寝園 (講談社文芸文庫)

  • 講談社 (1992年1月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (260ページ) / ISBN・EAN: 9784061961692

感想・レビュー・書評

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  •  本書を読もうと思ったきっかけは、北村薫さんの「空飛ぶ馬」で、文学部の女子大生が本書を取り上げていたことから、大学生が読む作品って、いったいどんな感じなのだろうと興味を持った、ただそれだけなので、文学としてどうこうといった崇高な内容は全く書けないことを、先に記しておきます。

     それから横光利一については、ごめんなさい、全く存じ上げなかったのでネットで調べてみると、川端康成と共に新感覚派として、大正末期から昭和初期の文学に新たな局面を切り開き、活躍された作家とのことで、本書の解説はチンプンカンプンだったものの、なるほど、「雪国」を読んだような感覚で捉えればいいのだという気持ちで、改めて向き合ってみようと思う。

     ちなみに本書(昭和五~七年にかけての作品だそう)について、先に裏表紙の内容紹介から引用させていただきますと、「『純文学にして通俗小説』なる“純粋小説”を自ら実践し、恋愛における現代人の“危機意識”を緻密な文体で追った『紋章』『家族会議』等の先駆となった画期的名篇」とのこと。


     実際に読んでみると、複数の男女間に於ける恋愛ものと感じたけれども、三角関係とかではなく、それぞれに想う人がいるという珍しい構図の中で、物語のメインとなるのは、以前、相思相愛だった「奈奈江」と青年「梶」の二人がどうなるのかという点なのだが、生憎と奈奈江には夫の「仁羽」がいるのであった。

     ただ、奈奈江からしたら仁羽はつまらない男と認識しており、日々の生活に虚しさを感じる一方で、梶は二度と引き返すことのできない道へと踏み出すことに躊躇いを見せる為、奈奈江も思い切った行動に踏み切れずと、二人の関係は一向に進展しないまま時が過ぎていく。

     そして、そうした状況下で奈奈江が起こしてしまった、ある事件には、まるで彼女自身が密かに抱く気持ちがそのまま表出したかのような『罪と罰』を印象付けていることが、皮肉にも、その後の仁羽に対する見方を改めさせていくきっかけとなりながらも、彼女の義妹である「藍子」に、仁羽を見る目が変わりつつある兆候を見出したことで、また違った葛藤を抱えることになるのだが・・・。


     私が率直に感じたのは、奈奈江も梶もその状況毎によく葛藤することで、いっそのこと心の赴くままに行動した方が楽になるのではないかと思いながらも、お互いに胸の内を見せない為、もし思い切って本音を見せたときに相手がそうで無かったらという不安の方が強くなってしまう、そんなもどかしさに仄かな焦りや絶望感も募らせながら、そこに誤解を生んでしまうような偶然の出来事や間の悪さも加わることで、そうした思いはより加速していくものの、その機会が訪れようとする度に思い切って踏み出そうか、どうしようかと悶々と葛藤を続けることに、やろうとしていることは不貞行為とも思われるのに、その葛藤自体に見られる人間の真摯さというものが気になるのは何故なのだろうといった、不思議な心境に陥ってしまう。

     また、表から見たその人と、内から見たその人とで全く人間性が異なるように感じられたことも印象に残り、そうした思いを促すような描写を、それぞれの葛藤する場面に於いて様々な言葉を駆使して表現されている点に情緒も感じられたことには、恋愛小説を読んでいるのに人間心理を学んでいるような感覚も抱かせる。

     そうした中で『無垢の象徴』として描かれている仁羽の良い人ぶりに、却って得体の知れない怖さを感じられたのは、どこか皮肉的で倫理観を揺さぶられる独特さがあった。

  •  稚拙だがそれ故手軽で手放すことの出来ない遊戯、単機能の美しさが人間そのものに投影されたさま。優柔不断な人々が、度を越した打算に「あてられて」しまったとき、状況はその場におさまることが出来ない。果たして状況が瑞々しい場合、青春小説と呼べるかどうか。

  • 2008年9月7日(日)、読了。

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著者プロフィール

よこみつ・りいち
1898〜1947年、小説家。
福島県生まれ。早稲田大学中退。
菊池寛を知り、『文芸春秋』創刊に際し同人となり、
『日輪』『蠅』を発表、新進作家として知られ、
のちに川端康成らと『文芸時代』を創刊。
伝統的私小説とプロレタリア文学に対抗し、
新しい感覚的表現を主張、
〈新感覚派〉の代表的作家として活躍。
昭和22年(1947)歿、49才。
代表作に「日輪」「上海」「機械」「旅愁」など。



「2018年 『セレナード 横光利一 モダニズム幻想集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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