中原中也 (講談社文芸文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (366ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061960374

作品紹介・あらすじ

中原の不幸は果して人間という存在の根本的条件に根拠を持っているか。…人間は誰でも中原のように不幸にならなければならないものであるか。…深い友情から発した鋭い洞察力と徹底した実証的探究で、中原中也とは何か、文学とは何かに迫る第一級の評伝。野間文芸賞受賞の『中原中也』から、「中原中也伝-揺藍」「朝の歌」「在りし日の歌」を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 中也の評伝としては最も優れていると思う。緻密な論考の上に中也の姿が構築されている。

  • 中原中也とも一時期直接の交友があった著者による評伝。三章にわたり、時制が行ったり来たりで把握しづらい分もあったが、内容は濃密。長谷川泰子氏については、悪い人ではないし、美しい瞬間もあったが、詩才や文学の才などはなく、どちらかというと気のいい俗っぽい人、文学酒場にもタカりにくるような歓迎されざる客だった、小林との同棲時はノイローゼだった、という評価。/富永太郎の失恋の特徴は、それを過誤と敗北ではなく、自己の存在の理由に転じようとする意志にある、過誤を過誤と認めたくない大変な傲慢だが、その傲慢のうちに、大正十四年、二十四歳で死んだ。/もう秋か、ーそれにしても何故に永遠の太陽を惜むのか、俺達はきよらかな光の発見に心ざす身ではないのか、ー季節の上に死滅する人々からは遠く離れて。(小林秀雄訳)/病気というシチュエーションが二人を結んだと中原はいうが、通俗小説を連想するのは中原の中の「口惜しき人」のさせる業である。ここにあるのは、単に泰子が男を替えたという事実だけである。/中原の詩が今日これほどまでに読まれるに到った素地には、歌曲となりラジオの普及とともに浸透した、という一因もあった。/長男を失った頃の「ゆきてかへらぬ」「一つのメルヘン」「言葉なき歌」「冬の長門峡」「月の光」などの傑作は、長男を失った時期に書かれた。/安原喜弘「中原中也の手紙」にもあたってみたい/「お母さん、ぼくは女に逃げられたところなんですよ」と中原がいったので、「そう、それはよかったじゃないか」と答え、乱雑な家の中を一日がかりで掃除したという。(母フクさんへの聞き取り)/著者に贈られた、「玩具の賦 昇平に」という詩にもあたってみたい/中原の詩作群を、私小説的な告白とする者、後期には宇宙の理を体現するところまで来ていたとする者、さまざまな見方があるとか。周囲の、後世のさまざまな評価、毀誉褒貶の向こうに、各自なりの中原中也像が結ばれているのだと思う。

  • 作品やルックスからは繊細で寡黙なイメージを抱くが、
    中原中也はなかなかめんどくさくて複雑な人間だ。

    文学上の友として喧嘩したり嫉妬しあったりと、
    中原と筆者の関係は常に友好的であったわけではないようだが、
    冷静な分析は非常に説得力がある。
    その一方で、長い年月を経たからこそ感じる、若くして亡くなった友への
    感傷がにじみ出ており、筆者の中原への尊敬の気持ちも感じられる。

  • 中原中也考察本。二十数年の間に中也について書いたものをまとめたものなのだそうなので文量は多い。「詩人」の項が特に血の通った感じがして好きだ。「しかし中原が今生きていて、僕がこの頃書いてるものを読んで、何て言うだろうかと思うと、やはりゾッとする。」

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著者プロフィール

大岡昇平

明治四十二年(一九〇九)東京牛込に生まれる。成城高校を経て京大文学部仏文科に入学。成城時代、東大生の小林秀雄にフランス語の個人指導を受け、中原中也、河上徹太郎らを知る。昭和七年京大卒業後、スタンダールの翻訳、文芸批評を試みる。昭和十九年三月召集の後、フィリピン、ミンドロ島に派遣され、二十年一月米軍の俘虜となり、十二月復員。昭和二十三年『俘虜記』を「文学界」に発表。以後『武蔵野夫人』『野火』(読売文学賞)『花影』(新潮社文学賞)『将門記』『中原中也』(野間文芸賞)『歴史小説の問題』『事件』(日本推理作家協会賞)『雲の肖像』等を発表、この間、昭和四十七年『レイテ戦記』により毎日芸術賞を受賞した。昭和六十三年(一九八八)死去。

「2019年 『成城だよりⅢ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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