「人生を変えた本と、本屋さん」で紹介されていたアメリカの児童書。
こまっしゃくれた裕福な家庭の一人娘ハリエット(小6)は、将来小説家になる為に、学校や身近な人、近隣住民を文字通りスパイして、自分のノートに書きつけている。読み始めは、鋭いながらもトゲのある彼女の筆致に少々ゲンナリしたが、そのノートが、クラスメイトの手に渡ってしまってからのストーリー展開に惹きつけられた。
好き放題書いていたため、親友も遠ざかり、クラス中が敵となり、いじめられるようになる。
学校に行きづらくなり、休んでしまったり…という展開は日本とそう変わらないのだが、ハリエットはそこでへこたれず、立ち上がり、巻き返しを試みるところが秀逸だ。
彼女の芯の強さは、忙しい両親に代わって幼い頃から住み込みで世話をしてくれたオール・ゴーリーという女性によって培われた。ハリエットがピンチに陥る前に、退職して遠方へ行ってしまうのだが、オール・ゴーリーのそれまでの言葉と愛情がハリエットを奮い立たせる。
このサリバン先生のようなオール・ゴーリーの言葉と生き方は、大人が読んでも心に響く。
『すぎたことは、すぎたこと。わたしはどんなものも、だれも恋しがりはしません。みんなすばらしい思い出になっているのだから。わたしは自分の思い出をだいじに守り、いつくしむけれど、その中に入りこんで、ぬくぬくと寝そべったりはしません。』p.298
1964年に出版されたというが、片親や格差、いじめなど、今読んでも古さを感じない。児童書という枠を超えている物語だと思う。2016.8.22