光の領分 (講談社文芸文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061962415

作品紹介・あらすじ

夫との別居に始まり、離婚に至る若い女と稚い娘の1年間。寄りつかない夫、男との性の夢、娘の不調、出会い頭の情事。夫のいない若い女親のゆれ動き、融け出すような不安を、“短篇連作”という新しい創作上の方法を精妙に駆使し、第1回野間文芸新人賞を受賞した津島佑子の初期代表作。

感想・レビュー・書評

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  • 生活能力の低い女が、未成熟な娘と孤独やストレスに耐えながら生活する中で、何となく光が見えてゆく過程に心が洗われる。
    全篇に透き通った雰囲気があり、読後もサッパリした良短編集。

  • 津島佑子の「初期作品」にあたる。いわゆる連作短編の形式で、巻頭の一篇から順番に読むことが吉である。
    文学の感想としてよくある表現に「日常世界のざらざらした感触」という言い方があるが、少々横着してその表現を借りてしまいたくなる。いうなれば、それ系です。

    本作よりも後に世に出た「水府」「真昼へ」も"それ系"と云えますが、後発の二作のほうが、ざらざら感に加えて「もう一要素」追加された感がある。

    いわば本作のほうが、小説として練るよりも先に、私小説的ざらざら感が突出した造りだという印象(決して私小説ではないのだが)。どちらが良いか悪いかではなく。

    『水辺』という一篇が哀切でもあり夢幻的でもあり、鮮やか。
    センター試験でも出題された一篇なのだとか。

  • 恥ずかしながら全く著者のことを知らなかったのだけど、書店でたまたま目に留まってめくってみたら、冒頭だけであまりの上手さに目を剥いた。
    夫と別居し、幼い娘と二人で暮らす女性の一年を描いた短編連作集で、もうとにかく上手い。
    母親として直視したくないところまで暴かれていくので、読んでいてヒリヒリしたけれど、ここまで書かれるといっそ爽快ですらある。
    見事。
    唸りながら解説を読み、太宰治の娘と知った時は衝撃だった…。
    思い返してまた色々と突き刺さったけれど、その背景を考えに入れなくても存分に凄みのある作品だった。
    他の作品も読みたい。

  • 今年(2016)2月に亡くなられてから、そういえば津島佑子を読んでなかった、読もう、と思い立ってやっと今頃。私小説作家ではないのだろうけれど、やはり生い立ちや実生活が濃厚に出ている作風だった。良くも悪くも「父親を知らずに育った太宰治の娘」という予備知識(先入観ともいう)を持って読んでしまうので、結果「ああやっぱり」と思ってしまう。なんというか、主人公の「男を見る目がない」ところや、なぜか「ろくでもないダメンズを好きになってしまう」ところなどに(苦笑)

    映画を作るだの劇団を作るだの言って借金だらけのヒモ体質の男と結婚して娘を授かるも、娘が3歳になる前に男は別の女パトロンと暮らすために別居を告げる。主人公はそんなクズ男に未練たらたら、男のほうも悪気がないんだか娘だけは可愛いんだかなんだか離婚はしようとせず別の女と暮らしながら主人公のまわりをウロウロ、主人公はずっと情緒不安定でヒステリックで男を連れ込んだり依存したり自己中心的で、八つ当たりされる子供がとにかく可哀想。

    もちろん女手ひとつで子供を育てるのは大変だろうしそうでなくても子育ては難しいものだし生んでも育ててもいない私が主人公を頭ごなしに非難するのはちょっと気が引けるのだけど、にしても、夜泣きする子供をあやすどころか酒飲んで無視して寝るとか酷すぎるエピソード満載で全然主人公を好きになれないので読んでいてしんどかった。

    色や光の描写はとても綺麗で、文才は太宰ゆずりなのだなと思わされるし、主人公を好きになれないだけでその心理はたぶんリアルで文学的なのでしょう。電車が「国電」なことを除けば、まったく時代の違い、古さを感じさせない現代的な作品で、つまりそれは普遍的な作品ということなんだろうな。

    光の領分/水辺/木の日曜日/鳥の夢/声/呪文/砂丘/赤い光/体/地表/焔/光素

  • 連作短篇。

    母親の内面は激しくうねり、しかし日々は淡々と流れていく。手放したいものに対する執着。様々に相容れないものが散りばめられているからこそ自然に感じられる。

    光は美しいが、眩しすぎて周りを見えなくさせる。時に不穏で怖ろしいが、またその恐怖が歓びをももたらしてくれる。母親の生と死の観念そのものだろう。

    砂の中に消えていく子供も、ひとつの場所に固着した光も、人に知られることはない。夢も幻想も肉体も、たすけてという呟きも、寂しいほど人間であることをさらけ出しているように思う。

    大変美しい作品

  • ろくでもない夫とようやく離婚することが出来たが、娘との生活とライブラリーとの仕事、隣人とのいざこざがあったりと大変な思いをするがそれでも生きていく。

  • 2001年センター試験小説出題の水辺を収録。過去問といてて読みたくなった一冊。

  • [ 内容 ]
    夫との別居に始まり、離婚に至る若い女と稚い娘の一年間。
    寄りつかない夫、男との性の夢、娘の不調、出会い頭の情事。
    夫のいない若い女親のゆれ動き、融け出すような不安を、“短篇連作”という新しい創作上の方法を精妙に駆使し、第一回野間文芸新人賞を受賞した津島佑子の初期代表作。

    [ 目次 ]
    光の領分
    水辺
    木の日曜日
    鳥の夢

    呪文
    砂丘
    赤い光

    地表

    光素

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 有名な人なので読んでみたけどそれほど面白くはなかった。面倒くさい母親。

  • センター試験で読んでから、気になってた本!

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著者プロフィール

津島 佑子(つしま・ゆうこ) 1947年、東京都生まれ。白百合女子大学卒業。78年「寵児」で第17回女流文学賞、83年「黙市」で第10回川端康成文学賞、87年『夜の光に追われて』で第38回読売文学賞、98年『火の山―山猿記』で第34回谷崎潤一郎賞、第51回野間文芸賞、2005年『ナラ・レポート』で第55回芸術選奨文部科学大臣賞、第15回紫式部文学賞、12年『黄金の夢の歌』で第53回毎日芸術賞を受賞。2016年2月18日、逝去。

「2018年 『笑いオオカミ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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