新・平家物語(一) (吉川英治歴史時代文庫 吉川英治歴史時代文庫 47)
- 講談社 (1989年3月24日発売)


- 本 ・本 (458ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061965478
作品紹介・あらすじ
12世紀の初め、藤原政権の退廃は、武門の両統“源平”の擡頭をもたらした。しかし、強者は倶に天を戴かず。その争覇興亡が古典平家の世界である。『新・平家物語』も源平抗争の歴史を描くが、単なる現代訳でなく、古典のふくらんだ虚像を正し、従来無視された庶民の相(すがた)にも力点を置く。――100年の人間世界の興亡、流転、愛憎を主題に、7年の歳月を傾けた、著書鏤骨の超大作。
七年の歳月を傾けた、著者晩年の超大作。十二世紀の初め、藤原政権の退廃は武門の抬頭をゆるした――源平の登場だが、両雄は倶に天を載かず、宮枢の葛藤、対立とからんで、やがて保元・平治の乱へ突入。
感想・レビュー・書評
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全巻読んだ
とても面白かった
平家物語の聖地巡りに行ってみたい詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
すごく面白かった。この方の他の本読んだことないんでわかりませんが、とにかく臨場感がすごい。戦いの場面だけでなく話し合いや駆け引きの場面でも。読んでると本から腕が伸びてきて胸ぐら掴まれ、無理矢理本の中に引きずりこまれます。そしてその場面の真ん中にたたされたような感じになって…嫌な汗かいたり怖くなったり、読んでて疲れます、色んな意味で。最後の方は栄枯盛衰、本の中、少し離れた場所で流れていくものを見ているような感覚に変わりましたが…。平家物語の中で好きだった話が吉川英治版で変わってて、それが「こっちのが好きだな」てのや「…あれ、あの場面は?」てのもあり「ここ嫌いやから変えてくれれば良かったのに!」とか色々ありました。いや、全部通すと「面白かった」な感想なんですが。また最初から読み返したいです。読んで良かった、面白かった。主人公はたくさんいて、みんな必死に地べた這いずり回りながら生きてて、一生懸命で…嫌いなキャラも苦手なキャラもそれは変わらず。脱走兵も同じ。人間の力ってスゴいな、て思いました…物語だけどね、だからこそ。話の終わり方も、すっと幕引きがされて良かったです。
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先週日曜から大河ドラマ「平清盛」が始まったので並行して読み始めてみた。細部は異なるものの、大河は本書を根本としており、平安末期の良い勉強になるはずだということで。私にとって、吉川英治作品は昨年読破した「三国志」に続き2作品目。氏の作品は文章が非常に格式高い。また、昭和の第二次世界大戦前後に描かれたという時代背景もあり、皇室を表現する際の言葉が非常に丁寧であるという特徴もある。
さて、本巻では主人公:清盛の10代後半の苦悩(出自や武士という身分など)からスタートする。僧兵に一人で立ち向かって行ったりする大胆不敵な態度は躍動感を生み、家族や家来を大切に思うような人間味は温かさを感じられる。いわばヒーローである。多くの人が描いている清盛像は、源氏を主人公としたドラマでの、頭を剃り上げた居丈高な権力者中年、というイメージが多いが、それとはまったく異なるもの。
たとえば、清盛を評した以下の記述などは最たるものである。
「清盛は、武者所の全員から、いつとはなく敬愛を集めていた。といって、別に彼に何の武勇も交友上の技巧もあるわけではないが、ただ彼はよく人の貧乏(カネがないという意味ではなく、不遇という意味なのだろうと私は受け取った)に気が付いて、人の貧乏の片棒をかついだ。また、殿上に対して彼ほどずけずけ物の言える武者は他にいなかった。正直である一面、大ずぼらの抜けているところがあった。さらにもう一つの特徴は、かれの姿のあるところ、たちまち、彼の色、彼の雰囲気、彼の陽気にくるまれてしまうという現象がある」
全16巻と長い旅路になりそうだが、当分の間、このヒーローにはまってみようと思う。 -
何度も読みかけては挫けていたが、ようやく1巻を読み終えた。
前半はほとんど動きがなく、清盛の人物描写や時代の空気を描くのに終始する。最後の方になってようやく清盛の活躍の場面が出てきて俄然面白くなってきた。
佐藤義清って何か聞いたことがあるような気がしていたら、そうか、例の人だった。
清盛と同時代の人だったとは思わなかった。
2巻からは展開が早くなる予感がするが、本を読むまとまった時間が取れたらいいのだけど。 -
戦国時代にならび、伝説・逸話が多く残り、人々に愛されるヒーロー・ヒロインが一気に登場する源平時代。NHKの人形劇もなかなか良かった。言わずと知れた大河ドラマや人形劇の原作、しかしそれ以前に平家物語といえば吉川英冶先生の『新平家』。平安末期〜鎌倉初期は教科書眺めるだけでも濃厚で十分面白い時代だが、平家物語を一通り読み、この『新平家』を読むと、この時代の虜となるはず。源平合戦・関ヶ原・明治維新(日本史3大イベント・私の独断と偏見による)中、事実か伝説か分からない微妙な古さが読者の想像力・妄想欲?をかきたてる。美化しやすい時代。歴史のうねりに成す術なく飲み込まれる者、抗い滅す者、巧みに利用する者、運の良い者悪い者…それぞれの生い立ち・置かれた状況から、ごく自然なキャラクター設定・ストーリー展開をしていて『歴史文学』モノ的硬さは全く無い。贔屓キャラが出来てきたらもうどっぷりハマっている。
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第1巻は、若き日の平清盛の行動を追ってストーリーが進行していきます。
生活に窮乏する父・忠盛と、彼に愚痴を言い募る母・祇園御前の間に立つ清盛の心情に迫り、また、源渡の新妻を殺めて出奔し、後の文覚と名乗る遠藤盛遠、やはり後に出家して西行となる佐藤義清との交流が描かれています。また後半では、悪左府と異名をとった藤原頼長の権勢と、彼の没落を因となった保元の乱に至るまでの顛末が描かれます。
全16巻にわたる大河小説ですが、思いのほかストーリーの展開が速くて、気持ちよく読み進めることができました。 -
藤原摂関政治の衰退開始に伴う平氏と源氏の武家の勃興が描かれている。
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保延年間からはじまり、一巻は、鳥羽上皇の崩御までを物語る。
(1137年~1156年)
この小説は、「保元物語」、「平治物語」、「源平盛衰記」、「義経記」、
「玉葉」、「吾妻鏡」、「平家物語」を題材にし描き上げた大河小説である。
(巻末の作品紀行より。)
吉川英治の小説を読むのは、ほとんど初めてのため、
文章の調子に慣れず、なかなか読むのが遅々として進まない。
台詞が、角張っていて、現代の口語とは違って畏まっているが、
リズミカルで心地良い。
人望のある清盛、一癖ある時忠、忍耐の忠盛、
逆境にいながら凛々しい精神の為義・義朝、
子煩悩な(主に頼長に対して)忠実、温和な貴人の忠通、
威風と美貌の頼長、一筋縄でいかぬ信西・・・
吉川英治がどのような人物造形をしていくのか読み進めるのが楽しみ。 -
全16巻のスタート。
登場人物が多く、混乱してしまうこともあるため、ノートに整理しながら読み進める。
気長に行こう。 -
新平家物語を再読。
武士が貴族の犬として存在した時代。時代が混とんとする中、平家の忠盛、清盛や源氏の為義、義朝らが力を付けていく。人が生きると言う事はきれいごとではないと改めて感じました。
いつの時代であっても権力闘争と言うのは尽きない悩みの様です。
鳥羽上皇と崇徳天皇の親子間の確執。悪左府頼長と道長の兄弟間の確執が混乱や権謀渦巻き、争いの火種となる。
悪左府頼長の政治への態度は敵も多いと思いますが、実は政治に対して最も真剣だったのではないか。そして、妻子を捨て、仏の道を選択した西行こと佐藤義清もまた、人生に対して正直だったのだと再読して感じました。
奢れるものも久しからずと言いますが、人間ほどほどに奢るのが一番だと思います。
著者プロフィール
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