父の帽子 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061961517

作品紹介・あらすじ

東京・駒込千駄木観潮楼。森鴎外の長女として生まれた著者は、父鴎外の愛を一身に受けて成長する。日常の中の小さな出来事を題材にして鴎外に纏わる様々なこと、母のことなど、半生の想い出を繊細鋭利な筆致で見事に記す回想記。「父の帽子」「『半日』」「明舟町の家」「父と私」「晩年の母」「夢」ほか16篇収録。日本エッセイストクラブ賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • グールドのブラームスの間奏曲集を聴きながら読んだ。私はクラシックにはあかるくないが、すごく合っていた。森茉莉や幸田文など、文学者の娘のエッセイは好きである。少女のようないたいけな感性や文学や芸術の教養にうっとりとする。世田谷文学館で観た森茉莉の肉筆原稿はお花だらけだったのもよく憶えている。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「肉筆原稿はお花だらけだった」
      常設だったら、いつか観に行きたいナ、、、
      「肉筆原稿はお花だらけだった」
      常設だったら、いつか観に行きたいナ、、、
      2014/06/10
  • 文庫本の裏表紙の説明によると「森鷗外の長女として生まれた著者は、父鷗外の愛を一身に受けて成長する。日常の中の小さな出来事を題材にして鷗外に纏わる様々なこと、母のことなど半生の思い出を繊細鋭利な筆致で見事に記す回想記。」とある。要はエッセイである。なぜこの著書を手にしたかについては、勿論、鷗外の作品を通して自身の人物像に興味を抱いたからである。超エリートコースで国の要職に就きながら、次々と名作を生み出す原動力については、わからなかった。しかし、繁忙の日々を過ごしながら、茉莉に対する惜しみない愛情を注ぎ、そして鷗外自身の悲しみは語ることなく封じ込めている。明治時代の男の気高さの象徴なのかもしれない。

  • 鴎外の末子を題材にした小説『類』を読んで長女森茉莉に興味が出て、初めて読む。
    鴎外像、妻志げと義母の対立、鴎外死後の志げの苦労など、鴎外の家族関係を巡る上記小説の原典に当たることができるとともに、類の視点からは登場してこない、生後すぐに百日咳で亡くなった不律の話が出てくるのも、理解が深まってきて良かった。
    しかし、鴎外こぼれ話は意外なほど少なく、そのような情報を仕入れるための読書を拒むように、森茉莉の文章は癖が強い。息継ぎや現実の捉え方が独特なせいか、なかなか読み進められない。暗いけど、華美。
    父鴎外を神様のようにみんなに公平に優しいという一方で、明らかに異性として見ており、その描写は母親の目線のような慈しみに溢れているようで、少しドキッとしてしまう。

  • ■一橋大学所在情報(HERMES-catalogへのリンク)
    【書籍】
    https://opac.lib.hit-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/0000041612

  • すごく豊潤さのあるエッセイ

  • 著者の父である森鴎外についてのエッセイなどを収録している本です。

    「父の帽子」などのエッセイは、もちろん父としての鴎外のすがたをえがいたものではあるのですが、文豪・森鴎外の素顔というよりも、森茉莉の作品世界のなかの「父」としての印象が強いように感じられます。本書に収められている「夢」という短編では、現実を「影」のように見ており、「すべてが夢のように不確かで、すべてが夢のように信じ難かった」と語る未里(マリイ)が登場し、装飾の多い文章によって著者独自の作品世界が構築されていますが、本書に収められている他のエッセイで登場する鴎外も、こうした作品世界のなかの人物のようでもあります。

    弟の不律とともに百日咳にかかり、弟だけが命を落とすことになったことをえがいた文章や、母の志けの晩年をえがいた文章などにも、やはり著者らしい、現実からすこし浮きあがったような感覚をおぼえますが、鴎外を題材にとった文章と比較すれば、もうすこし現実の推移を冷静にえがきとっているように思います。

  • 東京・駒込千駄木観潮楼。森鴎外の長女として生まれた著者は、父鴎外の愛を一身に受けて成長する。日常の中の小さな出来事を題材にして鴎外に纏わる様々なこと、母のことなど、半生の想い出を繊細鋭利な筆致で見事に記す回想記。「父の帽子」「『半日』」「明舟町の家」「父と私」「晩年の母」「夢」ほか16篇収録。日本エッセイストクラブ賞受賞。

    森茉莉を知ってすっかりのめりこんでから買い集めた一冊。彼女の文章は、急いで読みたくない。一つ一つの言葉を噛みしめて読みたい。だからいつもよりかなりゆっくり読んでいて、読了までにかなり時間がかかってしまった。父鴎外だけでなく、母親のことも結構書いてあって、幼少期から結婚して父が亡くなるまでの頃の思い出が多いですが、振り返ってここまで書けるって、本当にすごいなあ。彼女にとってパッパは真の恋人であり庇護者であり愛する人だったんだと納得する。そして結局独り身を通した茉莉の粋な生き方は、決して彼女自身が恥じたりするようなものではなく、むしろ楽しんでいたと思う。

  • 図書館で。
    森鴎外って結構早くに亡くなられたんだなぁ… 森茉莉が41だか42だかの時の子、とあって16だか17で嫁に出して2,3年で亡くなられた、とあるから60ちょっとぐらいかぁ。当時としては順当なのかもしれないけど、下の子がまだ10かそこらでしょう?いやぁ… 奥さん大変だったろうなぁ…

    5歳の時に大病してさらに父親が年取ってから出来た子だからと溺愛され、蝶よ花よと育てられた彼女が娘気分も抜けきらぬうちに嫁に行って…。そりゃあ…うん、うまくいくはずもないよな… 20代の男性が60の父の包容力や知識を持っているはずもないものなぁ。その辺りは彼女の幸せだったのか、不幸だったのか。圧倒的なファザコン、というか。父親に幻滅する前に父が亡くなってしまったのが不幸だったのか。色々と痛々しい感じです。

    個人的には嫁さんが彼の遺言を口を酸っぱくして問い詰めた気持ちがすごいよくわかる。後に残されたものはたまったものじゃないよなぁ… そういう意味でも男って身勝手だなぁ、まあそう言う時代だしなぁなんて思いながら読みました。

  • 父親森鷗外や母親、祖父母の話。
    兄弟についてはあんまり出てこない。
    家族や生活について書いたのを読んでみたい。
    創作ものは趣味じゃないのでエッセイ方面で。

    題名になっている父の帽子の森鷗外が面白い。
    頭が大きくて、帽子屋に行って「上等の分を見せてくれ」
    でも小さくて別の帽子屋を回る。

    ヨーロッパへ行きたくて鴎外から義父へ話を通してもらって夫について行くって名目で行ったり、日本に戻ってからもヨーロッパへの憧れがあったんだろうな。

    未里と書いてマリイと読ませる名前が出てくるんだけど
    事実なのか創作なのか、よく分からない。

    2歳で亡くなった不律の胸像ってどういう事だろう?

  • おもに家族がらみのエッセイ集。森茉莉というとやはりファザコンのイメージが強いですが、意外にも母親についてのエピソードも多く、世間から悪妻と評されることも多かった後妻の母のことを庇う発言を結構していて、知らなかった面を知った気がしました。にしてもやはり父親鴎外の存在感は圧倒的で、ここまで尊敬できる父親を持った茉莉が羨ましい。

    文体は相変わらず独特ですが、この人は小説や長編より、短い文章のほうがスッキリしていて面白いし、上手いですね。長くなったり思索的になったりすると、冗長というか、同じ表現の繰り返しになるので、詩的な美しさはあってもちょっと眠くなっちゃう。ディティールに関する観察眼の鋭さは流石。表題作が一番好きでした。

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著者プロフィール

1903~87年、東京生まれ。森鴎外の長女。1957年、父への憧憬を繊細な文体で描いた『父の帽子』で日本エッセイストクラブ賞受賞。著書に『恋人たちの森』(田村俊子賞)、『甘い蜜の部屋』(泉鏡花賞)等。

「2018年 『ほろ酔い天国 ごきげん文藝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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