千年・あの夏 (講談社文芸文庫)

  • 講談社 (1993年1月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (330ページ) / ISBN・EAN: 9784061962231

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

物悲しさと静けさが交錯する独特の雰囲気が漂う作品で、特に後半にその魅力が際立ちます。読者は、父親との関係性を通じて、作者の冷静で客観的な視点に引き込まれ、共感を覚えることでしょう。父の存在が心に残り、...

感想・レビュー・書評

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  • 結末よりも過程に読み応えがあるのではないかと、二作品目にしておもうようになった。どの短編・中編も最後の場面はふっと途切れるようにして終わる。たしか「未成年」で芥川賞候補作に入ったとき、選評で最後が良くないというふうにも言われていた。阿部昭の作品にはひとつの確かな流れはあるのだけれど、はじまりと終わりがないような印象を受ける。自分のうちの歴史のある一点にふと作家の眼差しがはいり(これが作品の一行目が書かれた瞬間とみる)、やがてはなれていくような。眼差しという、まるで落とし蓋のような透けたフィルターが作品の蓋をしているため、どの作品も背景に作家の歩んできた人生がありありと浮かんでみえる。

    小説の完成度というものはその蓋が堅固なほど高いとみなされると思う。一読目でばっちりと心を射抜いてくる。一方で落とし蓋でとじた作品は読み終わったあと、一旦自分の心の拠り所がわからなくなる。宛てもわからぬ妙なひっかかりをどう受け止めればいいかとしばし考えることになる。

    僕が「千年」を好きだなとおもったのはこの作品集の五作品目を読んでいるときだった(「千年」はニ作品目)。「千年」は前半が読み難くて、ずいぶんと時間を要した。後半、いとこの姉と妹の話を興味深く読みはじめたところで話が終わりを迎えた。
    五作品目の「父と子の夜」のなかで軽くいとこの姉妹について触れた一文をみたときに「千年」を思い出し、そういえば好きだったと心のうちで頷いた。----こうして今書きながら、とても好きだったことを改めて感じている!

    子供の一郎、二郎、三郎が出てくる話も好きだ。四作品目の「子供の墓」、「父と子の夜」によく出てくる。ステレオタイプのきょうだいではなく、彼らがきょうだいとしてどう関係を育んでいるかがとてもわかった。私小説のもっともいいところ。

  • 『千年』は後半で良さを発揮している印象だったので、当初は後半部分を削って載せていたとは驚きです。文章から伝わる静かな物悲しさが、読んでいて心地よかったです。

  • 小説っていうのか、エッセイというのか。
    そういう分け方をそもそもしない方がいい気がしている、読書においては。

    あの夏をうろうろとしている私には、ここに出てくる父にどうしても肩入れしてしまう。
    この本では、父と言えば、阿部昭の父と阿部昭当人が出てくるので、前者はちらほらなのだけど。

    どうして作者は、こういう風に父と、父の世界を見る事が出来たのだろう。
    とても客観的、冷静で第三者の視点。正しい正しくないなどなくて、それが余計に、ウロウロしている私の足を掴んでくるんだけども。

    何かで、大江健三郎がダメな人は阿部昭を好むと見かけて、私は大江健三郎は読んだことがないし、難しいと聞いていて手に取ろうと思っていない。たぶんそれに「反対」な気がして。

  • むかーし読んだ、福武の「18の短編」とは
    えらい印象が違ってびっくり。
    思い込みって怖いですね・・・

    きっと他にもこういう作家はいそうです。
    人様の感想を読ませていただいての気づきは
    貴重なんですなー

  • 「桃」の何だか分からないけどどこか立ち入ってはいけない、という大人世界への子供の勘と居心地の悪さ……するどいです。

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著者プロフィール

小説家。1934年広島県に生まれ、翌年より神奈川県藤沢市鵠沼で育つ。東京大学仏文科を卒業後、ラジオ東京(現在のTBS)に入社。62年に「子供部屋」で文學界新人賞を受賞。68年に処女短編集『未成年』を刊行。その後、71年にTBSを退社し、創作活動に専念する。73年『千年』で毎日出版文化賞を受賞。76年に『人生の一日』で芸術選奨新人賞受賞。幼少より暮らした鵠沼を舞台にした作品が多く、また、短編小説の名手として知られ、数多くの作品を残している。

「2019年 『March winds and April showers bring May flowers.』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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