懐中時計 (講談社文芸文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 177
レビュー : 16
  • Amazon.co.jp ・本 (314ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061961425

作品紹介・あらすじ

大寺の家に、心得顔に1匹の黒と白の猫が出入りする。胸が悪く出歩かぬ妻、2人の娘、まずは平穏な生活。大寺と同じ学校のドイツ語教師、先輩の飲み友達、米村。病身の妻を抱え愚痴1つ言わぬ“偉い”将棋仲間。米村の妻が死に、大寺も妻を失う。日常に死が入り込む微妙な時間を描く「黒と白の猫」、更に精妙飄逸な語りで読売文学賞を受賞した「懐中時計」収録。


大寺さんの家に、心得顔に1匹の黒と白の猫が出入りする。胸が悪く出歩かぬ妻、2人の娘、まずは平穏な生活。大寺と同じ学校のドイツ語教師、先輩の飲み友達、米村さん。病身の妻を抱え愚痴1つ言わぬ“偉い”将棋仲間。米村の妻が死に、大寺も妻を失う。日常に死が入り込む微妙な時間を描く「黒と白の猫」、更に精妙飄逸な語りで読売文学賞を受賞した「懐中時計」収録。

感想・レビュー・書評

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  • 昭和30~40年頃に書かれたものからか、文体が変わっていて、読み進むのが面白かった。
    主人公・大寺しんが妻を亡くしたころや、友人との語らいの様子を描いたものを含めた短編集。

    解説を読むと文体の不思議さは時代によるものでなく、小沼丹さんの個性によるものである様子。

  • 朴訥とした文体…と思いきや、
    風とか小川とか、そういう物の「さらさら」と
    流れていく様な、読んでいて非常に心地の良い
    美しい(雅やかとは異なる)短編集です。
    テーマに死を扱う割にはふんわり・さらりとしていて。
    なにより大寺さんの静かな「日常」が、
    そして優しく繊細な視線がいとおしい。

    表題「懐中時計」がとてもよかった。
    こういうの、あるある、と思ってしまう。

    兎に角漢字の使い方や日本語がきれい。
    原稿用紙に写してみたくなります。

  • 私にとって2作目となる小沼作品です。「黒いハンカチ」で描かれる茶目っ気とユーモアとに惹かれて読み始めた作家ですが,この作品ではそれらとは違った雰囲気を楽しむことができました。
    全部で11の短編が収められている本書の雰囲気は,最初の短編「黒と白の猫」で味わうことができるように思います。「学校」に勤める主人公・大寺さんの過ごす何気ない日常の中に,近しい人たちの死が入り込むさまを静かに描いているこの短編は,作者本人の言う通り「いろんな感情が底に沈殿した後の上澄みのような所」と呼ぶにふさわしい雰囲気をまとっていますが,それがなんとも言えない感慨を感じさせてくれるのです。大寺さんや他の人々が発する言葉の一つ一つから,悲しみや愛情や様々な感情を感じ取ることができ,本当にすっきりとした作品になっていると感じました。
    途中,「エジプトの涙壺」「断崖」「砂丘」といったサスペンス風味の強い短編が挟まれますが,この3つの作品で水面上に浮上してきた感情は後半の4編では再び奥底へと沈み,静かな雰囲気へと戻っていきます。本書の真ん中に配置されたこれら3編に私はすこし面喰ったものですが,後から考えるとこの配置はとてもよかったと思えます。
    人と,時の流れと,死と,そういったものを淡々と描くさまは,まるで「凪」のようです。しかし情景の裡に登場人物のほのかな心情をよく表した文体は,静かに,そして切実に,読む者に迫ってくる。本書から私はそんな印象を受けました。最後に載っている解説と作家案内とまでを読めば,この作品たちの奥深さをさらに知ることができるでしょう。

    (2010年10月入手・2012年5月読了)

  • なんとも言えずいいです。日常に死がやってきて、その中を日々静かに過ごしている大寺さん。ありそうでないです、こういう雰囲気をまとった小説は。

  • なんでもない空間、でもすぐそこに死が。

  • 文体と文章を味わい その先に何も求めない。

    小沼丹氏の創作態度そのものを
    とても心地よく感じた。

    「黒いハンカチ」以来2冊目だが 
    氏の文体を味わうことの快適さは 
    漱石を読むときに似ているような気がする。

    作者の世界が目前に広がる…その先に主張はない。
    このような文学 空気感 時代感 私は大好きだ。

    久しぶりに氏の作品に触れたが
    これからも できるだけ多く読みたい。 

  • だらーん、とした感じの書き方で、断念。

  • [ 内容 ]
    大寺さんの家に、心得顔に一匹の黒と白の猫が出入りする。
    胸が悪く出歩かぬ妻、二人の娘、まずは平穏な生活。
    大寺と同じ学校のドイツ語教師、先輩の飲み友達、米村さん。
    病身の妻を抱え愚痴一つ言わぬ“偉い”将棋仲間。
    米村の妻が死に、大寺も妻を失う。
    日常に死が入り込む微妙な時間を描く「黒と白の猫」、更に精妙飄逸な語りで読売文学賞を受賞した「懐中時計」収録。

    [ 目次 ]


    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • ネット書評で、「回想の作家」と褒められていて、どんな文章か気になったので

    私小説家と紹介されていたけれど、随筆なのか小説なのか境目の曖昧な話


    確かに、回想が巧み。
    電車に乗っていたら駅で友人を思い出し、思い出を語りながらその過去へまた……というようで、読んでいるうちに、「あれ、今どの時代だっけ」というのがわからなくなる。けれど、人の記憶の振り返り方ってこういうものなのかなあという印象で、まったく不快さがない。
    淡々と続く話。
    推理小説なのかな、という話も数編含まれているけれど、推理をするものでもなく、日常のささいな話なのに、人はこういうものを恐れているよね。というような……

    奥さんが浮気しているのをわかっていて帰れない男とか。
    泣く壺とか。

  • 主人公を大寺さんにした『黒と白の猫』、『タロオ』、『蝉の抜け殻』、『揺り椅子』の他『エヂプトの涙壺』、『断崖』、『砂丘』、『影絵』、『自動車旅行』、『懐中時計』、『ギリシアの皿』の11篇の短篇を収録。「死」について書かれているものが多いが、悲観的に書かずさらっとした「おかしみ」に転化している。「肉の失せた白骨の上を乾いた風がさらさら吹過ぎるようなものを書きたい」と作者は言うが、大げさにストーリーを展開させる物語ではなく淡々としていて濁った水を放置して一番上に来る綺麗な上澄みのような、セピアカラーの作品群。

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著者プロフィール

東京生まれ。1942年、早稲田大学を繰り上げ卒業。井伏鱒二に師事。高校教員を経て、1958年より早稲田大学英文科教授。1970年、『懐中時計』で読売文学賞、1975年、『椋鳥日記』で平林たい子文学賞を受賞。1989年、日本芸術院会員。

「2018年 『ゴンゾオ叔父』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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