中毒性を感じるからなのだと思う。

  • 1995年は、私はドイツのベルリンで暮らしていたので、日本で起きた阪神大震災、サリンガス事件を国外で、物理的にも時空的にも距離をおいた体験だった。

    私が阪神大震災の一報を知ったのは、テレビで一報のニュースを日本語を勉強に来ていたドイツ人と自宅で見ていた時だった。その時映し出された光景は、私の母国である日本だとは信じられず、カフカ的に時軸が狂ったような、ゆがんだようなそんな感覚の中にいた。

    翌日の朝、大学で神戸出身の友人達に話しても、ぴんとこないようで、たいしたことないんじゃない、みたいだった。一面崩れた家屋の写真が載っている新聞を見せて、やっと事の重大さを理解したようだが、実感がない、ゆるりとしたぴったりそこに合わないよう感覚を持ったようだ。あまりに凄まじい光景に反応出来なかったのだと思う。

    私にとっての実際的な感覚は、日本に何度国際電話をしてもKDDからの一方的な「ただいま回線がつながりません」の自動応答だった。

    今もって私は母国である日本が被ったこの大震災に異邦人的存在を感じる。そんな中、この村上春樹の短編集1990〜2000年 3
    に収められている短編小説を通して、疑似体験が出来たような、ようやく少し自分としての体験として受け入れる、そんなような気がした。

    タイランド

    「あなたは美しい方です、ドクター。聡明でお強い。でもいつも心をひきずっておられるように見えます。これからあなたはゆるやかに死に向かう準備をなさらなくてはなりません。これから先、生きるだけに多くの力を割いてしまうと、うまく死ぬることができなくなります。少しずつシフトを変えていかなくては
    なりません。生きることと死ぬることとは、ある意味では等価なのです、ドクター」

    「ドクター、お願いです。私にはそれ以上何も言ってはいけません。あの女が申し上げたように、夢をお待ちなさい。あなたのお気持ちはわかりますが、いったん言葉にしてしまうと、それは嘘になります」

    「今は我慢することが必要です。言葉をお捨てなさい。言葉は石になります」

    なぁミニット、それでは私たちはいったいに何のために生きているんだい?

    {北極熊の孤独、それは必然的なもの。
    心をひきずる、なんて珍しいことば。
    タイランド 仏教の信心深い国}
     

    バルブ経済が破綻し、巨大な地震が街を破壊し、宗教団体が無意味で残忍な大量殺戮を行い、一時は輝かしかった戦後神話が音を立てて次々に崩壊していくように見える中で、どこかにあるはずの新しい価値を求めて静かに立ち上がらなければならない、我々自身の姿なのだ。我々は自分たちの物語を語り続けけなくてはならないし、そこには我々を温め励ます「モラル」のようなものが
    なくてはならないのだ。それが僕が描きたかったことだ。

    僕は1995年の初めに起こったこのふたつの大事件は、戦後日本の歴史の流れを変える(あるいはその転換を強く表明する)出来事であったと考えている。その二つの出来事が示しているのは、我々はおおむね、自分たちの踏んでいる大地が揺らぎのないものだと信じている。あるいはいちいち信じらるまでもなく「自明の理」として受け入れられている。しかし、突然それは我々の
    足下で「液状化」してしまう。我々は、日本の社会が他の国に比べて遥かに安全であると信じてきた。銃規制も厳しいし、凶悪犯罪の発生率も低い。
    しかしある日出し抜けに、東京の心臓部で、地下鉄の車両内で、毒ガスによる大量殺戮が実行される。目に目えない致死的な凶器が通勤する人々を無差別に襲う。

    (村上春樹全作品1990〜2000 3 より個人的に抜粋 私的覚書)

  • 蜂蜜パイがお気に入りだった。

  • 作家のスタイルが色濃く出ていた短編集だった。

  • 氷男
    UFOが釧路に降りる

  • <閲覧スタッフより>
    大手前大学 交流文化研究所主催 文芸講演会
    村上春樹と『阪神間文化』の周辺-私がめぐりあった作家たち-
    講師:ノンフィクション作家 小玉武 先生

    文芸講演会記念 特集展示本
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    所在記号:918.68||ムハ||2-3
    資料番号:10151660
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  • レキシントンの幽霊。緑色の獣。氷男。七番目の男。めくらやなぎと、眠る女。UFOが釧路に降りる。アイロンのある風景。神の子どもたちはみな踊る。タイランド。かえるくん、東京を救う。蜂蜜パイ。

  • 苦手な村上春樹を短編から再チャレンジ。
    「かえるくん、東京を救う」という話が入ってるから3巻から読み始めることにした。
    他にもタイトルだけ知っていた「レキシントンの幽霊」とか教科書に載っていた「七番目の男」とかが入っていて馴染みやすい一冊だった。
    長編作品に比べると、独特のまわりくどい表現が少なくて読みやすかった。

  • 何回読んでも面白い

  • 『レキシントンの幽霊』と『神の子どもたちはみな踊る』でほぼ構成。
    『神の子どもたちはみな踊る』は映画になってるはず。観なきゃ。
    『1Q84』といい、1995年の事件は村上作品へ大きな影響を与えたのだな。がっつり取材もされたのだし、当たり前か。

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著者プロフィール

1949年 京都府生まれ。著述業。
『ねじまき鳥クロニクル』新潮社,1994。『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』新潮社,1985。『羊をめぐる冒険』講談社,1982。『ノルウェイの森』講談社,1987。ほか海外での文学賞受賞も多く、2006(平成18)年フランツ・カフカ賞、フランク・オコナー国際短編賞、2009年エルサレム賞、2011年カタルーニャ国際賞、2016年ハンス・クリスチャン・アンデルセン文学賞を受賞。

村上春樹の作品

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