貼雑年譜

  • 講談社
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061952669

作品紹介・あらすじ

江戸川乱歩生誕100年記念

江戸川乱歩を「乱歩(RAMPO)」たらしめる“狂気”の実像を 日記、イラスト、写真、手紙、生原稿、メモ書き、新聞・雑誌の切抜き、チラシやパンフレット、自著の新聞広告などで、乱歩自身が浮き彫りにする門外不出だった待望の書。

感想・レビュー・書評

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  • 江戸川乱歩の『貼雑(はりまぜ)年譜』(講談社)を、図書館で借りてきて読んだ。

    「貼雑年譜」とは、乱歩が自らの半生や作家としての生活についてまとめたスクラップ・ブックのことである。

    戦時中、その作風から軍部ににらまれた乱歩(たとえば、短編「芋虫」は検閲により全編削除)は、「時局のため文筆生活が殆ど不可能となったので暫く休養する事にした」。そのため、時間に余裕ができ、「その徒然にふとこの貼雑帖を拵えて置くことを思い立った」のだという。

    乱歩自身に関する新聞・雑誌記事、乱歩作品の広告、書簡、写真、名刺、スケッチなど、雑多なものが貼り込まれているのだが、たんなるスクラップ・ブックの域を超えた自伝的資料の集成となっている。貼られた資料の一つひとつに、乱歩自身が手書きで解説コメントを加えているからである。

    そのコメントはときに長文となり、『貼雑年譜』全体が“スクラップ・ブックの形を借りた自伝”の趣をなしている。

    かれこれ十数年前、私は立教大学そばにある旧・乱歩邸を訪ね、『貼雑年譜』の本物を見せていただいたことがある。それは、乱歩の子息である平井隆太郎さん(元立教大教授・心理学者)に、「父の思い出」をうかがう取材でのことだった。

     私はそのとき『貼雑年譜』に感銘を受け、「自分もこういうものが作りたい」と思った。思っただけでけっきょく作らなかったが、考えてみれば自分のサイトやブログは、「ネット上の『貼雑年譜』」みたいなものだ。

    たとえば、乱歩は『貼雑年譜』に自作に対する書評を貼り込み、その書評についての感想を横に書き込んでいたりする。いまどきの物書きがブログでやっていることと同じである。

    もしも乱歩が21世紀の作家だったとしたら、間違いなく熱心なツイッタラー、ブロガーになっていたことだろう。いわば、乱歩は「元祖ブロガー」「元祖ツイッタラー」なのである。

    この『貼雑年譜』で目を瞠るのは、乱歩の恐るべき整理魔ぶりだ。

    たとえば乱歩は、生まれてから自分が暮らしてきた家々について、記憶をたどって方眼紙に間取りを書き、それを貼り込んでいる。そして、その家にまつわる思い出なども書き込んでいる。そうしたパラノイアックなまでの几帳面さの中に、乱歩の創作力の一端もあるのだろう。

    「自分史」のたぐいをブログや本で作りたいと考えている人は、一度この『貼雑年譜』を見てみるとよいと思う。最高のお手本になるはずだ。

    ちなみに、この講談社版は、全65巻におよぶ「江戸川乱歩推理文庫」の「補巻」として刊行されたもの。原本そのものの完全複製ではなく、縮小・モノクロ印刷し、収録ページも取捨選択がなされている。それでも、見ているだけで面白くて興趣尽きない内容である。

  • 文学

  • 乱歩さんサイコーです。

  • 小説関連ということで、小説カテゴリに入れておきました。江戸川乱歩氏の有名な「貼雑年譜(廉価版)」です。自分の祖先からすべてメモってあって面白い!!広告も面白い!!ただ廉価版だから白黒なのがイヤ…

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著者プロフィール

1894(明治27)—1965(昭和40)。三重県名張町出身。本名は平井太郎。
大正から昭和にかけて活躍。主に推理小説を得意とし、日本の探偵小説界に多大な影響を与えた。
あの有名な怪人二十面相や明智小五郎も乱歩が生みだしたキャラクターである。
主な小説に『陰獣』『押絵と旅する男』、評論に『幻影城』などがある。

「2023年 『江戸川乱歩 大活字本シリーズ 全巻セット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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