蝮のすえ・「愛」のかたち (講談社文芸文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 61
レビュー : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (314ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061962033

作品紹介・あらすじ

戦前から戦後にかけての激変。支配・被支配の転倒。混乱、渾沌の中で、新たな生を獲得した"女"を鮮烈に捉え、戦後の日本に大きな震憾をもたらした武田泰淳の初期作品「才子佳人」「蝮のすえ」「『愛』のかたち」の3篇を収録。時代を超えて透視する眼、したたかな精神のしなやかな鞭。

感想・レビュー・書評

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  • 小説3篇。『才子佳人』は自ら作り上げた虚構への諦観と、幻への憧憬が詩的に描かれた作品で、結末も味わい深い。次の2篇は何れも、決断力のない男が出会った女を軸に快感と見栄と環境に流されながら変わっていく心理が描かれている。女性の美しさを肉体にのみ見出す「無感覚な人形」の男。凡庸にも思える(だからこそ近しい存在として読める)その像を、当人含め誰もが見誤る。愛がすれ違う。とても読み応えのある作品集だ。蛇足だけど、私は内面は外に溢れると思っている。鏡に映る凡庸でなかなか不細工な私が私であると。

  • 「いやおうなしの慾望や、むりにでも行為したい情熱がない場合、かえって人は道徳倫理の壁さえ意識しないで暮らせるから、いつか非倫理、非道徳の人間となりおわるのではないか。」光雄の場合は確かに当てはまりそうですが、「むりにでも行為したい情熱」をもつ今の為政者に倫理や道徳があるようには思えないのです。それにしても『蝮のすえ』の彼女も『「愛」のかたち』の町子も私にとっては得体の知れない女性でありますが、でも実際にこのような女性が目の前に現れたら惹かれるのでしょうね。

  • [ 内容 ]
    戦前から戦後にかけての激変。
    支配・被支配の転倒。
    混乱、渾沌の中で、新たな生を獲得した“女”を鮮烈に捉え、戦後の日本に大きな震憾をもたらした武田泰淳の初期作品「才子佳人」「蝮のすえ」「『愛』のかたち」の3篇を収録。
    時代を超えて透視する眼、したたかな精神のしなやかな鞭。

    [ 目次 ]


    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 『才子佳人』は古代中国ということに物語性の強い世界観が舞台の小説である。現実に存在している人物も、虚構の限りなく近傍におり簡単に区別はできない。まるでロールプレイングゲームの中に閉じこめられて理不尽な役割を永遠に担わされているかのような女も登場する。なぜ彼女はそんな目に遭うのか。それは運命なのである。不幸に耐えて暮らす佳人に、才子は思いを寄せる。彼女が苦しめば苦しむほど才子の思いは燃え上がる。やがて才子は佳人のもとを訪れる。こういうあらかじめ決められた物語を、物語の作者である主人公は記録し続けている。そんな主人公の目を盗んで佳人のもとを訪れた才子に、彼女がこの世の全ての無意味さについて語る言葉の中からは、「色情」についての新しい認識が出てくる。色情(つまり才子佳人)がなければ、人間は生まれない。物語の作者も登場人物もである。彼女の中にも色情はある。けれども自分が全ての佳人に代わって苦しみを引き受けるという決意を示すことでより悲劇性を増し読者を喜ばせ、才子佳人の物語は続いて行く。
    人間という種を存続させていくさだめを課されている女たちはこのことに自覚的である。
    『蝮のすえ』は書類の代書という、他人の事件に直接は関わらずあくまで外部から関係を持つ仕事をしている主人公が、依頼人の抱える事件に直接関わってしまったために、ニヒリズムの中に閉じこもっていた自己を破壊することを余儀無くされ、人生というものを痛みや苦しみとともに実感し始める話である。
    『「愛」のかたち』は非道な男と、男の肉体を受け入れられない女との間に絶望的に捻れた愛のかたちが生まれてゆく様を描いている。女が愛する男に肉体を捧げることは、果たして義務であろうか? 男ははなからそんなことを考える必要はないが、女にとってそれがどれほど大きな負担であることか。非対称性などという言葉を持ち出すまでもなく、男と女それぞれにとっての愛の意味を考えさせられる。
    いずれの作品も女が重要なテーマになっている。彼女たちは皆、息が詰まるような言葉と言葉の重なりの中から気高さをのぞかせている。

  • 戦争が終わった後のぬめっとした感じが。

  • 出てくる人皆愛憎の自家中毒になっています。
    理性と衝動の間で訳がわからなくなっている今の自分を重ねて読んでしまい、余計にぐるぐるしました。

  • 「蝮のすえ」を「昭和戦争文学全集12流離の日々」で読みました。敗戦後上海から日僑引き上げ時の雰囲気を知りたい人は読んで損はないと思います。あと男性の方で、女性に手玉に取られている方はぜひ。

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著者プロフィール

一九一二(明治四十五)年、東京・本郷の潮泉寺住職大島泰信の息子として生まれる。旧制浦和高校を経て東大支那文学科を中退。僧侶としての体験、左翼運動、戦時下における中国体験が、思想的重量感を持つ作品群の起動点となった。四三(昭和十八)年『司馬遷』を刊行、四六年以後、戦後文学の代表的旗手としてかずかずの創作を発表し、不滅の足跡を残した。七六(昭和五十一)年十月没。七三年『快楽』により日本文学大賞、七六年『目まいのする散歩』により野間文芸賞を受賞。『武田泰淳全集』全十八巻、別巻三巻の他、絶筆『上海の蛍』がある。

「2018年 『新・東海道五十三次』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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