新・平家物語(十六) (吉川英治歴史時代文庫)

著者 : 吉川英治
  • 講談社 (1989年10月2日発売)
3.89
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  • 本棚登録 :145
  • レビュー :14
  • Amazon.co.jp ・本 (446ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061965621

新・平家物語(十六) (吉川英治歴史時代文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 前巻に引き続いて、麻鳥や吉次といったサブキャラクターが義経と連絡を取ろうと駆け回っており、どことなく、作者が物語の締めくくりをつけるのに苦慮しているような印象もあります。悲劇の主人公となるはずの義経は、戦いがやむことのないこの世の無常を強く思うようになり、ストーリーの上での派手な振舞いや感情描写が抑えられていることも、少し予想とは違っていました。

    『勧進帳』で有名な安宅の関のエピソードや、藤原泰衡の裏切りによる義経の最期も描かれているのですが、分かりやすい盛り上がりに欠ける印象で、何だかあっけなく幕切れになってしまったように感じました。とはいえ、年老いた麻鳥夫婦とそれを見つめる麻丸の姿で、壮大でありながら儚さに思いを致さずにはいられない物語を締めくくるのも、これはこれで納得のできる終わり方だったようにも思います。

  • ついに完結。
    業は繰り返される。人間の苦しみを断つために自らの死を選んだ義経。その意志を本当の強さとして描きたかったと思うのだが、私にはとても寂しく辛いものに思えた。
    最後の麻鳥夫婦のシーンがあって、何か救われた気がした。
    いまから800年以上も昔の人々が、こんな壮大な物語を創り上げていたことが、凄いことだと思う。

  • やっとこさ読み終わった。半年かかった。
    戦後の日本で書かれたものだと感じた。吉川英治のメッセージが熱く込められているようだ。
    それにしても死んでいくシーンがあっさりしていたなあ。
    とにかく達成感を込めて星4つです。

  • 麻鳥が、最初から一番好きだったので、いい終わり方でした。

  • ついに完。1巻を読んだのが20年くらい前だから大半の内容は忘れているけど、この巻で義経、頼朝らの死、そして(完)の文字、なんとなく寂しく感じた。

  • とうとう大作を読破。大河ドラマ「平清盛」のスタートに合わせて今年1月から読み始め、7ヶ月かかってようやくゴール。長かった。2012年上半期の思い出の書となった。
    本巻では、逃避行を続ける義経が主人公と思いきや、そうではなく、主役は町医者の麻鳥とその妻の蓬夫妻だった。静御前から預かった手紙を渡すために義経を探し続ける麻鳥。娘の円と共にホームレスになったり、獄に繋がれたりしながら気ままな夫と家出した息子の帰りを待つ蓬。この名もなき一庶民が最後を締める巻となった。最終章はこの2人が吉野を旅し、今までの長い思い出を振り返るという終わり方だったが、ぐいぐいと引き込まれていくようだった。
    義経に関しては、勧進帳など若干のエピソードは有ったものの、逃避行を追いかける視点ではなく、あっという間に平泉に到着し、あっという間や藤原泰衡に攻め滅ぼされるという、やや淡白な描き方だった。ドラマにあるような、弁慶立ち往生というアングルも無し。義経が自害し、範頼も頼朝に追い込まれ、頼朝も呆気なく落馬後に病死という呆気なさにちょっと肩透かしをくった感じ。まさに諸行無常である。
    しかし、本作品は面白かった。平安末期は今まで大河ドラマではお馴染みなものの、小説は初めてだったので、貴重な読書体験となった。
    しばらくは現在並行して読んでいる「運命の人(山崎豊子著)」読破が目標だが、その後、長編小説を何を読もうか…。本作品繋がりで「義経(司馬遼太郎著)」にしようか、父から借りている「織田信長(山岡荘八著)」にしようか、はたまた吉川英治作品の他を読むか…。楽しい悩みである。

  • 2007年の5月から読みはじめた新・平家物語。
    義経が華々しく活躍しだした頃から、結末がわかっている分読むのが辛くなってしまった。
    それから、本当にボツボツ読み進んでいたけど、壇ノ浦の悲惨さにまた休止、そして義経の没落、静との別れ・・・でまた辛くて休止。

    ようやく今日「完」読することが出来た。
    結局2年3ヶ月もかかってしまったけど、やっぱり読み応えあったし、
    なによりも、こんなに休み休み読んでるのに、中身を忘れてないってことに自分でもびっくり。

    16巻読み終えて思うことは、「人間の愚かさ」
    そしてその愚かさを一番わかっていたのが義経だったのかもしれない。
    吉川英治の描く義経は、そういう人だった。

    もう一回読み直したいけど、よっぽど長生きして余裕があったらだなあ・

  • 吉川英治の新平家物語を全16巻の完結編です。

    源平の乱に始まる平家の繁栄から屋島、壇ノ浦にわたる源氏の進出や平家の滅亡と目まぐるしく変わる世相の中で遂に義経もこの世を去ります。
    麻鳥や蓬も年を取り、苦労ばかりの人生だったけど決して悪い人生ではなかったと振り返る姿に救いを感じました。

    人は権力を握るとそれに固執するあまり孤独になり易いものだと感じました。後白河法皇に翻弄されてきた清盛しかり、父義朝を味方に殺された頼朝しかり。ほどほどに、奢る事が大切なのかな。

    大作を読んだ充実感を感じます。

  • 宮崎などを舞台とした作品です。

  • <全巻読了>
     十六巻の長丁場において、中心となる人物は多岐に渡る。
     内容は後半よりも前半、特に初期の方が奥深い面白さがあった。
     筆頭はやはり、平清盛の内面描写を挙げたい。
     父・忠盛への慕情、母・祗園女御に対する屈折と洞察、常磐御前との心情の絡み合いなど、息子として男としての機微が描き尽くされている。
     (祇王との下りに限って突如、横柄な無頓着者と為るのは、原本の所為もあって仕方ないのだろう。)
     他、前半は舞台状況の解説と相俟ってか、各々の人物の功罪を冷静に中立的に眺める視点に好感が持てる。
     人の愚かしさや哀れさをも淡々と見つめ、温かく掬う捉え方をするので、誰をも憎めなくなる程。
     しかし、後半は一変、その美点が損なわれる。
     あまりの判官贔屓の強さに辟易させられてしまう。
     義経を『美しく賢く優しい英雄』として完璧に極端に好人物に仕立てる為、都合の悪い史料はこぞって無視、もしくは大幅に改変。
     かろうじて取り上げても、無根拠かつ感覚的に記述を否定し、徹底した贔屓振り。
     一方、露骨に悪役に貶められる梶原景時や頼朝が気の毒になるくらい、後半の人物描写は偏向に過ぎる。
     兄弟不和の主要な原因を、感情的な擦れ違いに収束させるのも陳腐。
     彼らの亀裂は、歴史の胎動に絡む世の仕組みの変遷において、未来を見つめる者と過去に縛られた者の必然的な齟齬と言えまいか。
     また、女性達の造形にあまり魅力を感じられないのも残念。
     頁を割いてはいるし、それなりに読み込みも見られるが、全体的に『男から見る女』の域を出ていない。
     『母』でしかなかったり、『牝』の部分だけが強調されていたりと、トータルな人間としての複雑さや奥行きに欠ける。
     女性不在の日本史の一端を垣間見る思い。
     その辺りのもどかしさは、そもそもがデフォルメされ過ぎた元の題材から二次創作を組み立てれば、否応なく幅を狭められるという制限枠にも起因する。
     とはいえ、源平期を扱った優れた歴史小説は他にもあるのだし、後は感性との噛み合いに因るのだろう。
     加えて、作中人物の抱く価値観や思想展開に『現代臭』が付き纏うのも気になった。
     (時代考証――風俗や慣習――は流石に緻密だが。)
     一貫したストーリーテラーとなるオリジナルキャラの麻鳥が、善行を積む医師であるにも関わらず作品内で浮いているのは、架空の人物である所為というより、其処に現代人の解釈が投影されるからだろう。
     人間同士で血を流し争い合う様を、宿業として忌避し厭うのは間違っていない。
     だが、その感覚一つで当時の状況を総括するのは無理がある。
     “あはれ”の語義にしても、儚さや虚しさだけでは底が浅く、胸の奥には響かない。
     それぞれの時代で、人間は良くも悪くも生きることに対しがむしゃらに、あるいは狡猾に、あるいは軽やかに、生というものを謳歌した面もあったのではないか。
     生真面目な把握のみでは捉え切れず、突き放して述懐できる程他人事でもない、入り組んだ生身の人生が数多くあった筈なのだ。
     歴史という、乾いた記録の底辺にも。
     現代人に理解し易く引き寄せた安易な分解よりも、我々とは異なる世界観に生きた人々の、説得力に魅了されたい。
     彼らに自分たちと、同じ発想や生き方をさせる必要はない。
     個々人が時代の空気を吸って懸命に生きた、その指摘で充分示唆に富むのだから。
     尤も、作品が作られた時期から見て、戦争嫌厭と庶民賛歌がとかく前面に出るのはやむを得ないのかもしれない。
     故に、戦争商人の扱いは手厳しいし、ラストは庶民である麻鳥の感慨で幕を閉じる。
     大掛かりな群像劇の終局にしては少々尻窄みな結末も、筆者自身が歴史の只中にあったと考えれば理解はできる。
     国民的作家の聖典の如く崇めるでもなく、諂って追従するでもなく、『この頃に大衆が望み求めたもの』を感じ取る手掛かりだと思えば、作品自体が時代の一証人であるとも言える。

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