畏怖する人間 (講談社文芸文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (398ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061960992

作品紹介・あらすじ

その出発以来、同時代の"知"に、圧倒的な衝撃を与えつづけて来た著者の、秀れた光芒を放つ第一評論集。群像新人文学賞受賞作「意識と自然-漱石試論」をはじめとし、その後の『マルクスその可能性の中心』『日本近代文学の起源』『探究1』『探究2』など、柄谷行人のその後の力業を予告する初期エッセイ群。

感想・レビュー・書評

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  • 柄谷行人 「畏怖する人間 」

    夏目漱石の存在論的な恐れ(内側から見た私)を抽出し、その系譜として 小林秀雄、吉本隆明、江藤淳らの思想的到達点をたどる構成。夏目漱石から吉本隆明への系譜はわかりやすかった。


    意識と自然(漱石試論1)
    漱石小説の二重構造を指摘し、漱石の存在論的な恐れ から漱石の内的世界を論じている


    意識と自然とは
    *意識=自分に始まり自分に終わる=自分=社会
    *自然=当然あるべき世界〜社会の規範と背立する=存在しないもの
    *自然と人間の関係〜人間は「自然」を抑圧し、無視して生きるが、それによって自らを荒廃させるほかない

    漱石は人間の心理が見えすぎる自意識の持ち主だったため、見えない何ものかに畏怖する人間だった

    漱石の内的世界
    *社会に背立する私
    *正体不明の不安〜私はどこから来て、私は何であり、どこへ行くのか
    *行き止まりの先にまだ奥がある

    吉本隆明
    *人間はもともと社会的人間ではない〜孤立して、自由に食べ考える「個人」であればいい〜自立とは孤独であること
    *吉本隆明が自立の根拠にすえているのは「自然」

    吉本隆明は親鸞に「心理を乗り超えたものの影」をみた
    *善悪を決定するのは、人間の心理(意識)でなく、規範でもなく、それらを超えた何か
    *人間の善悪を「無意識の構造〜主観的な恣意性を超えた構造」において見る

    漱石小説の二重構造
    *倫理的位相と存在論的位相
    *他者としての私(外側から見た私)と他者として対象化しえない私(内側から見た私)




  • 軍造文学新人賞
    著者:柄谷行人(1941-、尼崎市、哲学)
    解説:井口時男
    作家案内:三浦雅士

  • P.1990/10/15

  • 128

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著者プロフィール

1941年兵庫県生まれ。東京大学経済学部卒業。同大学大学院英文学修士課程修了。法政大学教授、近畿大学教授、コロンビア大学客員教授を歴任。1991年から2002年まで季刊誌『批評空間』を編集。著書に『ニュー・アソシエーショニスト宣言』(作品社 2021)、『世界史の構造』(岩波現代文庫 2015)、『トランスクリティーク』(岩波現代文庫 2010)他多数。

「2022年 『談 no.123』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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