晩菊・水仙・白鷺 (講談社文芸文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 58
レビュー : 6
  • Amazon.co.jp ・本 (274ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061961883

作品紹介・あらすじ

元赤坂の芸者だった老女が、昔の男の突然の再訪に心揺れ、幻滅する心理を描く「晩菊」。女流文学者賞受賞。戦死した夫の空っぽの骨壺に、夜の女が金を入れる「骨」。荒涼とした、底冷えのするような人生の光景と哀しみ。行商の子に生まれ、時代の激動を生きた作家林芙美子が名作『浮雲』連載に至る円熟の筆致をみせた晩年期の「水仙」「松葉牡丹」「白鷺」「牛肉」等、代表作6篇。

感想・レビュー・書評

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  • 林芙美子の晩年の著作を集めた短編集。殆どの作品に、人生への失望、生きることへの物憂さが漂っていて、巧みな文章ながら読んでいて消耗する気持ちになる。

  • 林芙美子さんの晩菊、とても美しく色っぽい文章でした。
    ーーーー
    田部からの電話はきんにとつては思ひがけなかつたし、上等の葡萄酒にでもお眼にかゝつたやうな気がした。田部は、思ひ出に吊られて来るだけだ。昔のなごりが少しは残つてゐるであらうかと言つた感傷で、恋の焼跡を吟味しに来るやうなものなのだ。草茫々の瓦礫の跡に立つて、只、あゝと溜息だけをつかせてはならないのだ。年齢や環境に聊さかの貧しさもあつてはならないのだ。慎み深い表情が何よりであり、雰囲気は二人でしみじみと没頭出来るやうなたゞよひでなくてはならない。自分の女は相変らず美しい女だつたと云ふ後味のなごりを忘れさせてはならないのだ。きんはとゞこほりなく身支度が済むと、鏡の前に立つて自分の舞台姿をたしかめる。万事抜かりはないかと……。

  • 森光子のせいで影が薄くなっているが、間違いなく大作家だと思う。『晩菊』はババアになった元芸者が主人公で、昔ちょっといい仲だった男を家に迎える話だが(コレットを意識していた?)、そのババア芸者の余裕に見せつつ寂寥を漂わす風情がすばらしい。最後、男が完全に変わってしまったことを悟って、昔の写真を火鉢にくべるのだが、何気なくそこに男が土産で持ってきたチーズをひと切れ入れちゃうとこが、またうまい。おそらく部屋がチーズ臭くなってかなわないと思うんだけど、それがまた何とも寂しい。『白鷺』『松葉牡丹』『牛肉』、どの短編も皮肉をきかせながら最後に希望をあえて見せる感じで、ただただうまい。

  • 2010.07.11 読了

  • 「女の文豪」とは彼女のこと。
    なぜここまで「人間」を突き放してそれでいてよーくわかって書けるんですか?尊敬してます。

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著者プロフィール

1903-51。代表作に『放浪記』。

「2017年 『浮雲』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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