宮本武蔵(六) (吉川英治歴史時代文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (390ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061965195

作品紹介・あらすじ

長い遍歴をともに重ねてきた城太郎は、木曽路でぷっつり消息を絶ち、武蔵は、下総の法典ケ原で未懇の荒野を開拓しはじめた。恃むべき剣を捨て、鍬を持った武蔵!これこそ一乗寺以後の武蔵の変身である。相手は不毛の土地であり、無情の風雨であり、自然の暴威であった。-その頃、小次郎は江戸に在って小幡一門と血と血で争い、武蔵の"美しい落し物"も、江戸の巷に身を奇せていた。

感想・レビュー・書評

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  • 6巻は2人目の弟子との出会い、共に荒野を開拓していく。
    大自然を師匠とし、開墾の中で得られる苦労や失敗を修行と捉える生活はスケールが大きい。
    新たな環境で試行錯誤を重ね、得た知恵や深めた思想は生き生きしている。武蔵は失敗するほど、柔らかく謙虚になっていくように感じる。その一方で人に何を言われても自分が信じることを貫く強さをもつようになる。
    何事からも素直に学ぶ姿勢を持ちたいと思う。

    「水には水の性格がある。土には土の本則がある。その物質と性格に、素直に従いて、おれは水の従僕、土の保護者であればいいのだ」

    「富士山をごらん。あれになろう、これに成ろうと焦心るより、富士のように、黙って、自分を動かないものに作り上げろ。世間へ媚びずに、世間から仰がれるようになれば、自然と自分の値打ちは世の人が決めてくれる」

  • たとえ、罵られ、馬鹿にされて笑われようと、自分の信じた道をただ、ひたすらに突き進む武蔵。
    どこにいても、何をしていても剣の修行になる。
    自然という師、伊織という新たな弟子を持って、武蔵が生き生きしているように感じる。
    吉川英治の描きたかった武蔵ではないだろうか、という気がしてくる。

  • 映画化・ドラマ化・漫画化など、様々なかたちで紹介されてきた大人気歴史小説の第六巻。この巻の注目は、やはり後に養子となる宮本伊織の登場だろう。未開拓の地として当時の江戸の町を描写するシーンはなかなか味わい深く、そこは面白かった。

  • VS山賊が面白かった。

    伊織は良いキャラクターなんだけど、武蔵が伊織を大事に大事にしている様を読むにつけて城太郎が不憫に思える。
    武蔵自身に城太郎に対する後悔の念があるからそうさせているのだろうけど。
    城太郎を養子にしたお金持ちの名前も時々出てきているので、城太郎との再会もそのうち描かれるのだろう。期待。

  • 新たな出会いの第六巻。

    お通、城太郎、又八、朱美。
    武蔵を取り巻く人々が消息不明になり、
    そのまま三年が経過し、再び孤独の武蔵。

    だが、そんな彼にも新しい出会いがあった。
    城太郎に代わり彼を師と仰ぐ少年伊織。
    彼を弟子に持つことにより武蔵も学んでいく。

    そして、消息を絶つも無事だったお通だが、
    ここでもまた武蔵とはすれ違う。
    しまいにはナレーター(?)までもが、
    彼らのすれ違いをもどかしく思い始める。
    お通は強い女性なので、間違っても、
    「大人になるって悲しいことなの・・・」
    なんて言わないのだろうが、どうなるのか。

    そしてもう一方気になるのは佐々木小次郎の動き。
    城太郎は消息不明のままだがどうなったのか。
    いずれにしても早く続きが読みたい。

  • 宮本武蔵第6段。 二人の豪傑の道は、交錯を繰り返し、宿怨となるか。 物語は徐々に、武蔵、小次郎主体に。本巻では小次郎の描写が多かった。人として大人では決してないが、一大豪傑、純粋悪としての彼はとても魅力がある。迷う武蔵に対し、冷徹になることを厭わない小次郎。どうなっても、相容れぬ二人だからこそ。 本巻のもう一つの魅力は、師弟。報恩の心ありて、師もまた学びの日々か。 「富士は、一日でも、同じ姿であったことがない」

  • 武蔵は、下総の法典ヶ原の小屋に住み、彼に弟子入りを申し出た伊織という少年とともに、荒野の開墾をはじめます。はじめは彼のすることを冷ややかなまなざしでながめていた村人たちは、山賊の襲撃から武蔵が人びとを守ってくれたことで彼に信頼を寄せるようになります。

    一方お通は、柳生宗矩の甥の兵庫のもとに身を寄せており、彼女の武蔵に対する想いを知っている兵庫は、二人の仲を案じますが、石舟斎が危篤であるという知らせを受けて、お通は武蔵に会うことのかなわないまま、江戸を去っていきます。

    小次郎は、軍学者の小幡勘兵衛の弟子たちの恨みを買いますが、北条新蔵をはじめとする門人たちのなかに剣の腕で小次郎にかなう者はなく、返り討ちとなります。他方の武蔵は、無法者たちの挑発を受けながらも、あえて剣をとることなく、世間の悪口雑言には耳を貸さずにみずからの信じる道をひたすら突き進んでいきます。

    武蔵と小次郎の人物像の対比があざやかで、両者の人間としての器の大きさのちがいがいよいよ明確になります。

  • 前巻で中だるみを感じずにいられなかったが、今巻は面白かった
    武蔵は合戦しているときがいちばん生き生きしている

    2人目の弟子をとったり、百姓をしたり、観世音を無心に彫ったり、逃げの一手をとったり

    吉岡や宝蔵院と喧嘩ばかりしていた時分からみれば、ずいぶん角がとれて、30前の男盛りとは思えない

    好人物になったと思う

    ちらとお通の息災なことも知れる
    結局 柳生家に身を寄せるのなら、わざわざ又八に罪を作らせないでもよかった
    武蔵とお通をすれ違わせたいのはわかるが、つくづくやりかたが勿体ない(五巻)

    小次郎はいよいよ御しがたい

    バガボンドでは武蔵と小次郎の宿敵感がほとんどなかったのが、小説では序盤から連綿と続き、いよいよ膨れあがっている
    つくづくクライマックスがわくわくと待たれる

  • 一巻に記載

  • 武蔵は、下総法典ヶ原で伊織に出会い弟子とし、ともに未墾の荒野を開拓します。
    剣の代わりに鍬を持った武蔵は、不毛の大地を相手に、自然の猛威と戦います。
    その後江戸に出た武蔵。
    江戸には佐々木小次郎、又八、お杉ばばなどもすでにいます。
    少し剣を離れ、また別の境地に向かう武蔵が描かれます。

    武力のない者に限って、ただ漫然と武力に絶対な恐怖をもつが、武力の性質を知れば、武力はそう恐いものではなく、むしろ平和のために在るものである。 ー 78ページ

    「富士山をごらん」
    「富士山にゃなれないよ」
    「あれになろう、これに成ろうと焦心るより、富士のように、黙って、自分を動かないものに作りあげろ。世間へ媚びずに、世間から仰がれるようになれば、自然と自分の値うちは世の人がきめてくれる」 ー 113ページ

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著者プロフィール

1892年、神奈川県生まれ。1921年、東京毎夕新聞に入社。その後、関東大震災を機に本格的な作家活動に入る。1960年、文化勲章受章。62年、永逝。著書に『宮本武蔵』『新書太閤記』『三国志』など多数。

「2017年 『江戸城心中 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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