式子内親王・永福門院 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)

著者 :
制作 : 雨宮 雅子 
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061962491

感想・レビュー・書評

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  • 二人の歌に接していると、やはり詩というのは、空間の体験を、端的に、直接的に言い表したものであるということが価値になってくると思う。言葉の端的性。言葉を費やすことよりも、的確な言葉を的確な順序で配置すること。その時に、見た情景や、体感が、伝染してくるのが、つまり空間が隔たりを超えて今に再起する。

    空間の体験と、それを経験化する『ことば』の的確。そのこが詩の肝だと思う。その意味で、空間の体験もないのに、詩なんて書きようがないことは改めて。

    良い詩はシンプルだ。ありありと、克明に風景や、その時の情感がつかめる。


    以下引用

    見しことも見ぬ生末もかりそめの枕に浮かぶまぼろしの中

    窓近き竹の葉すさぶ風の音にいとどみじかきうたたねの夢

    空きよく月さしのぼる山の端にとまりて消ゆる雲のひとむら

    きりぎりす声はいづくぞ草もなき白州の庭の秋の夜の月

    ひさかたの光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ

    奥山に紅葉ふみわけ鳴く鹿の声聞く時ぞ秋は悲しき

    星夕立の雲も残らず空晴れてすだれをのぼる宵の月影

    山深み春とも知らぬ松の戸に絶え絶えかかる雪の玉水

    夕づく日さすや庵の柴の戸にさびしくもあるかひぐらしの声

    見渡せば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋の秋の夕暮れ

    ★冴えわびてさむる枕に影見れば霜深き夜の有明の月

    寄物陳思

    夕立の雲も残らず空晴れてすだれをのぼる宵の月影

    さ夜深き軒端の峯に月は入りて暗き檜原に嵐をぞ吹く


    はかない存在としての認識の強さに見合うように、物に寄せる姿勢がより徹底して物自体に語らせる姿勢になり、

    わが心にもわが言葉にも安んじられなくなった者に残されている道は、そうであれば

    入相の声する山の陰暮れて花の木の間に月出でにけり

    秋風は軒端の松をしをる夜に月は雲居をどのかにぞ行く

    さ夜深き軒端の峯に月は入りて暗き檜原に嵐をぞ聞く

    東の野に炎の立つ見えてかへり見すれば月傾きぬ

    真萩散る庭の秋風身にしみて夕日の陰ぞ壁に消えゆく

    鳥の声松の嵐の音もせず山しづかなる雪の夕暮れ

  • 千年も昔のひとの詠んだものを読んで、今の(とはいえ、少し昔になりつつあるか)わたし(著者)が何を思うのか、ということを、学術的論考に頼り切らず、かと言って思い込みに浸り過ぎるわけでもなく書かれた文章のバランス感覚、ということを考える。それを今の自分が読むのだ。千年昔の詠いびとも、少し昔の竹西寛子も、それぞれにおしどどめられない正直な感情がところどころに見られるようにも思えて、だからこそ、響きあうのだろうし、その共鳴の中に(勝手で、勉強不足ではあるが)自分自身も加わるような気持ちになることができたと、思う。

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