- Amazon.co.jp ・本 (454ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061960428
作品紹介・あらすじ
なぜ、それが"物語・歴史"だったのだろうか-。おのれの胸にある磊塊を、全き孤独の奥底で果然と破砕し、みずからがみずから火をおこし、みずからの光を掲げる。人生的・文学的苦闘の中から、凛然として屹立する、"大いなる野性"坂口安吾の"物語・歴史小説世界"。
感想・レビュー・書評
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[桜の森…]桜は本来は畏怖の対象だったというグッとくる書き出し。美しさの中にグロテスクが内包された幻想的な怪奇小説。亭主を殺された美女は、殺した山賊を尻に敷き山賊の女を殺させる。都へ移り山に戻り桜の森で鬼となり桜となる。なんとも身勝手な女と欲のままに生きた山賊。なのにどうして儚い物語になるのか。ただ或る桜の森に対して得体の知れない恐怖と耽美を感じる不朽の名作。
[夜長姫…]「好きな物は呪うか殺すか争うかしなければならないのよ。… いま私を殺したように立派な仕事をして・・・」この一文が全て。恐ろしい小説。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
坂口安吾を一冊通して読むのは初めて。十月桜が咲いている今日この頃、有名な表題作が気になっていたところ、たまたま書店で面だしされていたので読んでみようかなと。
驚いたのが、著者は歴史小説を書いていたんですね。知らなかったです。
『二流の人』では、大河ドラマの黒田官兵衛のシーンが脳裏に浮かびましたが、小西行長に関しては、日本の会社の駄目な部分の走りを感じました。話しは時間軸が前後しながらも、内容が破綻せずに無理なく読み進められます。『梟雄(きょうゆう)』は、斎藤道三の一代記が書かれており、最後の描写には男気を感じますね。
さて、表題作ですが、女性の残酷な行動が、なんともまあ…。ともあれ、不器用で一途な山賊の心境が、その女性との出会い以後に変化して行く様が読みどころかな。例えば、女性の装身具から物の中にも命を見い出したり、都に出て世の中の世知辛さを知り、そして山へと戻る途中の馴れ初めの会話から、お互いが人間らしさを取り戻した後で印象的な終局を迎えます。このラストの描かれ方が、男と女で違うところが良かった。もし、ここの描かれ方が男女一緒であったなら、ただ残酷なだけの小説に終わってしまったでしょうね。
あと『夜長姫と耳男』も強烈な印象を残すストーリー。途中、村人が次々に亡くなるのを姫が見て言う一言は、地獄少女のセリフ「いっぺん、◯んでみる?」に並ぶ強烈な一言!まるで、姫の恍惚とした表情が目に浮かぶようです。そして、ラストの姫のセリフは「喧嘩するほど仲がいい」に通じることを、一線を越えてしまう選択をしてしまうところが、この小説がこうなるべくしてこうなったのだなと、妙に納得がゆくのでした。
他にも『閑山』や『紫大納言』のような寓意に長けた短篇や、逆道場破りの歴史・剣豪小説『花咲ける石』など、収録されている13篇は貴重な読書体験になりました。 -
寓話物なら表題作の「桜の森の満開の下」よりも「夜長姫と耳男」の方が断然良かった。設定もセリフも気迫が満ちていて読んでいて心地よい。
「好きなものは咒うか殺すか争うかしなければならないのよ。お前のミロクがダメなのもそのせいだし、お前のバケモノがすばらしいのもそのためなのよ。いつも天井に蛇を吊して、いま私を殺したように立派な仕事をして・・・」
歴史物なら「二流の人」という黒田如水の話が良かった。上杉謙信→直江兼続→真田幸村の系統が「横からとびだしてピンタをくらわせてやろう」という「風流人で、通人で、その上戦争狂」という分類がなるほど。これも主題とは関係ないが、豊臣秀吉が甥の秀次を殺して自分も死ぬまでの狂って堕ちていく描き方が迫力があった。 -
花といえば奈良時代は梅だが、平安以降は桜がクローズアップされる。「世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし」在原業平は不安に駆られるほどの桜の美しさと恋心を重ねて、あんなもんなければのどかな心でいられるのに、と詠んだ。桜は狂気を呼び込む。坂口安吾の「桜の森の満開の下」は美しく残酷な女に翻弄される山賊の話だ。金品同様攫った女を自分のものにするしかない山賊の暮らし。山賊が魅せられた女は人間の生首を集めて並べたがる。満開の時に通ると気が狂うと言われる桜の森で、男は鬼女になったその女を斬り殺す。すると女は花びらと共に風に飛ばされ消えて行ったという狂気と幻想の話だ。花吹雪の中、立ち尽くす男に残されたのは永遠の孤独と狂いそうなまでの虚無。
子供の頃はお彼岸の墓参りついでに墓地で親戚と一緒にお花見したものだ。墓地には必ず桜が咲いている。柳田國男がどこかで書いていたが、桜は人が大勢亡くなった跡に植えられるもので、地名に桜がつく土地は元々死体捨て場だった、と。さくら染は地中にある死体の血を吸い上げてほんのりピンクに染まるという話もある。梶井基次郎は「桜の樹の下には死体が埋まっている」と書いた。そう考えないと不安になると言った。かつての日本人にとってこの感覚は自然だったのだと思う。きれいな薔薇に棘があるように、きれいな桜は死と狂気を招く。死の国と繋がり美しく舞い散る花びらに狂気を感じる。 -
桜の森の満開の下(講談社文芸文庫)
著作者:坂口安吾
発行者:講談社
タイムライン
http://booklog.jp/timeline/users/collabo39698
美的な文章が光る安吾文学の傑作。 -
安吾は大好きな作家です。十年振りに読み返しましたが、やっぱり今読んでもいいなぁ。文体とか、ほんとに好みなんだなぁ。講談社のこの文庫に収録されているのは逸品揃いで、結局全て再読。『二流の人』エグいエピソードと間のいいカタカナ使いで安吾らしい戦国歴史絵巻。講談を聞いてるみたいで、するする読めて、ワクワクしちゃう。表題作と『夜長姫と耳男』は寓話的ゆえ、ついついこれらの物語が何を意味しているのか、などと分析してしまいそうになるけれど、それはつまらない。もう、そのまま、読むだけ。世界に浸るだけでいたい。
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坂口安吾が好きすぎて、冷静に判断できないのだけど
この短編集はとにかくすべてが美しい。
安吾らしい冷徹さと温かみの混在した、
謎めいた、それでいてとことんリアルな世界観。
表題作はとにかく一読の価値ありです。 -
桜の花の満開はあまりに美しい。そして、あまりに美しいものには、不気味がある。ふとした瞬間に冷静では居られなくなりそうな何かが。
「花の下は涯がないからだよ」
何度も読み返す、大好きな作品。-
「冷静では居られなくなりそうな何かが。」
うんうん、安吾が読みたくなってきた、、、「冷静では居られなくなりそうな何かが。」
うんうん、安吾が読みたくなってきた、、、2014/02/26 -
2014/03/03
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2014/03/14
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気持ち悪さと美しさが交錯していて更に不気味さを引き立たせている
著者プロフィール
坂口安吾の作品






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