鞄の中身 (講談社文芸文庫)

  • 講談社 (1990年1月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (302ページ) / ISBN・EAN: 9784061960817

みんなの感想まとめ

不気味さや不穏さが漂う短編集で、各作品が独自の魅力を放っています。吉行淳之介の文体は、重厚さと洒脱さが絶妙に融合し、読者を引き込みます。特に冒頭の『手品』は衝撃的で、印象に残る作品です。短編の中には、...

感想・レビュー・書評

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  • ホラー短編集と括ってしまってもいいような不気味で不穏な作品が少ないボリュームで小気味良く続く。
    吉行の重さと洒脱がない混ぜになった文体も親和性があり一作毎に尾を引く。
    何と言っても冒頭の『手品』で受けた衝撃は忘れられない。

  • 再読。

    吉行淳之介の短編集。自分の中のイメージとして吉行作品と言うと濃厚な性…という感じだったのだが、この短編集や「目玉」等を読むとイメージが少し変わる。

    「風呂焚く男」の新しい恋人?と住む予定の家に突然現れた昔の恋人(?)。彼女は無言で玄関先に立つばかりだったが、ある時白い下着を詰めた風呂敷を置いて現れなくなる…。残された大量の白い下着(ブリーフ)のシュールさにまず笑い、そして女同士の「男の新しい皮膚を作らんと」衣服等を贈り疑う様を見てからは最も繋がりの深い下着を置いていった意図と、下着を焼いた炎で沸かした湯に浸かる女…。

    「曲がった背中」に見える戦争の最中の、戦争未亡人の美しさ華やかさを敵とし鬱憤を晴らしていたであろう空気。そしてその人々の悪意の結果失われた正気と美貌。同情的な思いも抱え結婚した男の冷ややかな部分。

    「紺色の実」の、夫が眠っている早朝に畑の茄子を眺める女。終わってしまった、道ならぬ淡い恋愛と花が咲いては全て実となる茄子の対比。

    それぞれが抱えた秘密や価値観が妖しく浮き出る短編もあれば、生来の愛嬌で近隣の人々にも愛された飼い犬との日々を描いた「ミスター・ベンソン」等もある。薄暗く濃密、のイメージとはまた別の作品群が読める一冊

  • この発行とは違うのだけれど、私が手にした本は、装丁がとにかく可愛くて。
    吉行淳之介の随筆、初めて読みました。
    最初の方は、短編小説でしたが、これがまたとても素敵。もっと読みたいなぁ。

  • いわゆる「第三の新人」たちの作品って、あまりメジャーな文庫から出てないからとても歯がゆい。
    この講談社文芸文庫は廃刊を作らない代わりにちょっと値段が割高。元来、吉行の作品は合う合わないが激しいと思うのでまずは図書館で読むことを勧めます。

    この人の作品って、決して正統派じゃないし、何がいいたいのかわからないものがほとんどだけど、何となく手にとってしまう。
    かゆいところに手が届くというか、言語化できないもやもやした感情を代弁してくれる。

    優等生嫌い(中2病)の人におすすめ。

  • 「曲がった背中」「廃墟の眺め」「流行」の、戦争があった時代の空気感。
    「コーヒーカップの耳」を読んだときも思ったけれど、自分の命が自分のものでなく、焼け跡に人間が転がっているのに誰も驚かないこと、
    あるいはチョコレートの包み紙を大事にとっておいて時々嗅いでは幸せに浸るというようなこと。
    今の私たちにはぜったい理解できないような体験だと思う。

    でも当時の人たちだって、たまたまその時代に生まれただけで、壊れてしまった人たちもいたんだよな。

    心は多くの不気味な、得体のしれないものたちに取り囲まれている。

    でも自分がこうならなかったのはただの幸運で、しかもこれからこうならないとはいえないというのはものすごい恐怖だ。

    見えてはいけなかったものを見てしまった時の心がざわつくような短編集。


    「ミスター・ベンソン」も悲しい話であるけれど、「人間のものとしかおもえなかった」ところに一抹の希望を感じた。

  •  なんでこの本を選んだのかすっかり忘れてしまったけれど、きっと正統派?日本語に触れたくなったのかもしれない。

     これは、吉行淳之介の短編19編を集めた文庫本である。そして、くるっと裏をひっくり返してみて驚いた。なんと、1cmほどの厚さの文庫にしては異例のお値段1300円と表記されているではないか。

     それはともかくとして、この短編集。短編と呼ぶにはあまりに短い掌編小説と言えるようなものも多々あるが、完成度が高い。文章はたらたらと長く書くものではないんだなぁと、反省させられることしきりである。

     それにしても、昭和の前期〜中期を描いたものでありながら、人の心をとらえるということにおいて、古きも新しきもないのだなあと実感させられる。みずみずしくて、それでいて、すぱっと切れるような研ぎ澄まされた感性は、最近の直木賞などではとうていお目にかかれないものだ。

  • 旅行に持っていった本で一冊だけ薄い短編集がまぎれこんでいて、そのせいでなんかすんごいスケールが狭いように感じるんだけど、『暗室』のイメージしかなかったおれにとって、こういう怪奇譚的なのは新鮮。童謡から物語をつくるってもの好き。あとあんまり関係ないけど、おれの中で余裕だと答えたいとき「余裕のよっちゃん」じゃなくて「余裕の吉行淳之介」って言うのがマイブーム。

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著者プロフィール

大正十三年(一九二四)、岡山市に生まれ、二歳のとき東京に移る。麻布中学から旧制静岡高校に入学。昭和十九年(一九四四)九月、岡山連隊に入営するが気管支喘息のため四日で帰郷。二十年東大英文科に入学。大学時代より「新思潮」「世代」等の同人となり小説を書く。大学を中退してしばらく「モダン日本」の記者となる。 二十九年に「驟雨」で第三十一回芥川賞を受賞。四十五年には『暗室』で第六回谷崎潤一郎賞を受賞する。主な作品に『娼婦の部屋』『砂の上の植物群』『星と月は天の穴』『夕暮まで』など。平成六年(一九九四)死去。

「2022年 『ネコ・ロマンチスム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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