- Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061960909
作品紹介・あらすじ
東京日本橋の地下鉄ストアで見つけた乾山の五枚の中皿。古道具屋で掘り出した光琳の肖像画。浜名湖畔の小川で、食器を洗っていた老婆から譲り受けた一枚の石皿。その近くの村の、農家の庭先にころがっていた平安朝の自然釉壷…。美しいものとの邂逅が、瑞々しく生々と描かれる名随筆二十六篇。読売文学賞受賞。
感想・レビュー・書評
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別冊太陽の『101人の古美術』で取り上げられており、興味を持って手に取った昭和のエッセイだ。
日本の仏文学者で古美術を愛した男性が、乾山の皿や光琳の肖像画といったものを何気ない店先から「掘り出し」た顛末や、美を愛する気持ちなどが語られている。
文中にさらりと友人として井伏鱒二の名前が出てきて、ああ、そんな前の時代の人なのか、とはっとするくらい、古さを感じさせない。
もちろん、現代には著者が旅したような日本の山村はもう残っていないし、戦争に関する話も出てくるのだけれど、戦前戦後の半世紀以上昔のことだ、と思わせない瑞々しさがあって、令和の今の時代に読んでいても十分に楽しかった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
食傷する刺激味がなく、あっさりしてるけれど味わい深い文章でした。
筆者の、その眼力のみによって、とんでもない古美術を見つけていく過程、あるいは、美への姿勢もさることながら、
「田舎」や単なる「山村」という言葉とも違うが、「都市」や「街」ではない場所 ーーー
そういった、「日本の静かなる場所」、あるいは「静かなる場所に眠っているであろう未だ見ぬ美」こそ、筆者にとっての至高の美ではなかろうか。そのように感じたことを、特筆したいです。
題名、「ささやかな日本発掘」は、
「日本をささやかに発掘する」という意味と、「ささやかなる日本を発掘する」という意味の二つが、重なり合っているような気がします。