金沢・酒宴 (講談社文芸文庫)

著者 :
制作 : 四方田 犬彦 
  • 講談社
3.67
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本棚登録 : 235
レビュー : 16
  • Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061961050

作品紹介・あらすじ

金沢の町の路次にさりげなく家を構えて心赴くままに滞在する、内山という中年の男。名酒に酔い、九谷焼を見、程よい会話の興趣に、精神自由自在となる"至福の時間"の体験を深まりゆく独特の文体で描出した名篇『金沢』。灘の利き酒の名人に誘われて出た酒宴の人々の姿が、四十石、七十石入り大酒タンクに変わる自由奔放なる想像力溢れる傑作『酒宴』を併録。

感想・レビュー・書評

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  • うっかり通勤電車で読み始めてしまったのだけれど、すぐに「これ電車で読んだらあかんやつ」認定して部屋読み用に切り替えました。休日の夜にお気に入りの梅酒(いただきものだけど澤乃井の。この本にはワインとか洋酒じゃダメなんだよなあ、でもさすがに日本酒は常備してないし)をチビチビやりながら、読んでる時間がとても幸せでした。

    しかしアルコールを摂取せずとも、文章そのものに酩酊してしまう。一見共通点なさそうだけれどリチャード・リンクレイターの映画「ウェイキング・ライフ」を観たときの感覚に近いかも。あちらの酩酊感はドラッグ系でしたが、現実と非現実の境目が曖昧になって、世界の輪郭がぐらぐらと揺れて崩れ出し、なんてことない会話がすべて哲学的に聞こえてきちゃうあの感じ。会話の相手がだんだん人間じゃなく神仙もしくは狐狸の類いに思えてきたり、覚めたらどこから夢だったのかわからないような感覚も。

    解説でこれを一種の「ユートピア小説」だと評されていたのも納得です。しかし忍者寺は実在するようなので、いつか行ってみたい(笑)

  • 主人公が金沢でいろいろな人にあって酒を呑んで酔っ払って…という、たわいもないストーリーなのですが、この文体というか表現がハンパなくすごくて、読んでいてこっちまで酩酊状態になってるかと錯覚するほど。文体が本当に特徴的で、「Aを見てBと感じた」というのを、おおよそ考え得るもっとも湾曲してクネクネした遠回りな方法で表現していて…これが普通ならめんどくさくなったり、読む気がしなくなったりするのですが、逆に不思議と「ん?」と2度読みしてしまう何かがありました。とにかくエラくクネクネしているのにも関わらず、著者の人柄からか、言葉選びからか、爽やかで上品とまでに感じてしまう文体で、さらに読点をあまり用いていないので、読むたびに文をどこで切るかで印象も変わるし…。本当に、日本語で遊び過ぎ! とツッコミたくなる素敵な大人の言葉遊び的な作品でした。

  • 2018/6/23購入

  • 今月の猫町課題図書。吉田健一は名前はもちろん知っていたが、軽いエッセイストくらいの認識で、こんなにすごい小説を書いた人だとは知らなかった。

    「金沢」は、風流人 内田の一人称ナレーションで幻想的な酒席と俗世を超越した会話を独自の文体で描く。残念ながら最終章が蛇足だが、単純に最終章を取り除くだけでも文句なしの小説。

    「酒宴」は、銀座で飲んで懇意になった男と、次の日の朝に灘まで押しかけ、醸造タンクに擬せられる人々と延々と酒を汲み交す豪快な短編で、これもすごい。

  • 舞台は金沢、東京銀座。何れも何処の店とは語らず、ひたすら旨そうに酒を飲み、珍味に舌鼓を打ち、独白と取り留めのない会話に終始する、現実と幻想の皮膜を好悪分かれる独特の文体で綴る酒仙小説。吉田健一自身が休日には昼から飲み始め、しまいには斗酒に到る大酒飲みゆえ、この小説ははたして素面で書いたのかと訝しく思う。久々に読んだ文芸書。新潮文庫の百冊をひたすら読み込んだ高二の夏を思い出す。ただ読んだのが飲んだくれ小説。あの頃は純文学、今は不純小説。きみまろ的オチでおます。

  • 結局読み切れなかった「金沢」 
    「酒宴」の方は別のところで読んだかも。 
    朝から飲み始めて… ずいぶん世の中は忙しいねぇ… というはじまりのくだりがなによりすごい

  • 読書会(「東京の昔」)で話題に出て、あれ、そーだったっけなーと思って。センテンスは全然こっちの方が「普通」です。
     ^^;;

    「東京の昔」はラストが飛翔!!なだけにベクトルが一方方向。→→→→→→→→→→→って感じですが、こっちは物語が閉じているというか、内側で循環している感じです。うまい言葉が見つかりませんが純和風のファンタジー、みたいな。露伴の「歓談」とか・・・
    あー、”金沢”なだけに鏡花の「夜叉が池」「天守物語」
    辺りの雰囲気も。

    いずれにせよ、あんまり通勤電車で読むのに向いたものでないのは確かで。ああ、木陰でのんびり読みたかったなあ~

  • なんだよこれ、のたくってるよ。
    読んでも読んでも同じシーンに遭遇するよ。

    ボルヘスの迷宮のような小説。
    繰り返し繰り返し語られる心象風景。
    登場人物はいろいろいそうだけど実はひとりの人間が問わず語りで話しているみたい。

    酒飲んでると、この小説みたいな話をしてみたいなと思うことがある。
    それを実際にやられてしまっているからたまらない。ぐだぐだと読むに限る。

  • 文章に酔って酒が飲みたくなる小説と言えば、これと倉橋由美子『酔郷譚』が双璧。
    何も考えずにダラダラ飲めたらどんなにいいことか!
    ああ、酒が飲み(ry

  • あの吉田茂の息子にして、海外生活も長いので、よくも悪くも貴族趣味である。なにしろ三島由紀夫に面と向かって「お前は俗物だ。あまり偉そうな顔をするな」と罵倒したっていうんだから凄いよね。で、本書にはそんな貴族趣味のよい面が出ている。深い教養に裏打ちされた幻想的、哲学的な文体はまったく独特のものであって他に類を見ない。文庫解説で四方田犬彦は「稀有なユートピア小説」であると表現する(この解説も達意で素晴らしい)。まことに言い得て妙である。ユートピアとは構築するものでなく、すでに以前からそこにあって発見されるべきものであることを、筆者は20年以上に及ぶ金沢体験を通じて描き出して見せる。これはもう「傑作」と言うしかない。

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著者プロフィール

1912年、東京都生まれ。批評家・作家。ケンブリッジ大学中退。外交官の父・吉田茂(後の首相)の任地に従って中国、フランス、イギリスで育つ。1931年、大学を退学して帰国。ポーやヴァレリーの翻訳から文学活動を開始し、39年、中村光夫らと同人誌「批評」を創刊。戦後は翻訳、評論、随筆と一挙に幅広い活動を始め、言葉による表現の重要性を唱えた。主な評論に『英国の文学』『東西文学論』『ヨオロッパの世紀末』『時間』、小説に『瓦礫の中』『絵空ごと』『金沢』、随筆に『私の食物誌』など多数。


「2018年 『ラフォルグ抄』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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