無縁の生活,人生の一日 (講談社文芸文庫 あB 3)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 33
感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (354ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061961746

作品紹介・あらすじ

日常の深底に澱む不透明で苛酷な世界。人生の悲哀を呑みこんだ苦いユーモアと豊かな情感とに支えられる阿部昭の小説空間。「自転車」「猫」「窓」「散歩」「手紙」「童話」「道」ほかの短篇で繋ぐ『無縁の生活』、「人生の一日」「水のほとりで」「天使がみたもの」などを収める芸術選奨新人賞受賞『人生の一日』。二つの作品集から二十篇を収録。

感想・レビュー・書評

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  • どこかなんか怖い本だった。
    お化けが出るわけでもないし、恐怖体験があるわけでもない。
    足元にある仄暗さが、一瞬真っ暗闇になるような。一瞬すぎてわからないんだけど、確実に囚われた、何かに、って思う怖さ。油断するとやられる。

    「それが大人になればわかる」

    日常の、目の前の現実を冷静に、一歩下がって眺める時、その冷たさこそが本当なのだと思う。
    世の中には、きらきらしたものやほかほかしたもの、そういうもので溢れているけれど。
    輝かしいもの優しいものに囲まれていたい人は、この本は読めないんだろうなぁ…とぼんやり思ったのでした。

  • 『短編小説礼賛』が良かったので、本人の書く短編小説はどうなのかと読んでみた。
    「猫」はシャム猫を飼って、蚤がいるだの、しょっちゅう腹を下す(胃腸が弱かったのだろう)だの文句を言い、「出来損ない」と呼び、挙句の果てにもがき苦しませた末死なせてしまう。小説としてみれば、味わいがなくはないのだが、この猫の扱いに心底腹が立つ。昭和の猫の扱いかたなんて、こんなもんだとは分かっているが。「散歩」でも、恩師の家の女中に劣情を抱く様子が描かれるが、インテリが、頭も容姿も悪い女を「こいつならやらせるだろう」と見くびるのが不快。まあ、振られるから、ちょっと間抜けなおかしみもなくはないのだけど。息子を描いた「言葉」「童話」「天邪鬼」などはなかなかいい。しかし「手紙」や「閣下」「災難」など読むと、やはりこの人の冷たさに心が寒くなる。ここまでが『無縁の生活』。後半の『人生の一日』は前半の私小説的な作品とは違う作風。
    しかし、厭な気持に何回もなったにもかかわらず、いい小説だったな、という気がするのだ。
    もうちょっと阿部昭、読んでみようと思う。

  • 550 高田馬場 +20冊+2000円

  • のっけからなんとなく飛ばしてる「自転車」が面白い!
    ゴミ溜めにかけこむ家族!
    「やめなさい!やめろ!」必死のお父さん(阿部さん)!
    学生時代の雨にまつわる切ないようなおかしいような話や、それちょっとヤバイ、とつっこみたくなるエピソード満載。
    静かながらも心が動かされるエッセイ集です

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著者プロフィール

小説家。1934年広島県に生まれ、翌年より神奈川県藤沢市鵠沼で育つ。東京大学仏文科を卒業後、ラジオ東京(現在のTBS)に入社。62年に「子供部屋」で文學界新人賞を受賞。68年に処女短編集『未成年』を刊行。その後、71年にTBSを退社し、創作活動に専念する。73年『千年』で毎日出版文化賞を受賞。76年に『人生の一日』で芸術選奨新人賞受賞。幼少より暮らした鵠沼を舞台にした作品が多く、また、短編小説の名手として知られ、数多くの作品を残している。

「2019年 『March winds and April showers bring May flowers.』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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