帰らざる夏 (講談社文芸文庫)

著者 :
制作 : リ-ビ 英雄 
  • 講談社
4.05
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本棚登録 : 338
レビュー : 39
  • Amazon.co.jp ・本 (638ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061962354

感想・レビュー・書評

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  • 電子書籍版を読了。読み応え抜群の小説を読んで、身もこころもぐったりしている。何をきっかけに知ったかをもう覚えていないほど以前から、読みたい本のリストに加えていた。大東亜戦争さなか、陸軍幼年学校に進んだ主人公・省治13歳。さいしょはやや抵抗を覚えていた幼年学校の教育に馴染んでいくさまをみて、教育という名の向こうにあるものの正体について間段なく考えていかなければと気持ちを新たにした。魅力的な上級生である源でさえ、2歳しか違わないのである。著者自身の経験に基づくという本書は、とても貴重な体験をもたらしてくれた。

  • 陸軍幼年学校もの

  • 裏表紙のあらすじで実に潔くネタバレしてて、「え、ああ…えっ?」って二度見。
    主人公が最初っから抱かれたがっててヤバイ。

  • 玉音放送が流れる前後の描写が興味深かったです。昨日まで当たり前であったことが突如として当たり前でなくなり、誰もが、何もかもが変わっている。終戦ってこんなに呆気ないものなのか。体験したことが無いからわからない感覚だけれど、読んでいてとても不思議な気がしました。
    16歳の少年が、それまで信じていたもの全てを否定されたとき…真っ直ぐで純粋故にそうせざるをえなかったという結末なんでしょうか。
    当時の軍国主義やここに出てくる若い将校達の思想、考え方生き方は現代から見ると異常にも思えますが、この本を読むと、それらは作られるべくして作られた、完成されたものなのだと少しだけわかったような気がします。

  • 非常にリアルな、戦争の情景だけでなく幼い青年の心情の極めてリアルさが重苦しく、酩酊を覚える。難関の幼年学校に合格して教育を受け、生徒たちからも感化される。戦争を知らない世代に、当時を異常とは決して思わせないものがある。2.26事件をきちんと処理していれば太平洋戦争に避け得た、というのに興味。調べてみたい。14.1.18

  • …何か、何で?という感じ…。

  • 終了日 2009・12・20、2度目のカナダの冬に読んだ。2009年夏の衝動買いシリーズからの1冊。あの頃、私は日本語に飢えていた…(だからといって森茉莉、加賀乙彦、江戸川乱歩のセレクションは我ながら結構ヘビーだった)

    以下、当時の日記から抜粋。ほんと日本語おかしいな…そして読後の興奮状態で打ち込んだので支離滅裂。って、今更か。


    『解説も貪る様に読んだのだが、まったくもって、現代の「日本」に生きる、しかも今現在はその土地すら離れたところでこれを読み終えた自分にとって、この本は「酩酊」の一言につきると思う。
    久々にこの文体に触れ、ナラティブに引き込まれ我を忘れていたが、それは解説で言う「ロジック」と「言語システム」に飲み込まれていたということで、それこそ著者の掌の上で踊っていたことを思い知らされる。
    何を持って善とするのか悪とするのか、大いなる歴史という流れと一個人の認識の食い違いとは、信ずるべきは何か、何だったのか、わけがわからなくなる。だがそれがこの作品の根底にあるのかなと、私は、思う。
    解説が無ければ、熟考する事もなく、それこそ「酩酊」のままで終えたのだろう。
    あまり、巻末の解説は気にかけない方だが、必要はあるのだなと痛感した。
    しかし本当にそうだ、この結末はなんとも理にかなっている。少なくとも、省治の精神構造にどっぷり浸かってしまって、これはこれで完結してるんだなとしか思えない。
    そして私としては、最後の数ページは、何とも美しい。だがこの数ページを読んでいる間の心拍数はそれこそ駆けるようだったし、頭も破裂寸前で文字をうまく理解していなかったと思うけど、なんとも壮大だったという印象が強い。
    最後の最後は、それこそ私の中で「美」の一言に集結した。
    私としては、なんていうんだろう、もう言葉が浮かばない。
    言いたい事は山ほどあるんだけど、言ったところで多分ありきたりで破綻してるはず。
    今、表面上はかなり無表情で、うつ伏せで2時間くらい動かず読んでたから関節が痛いけど、何だかんだで読み終えた興奮ですごく感情的になってるんだと思う。

    しかしこれは、かなり不純な動機で読み始めたのだが、むしろそういう目的は読むにつれ薄れてった気がする。同性愛が何より、私個人としては天皇主義とか戦時下の精神とかそういった事ばかりに気を取られてしまった。むしろ溺れていった。私みたいな者には理解が到底及ばない、例えば迷って足を滑らせて溺れた、といったところか。
    結構ブランクが開いたし、8月末頃読み始めてやっと今終わったから4ヶ月かけて終わらせた事になるけど、読み終えてよかったと思う。これは、一読の価値あり。


    あ、全体的に重いので特に就寝前にはオススメできないよ。』

  • 2012年8月30日読了。
    作者は第二次世界大戦の時、実際に幼年学校にいたそうで、かなり自伝的要素の強い小説だそうです。
    主人公省治(昭和2年に生まれたのでこの名前)は、戦死した親戚に憧れ、親は「どうせ戦争に行くのなら将校になれば生き残れる」という思いがあり、幼年学校に14歳で入りますが、2年の間に一気に戦況は悪化していくことに。気が弱く、軍人らしいところもない省治でしたが、玉音放送の後に周囲が簡単に考えを変えていく姿についていけず、悲劇的な最後を迎えます。
    主人公の内省的な心を繊細に描き、若いころにありがちな死への憧れや、恋愛感情の代償としての同性愛描写はちょっと少女漫画的でもあります。
    後の世から見れば、なぜ戦争が終わってうれしくないのか?とも思ってしまいますが、当時の心境を詳細に描いており、玉音放送の後に「生きろというなら、なぜ玉砕する前に死ぬなと言わなかったのか、おかしい」と叫ぶ生徒たちの姿は、大人のずるさをずばり指摘していました。

  • 気になりはじめてから一年。ずっとずっとずっと読みたかった本。

    大きな書店を何件か廻ったものの、なかなか見つからなかったので結局自分が働いているお店で取り寄せ。
    大事に読む。

  • 省治は百倍の難関を突破し陸軍幼年学校へ入学するが敗戦を迎える。聖戦を信じた心は引裂かれ、大混乱の只中義に殉じ自決することを決意する。


    悲劇としか言い様のないストーリーです。15、6で死に急ぐ彼らが痛々しく、見ていられなかったです。敗戦後、源が亡霊だ、と言ったところが胸に痛かったです。

  • 伝えたい事を伝えきるまで、一切のわき道、埋め草的エピソードもなしに最後まで物語を語りきった筆致に、作者の強靭な精神性、刃のような知性の高さ、それらが合わさった事で生じる妥協のない美しさに胸打たれ、読んだのは何年も前なのにも関わらず、未だ強い輝きを持ってわたしの心の中に存在しています。

  • 戦争を経験した方が書く敗戦の話というものが気になって読みました。

    軍人に向いていないと思っていた省治少年が、両親の望むままに難関を突破して陸軍幼年学校に入学し、徹底的に軍人教育を受けて二年半が経ったとき、終戦を迎える。
    勝つために死ねと教えられ、天皇陛下を盲目的に信じてきた少年は、敗けて生き長らえることを受け入れられず、先輩・源とともに自決することを選ぶ…。

    少年たちの出した答えが悲しすぎて愚かだとも思えるけれど、敗けても死なずにすんでよかった、と思えるひとばかりではなかったということが、とても衝撃的でした。

    少年たちの生活が比較的安全で閉鎖的であったがために、兵として教育されながらも戦争から遠くて敗戦が見えなかったのかと思うと、何も言えません…。

    敗けるって分かっていながら止め時を失してとうとう敗戦しても生きていける大人たちはほんとにずるいと思うし、
    敗けても生きることを受け入れられた少年たちは強かで逞しく、彼らのおかげで今があるんだとは思うんだけども、

    そのぶんだけ「敗戦」をどうしても受け入れられなかったふたりの少年の真っ直ぐさが、残酷なくらい輝いて見えてしまう。

    戦後生まれの自分が何とか言える話ではありませんが、
    こういう終戦もあるのかと考えさせられた本でした。

    ただし、衆道も描かれているので苦手な方はご注意を。

  • 戦争の只中、陸軍幼年学校という軍国主義に染まった場所で生きている少年達の、苦悩を思い知らされる一冊です。戦争の重く暗い話の中、少年達の笑顔のなんと輝かしいことか!

  • 初めて読んだとき自分は高校生で、ミナモト先輩がすごく大人に見えたけど、大人になってから読み返したら彼はすごく子どもだった。

  • 父親からの手紙で語られる戦時の有様が苦しくて仕方ありませんでした。

  • 戦時下における青年の苦悩。理解できないものではないだけに、辛い。

  • 三島由紀夫の忘れ物。同性愛作品だと聞いて興味本意で読んだら返り討ちにされた重厚な作品。
    私は戦争が大嫌いだが、この作品が面白いと感じたのは国としての戦争を描いたからではなく、一個人の戦争体験記のように読めたから。
    玉音放送後の省治たちの様子は井の中の蛙、なんだか滑稽で本当に可哀相だった。自害は国を思ってもあるし、自分の中の天皇像を守る事でもあるが、源との深い絆(むしろ愛)の結果だと思いたい。

  • 確認先:稲城市立中央図書館

    加賀乙彦の名作。
    ミリタリーものというくくりをするべきか、三島由紀夫が忘却したかったものの一面とみなすべきか、評者は苦しむ。
    加賀自身、陸軍士官学校卒の精神科医という異色のキャリアをもっているが、決して自叙伝にはなっていない点は評価すべきだろう。

    とはいえ、そんじょそこらのボーイズラブや架空戦記の愛読者だの作家だのといった人々が脱兎のごとく逃げ出してしまうのは事実であるし(加賀の作品には濡れ場もかっこいい?武器も登場しない。ただただ敗戦間際の狂気と擬似的な同性愛にも似た侠気だけがつつまれる)、私自身途中から面倒になってくるほど長い作品と感じてしまったのは事実だ。

    ここには理想もへったくれも無い無様な姿だけが見えてくる。加賀乙彦が今のミリタリーもの小説やBLマンガを見たら何というのであろうか。

  • 戦争を美化したり、正当化したり、そうじゃなくて、
    本当に信じていた時代の、少年達の話です。
    内容的に好き嫌い分かれるのだけれど、好きとか嫌いとかではなく、
    個人の史実だと思って読んだ方がいい。
    現代の価値観ではなく、過去の価値観を知ることは必要だと思う。
    それが正しいとかどうかは別として、
    価値観や常識や善悪など普遍ではないのだから。

  • 父親の手紙の文章の中で、
    桜の描写があるんですがそれが神!!忘れられません。すごい〜
    ちょっと同性っぽいのですが、それでも面白い。戦争もの。

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著者プロフィール

加賀 乙彦(かが おとひこ)
1929年、東京都生まれ。東京大学医学部卒業後、精神科医として勤務のかたわら、小説の執筆を始める。『フランドルの冬』で芸術選奨文部大臣新人賞、『帰らざる夏』で谷崎潤一郎賞、『宣告』で日本文学大賞、『湿原』で大佛次郎賞、自伝的小説『永遠の都』で芸術選奨文部大臣賞、自伝的大河小説『雲の都』で毎日出版文化賞特別賞を受賞している。その他の著書に、『錨のない船』『不幸な国の幸福論』など多数ある。
近年は、殉教者を描く歴史小説『ザビエルとその弟子』、ペトロ岐部の生涯を描いた『殉教者』などを発表。

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