- Amazon.co.jp ・本 (444ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061965515
作品紹介・あらすじ
もし頼朝が伊豆以外に配流となっていたとしたら、後の日本の歴史も変わったものになっていたに違いない。まことに奇しく伊豆、そして火の国の女・政子との出会いであった。さすがの佐殿も、政子の情熱に寄り切られたのである。ここに最大の被害者は、政子の父・北条時政であった。-一方、都に目を移せば、反平家の気運は次第に強まり、洛中洛外、不穏な兵馬の動きにあわただしい。
感想・レビュー・書評
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平家の専横に対し、都で鹿ヶ谷事件が勃発する。本巻の構成は、その時、奥州平泉での藤原清衡、基衡、秀衡、とようやく到着した義経。鎌倉での頼朝と北条政子、そして、叡山の僧、武蔵坊弁慶の投獄。と四つの話が同時に進む絵巻物で描くなら異時同図法となるのだろうか…。
鹿ヶ谷事件の関係者へ減刑に心を砕く、平重盛がカッコいい!この人の命の灯火はついえるのだが、平家の滅亡はこの人が延命していたらなかったのでは?と思わずにはいられない、賢者ぶり。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
もちろん吉川英治は愛国者である。戦前は 「宮本武蔵」 などの作品群で国民を鼓舞し、勇気を与えた。また保守・右翼界の人たちとの交流もあったようである。しかし思想で固まっていた人ではない。左翼の学者から教えを請うようなこともあり、自らの座右の銘である「我以外皆我師」の実践者でもあった。そんな彼にとって、敗戦は例えようもない挫折であったろう。実際にGHQによって公の場からの追放の憂き目をみる。多少とも愛国的であるとされた人間はそういう扱いを受けた時代である。復帰して書かれた本作品の平家は"悪"に描かれていない。悪だから負けたのか?そんなわけはない。この物語の底流にある無常観には吉川の先の大戦への思いが感じられるのである。
この巻から登場する人物は多い。後に義経の近臣となる佐藤兄弟、那須兄弟、そして藤原秀衡。頼朝と政子の出会いとの恋情があり、北条一族も登場。"怒め坊"弁慶がまた彼らしい登場を見せる。それにしても当時の坊主ってのは悪いのが多いね。多田行綱の密訴により、いわゆる「鹿ケ谷の陰謀」が露見し、時代は風雲急を告げていく。 -
予想通り、本巻も義経・頼朝といった源氏に焦点が当てられている。義経は陸奥に渡り、頼朝は伊豆にて平穏な日々を過ごす。一方で北条氏や弁慶といった、源氏再興の原動力たる人物も登場し始め、今後の展開に期待を持たせる。
都では、後白河上皇と平家の対立が深くなり、鹿ケ谷の謀反未遂が発生する。未遂に終わった本件だが、清盛も齢60になり、平家隆盛の世がそう長くない事が想起される。
頼朝がいつ起つのか、義経と弁慶はいつ出会うのか。次巻に期待。 -
前半の主人公は平家の誰かというよりも寧ろ源頼朝。後半の中心はかの有名な「鹿ヶ谷の陰謀」
この辺りから頼朝の登場頻度が高くなるということは、平家にとっても頼朝の存在が無視できなくなっているということを示唆するためだろう。 -
前半は、義経のその後の消息と、伊豆に配流となった後の頼朝と北条家のエピソードです。
後半は、鹿ケ谷の陰謀が描かれます。ただし、「怒め坊」こと弁慶をはじめとする登場人物を動かして、史実の周りにさまざまなエピソードを配置することで、ストーリーを構築しているのが印象的です。
しばらくは平家から源義経に物語の中心が移されたようで、若者らしい破天荒ぶりが描かれています。 -
義経の平泉入り。頼朝の近況。京の都では鹿ヶ谷事件が発生する。
歴史にIFはないですが、頼朝が伊豆に送られずに、西国に送られていたら。政子に出会っていなければなどと考えてしまいます。義経も同様です。平家もしかりで、清盛が長生きだったら。重盛が病にならなければと。
ただ、この些細なひとつずつの積み重ねが、重大な結果に繋がると思えば、自分の生活でも何もしないと言う選択肢はないと実感。
鹿ヶ谷事件で、平教盛・重盛が大納言成親との親類関係に苦しむ様や、政子が頼朝と通じていると苦しむ北条時政。そう言った親兄弟の関係で苦しむ様は平治の乱や保元の乱とあまり変わっていない気がします。 -
義経が奥州へ向かったり、
頼朝と政子のことが語られたり、
鹿ヶ谷の陰謀が起こったり、
弁慶が登場したりする巻。
平重盛が個人的に気になる。 -
平家全盛の世。
その中に僅かながら源氏の息吹きが感じられるようになってきた。
武蔵坊弁慶登場。
これまで登場してきた清盛は、策士というより人間性を買われ、世の中の必然として出世したように描かれている。悪役清盛のイメージを大きく覆される。 -
本巻では、源義経と藤原秀衡の初対面、源頼朝の初登場及び北条政子との色恋沙汰、武蔵坊弁慶の初登場、という今後の主役級キャラクターが揃い始めた内容。今後、これらのキャラクターが同時進行してストーリーは展開していくのだろう。
本巻は、反平家の伊吹とも言える鹿ケ谷事件で幕を閉じる。鹿ケ谷は、先月の京都ひとり旅で訪れた(登山した)お陰で、地形や位置関係が分かっており、読みやすかった。
本作品の主役は平清盛であるが、この鹿ケ谷の関係で少々登場したくらいである。通常ドラマや小説では、特にこの頃になると平家の横暴やら清盛の傍若無人ぶりが描かれることが多いのだが、本書では悪役化していない。例えば、「相国(清盛)の悩みは、いかに一門で顕官重職を独占するのではなく、信じる他人がいないことです。そこで勢い、子や孫や甥御や御舎弟などを要路につかせておられるものと…」と蔵人の重兼というチョイ役に発言させて清盛を擁護する作り方をしている。
全16巻中5巻まで読了ということは、まだ3分の1も終了していない。なのに、清盛は既に還暦で残す寿命はあと10年余り。今後、どう展開していくかが楽しみだ。私としては、日宋貿易着手の逸話などをもっと知りたいのだが。大輪泊(神戸市)が全然出て来ないのである。次巻以降に期待したい。