- Amazon.co.jp ・本 (446ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061965621
作品紹介・あらすじ
平家が西海の藻屑と消えてわずか半年後、武勲第一の義経は、それまで指揮下にあった頼朝の兵に追われる身となった。吉野から多武ノ峰、伊勢、伊賀-息をひそめて主従7人、平家の残党の如く生きる。静を見捨ててまでの潜行につぐ潜行。義経はひたすら東北の空を仰ぐ。そこには、頼朝の最も恐れる藤原三代の王国が-。人間の愚、人間の幸福をきわめつづけた吉川文学の総決算、ここに完結。
感想・レビュー・書評
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義経の死
麻鳥夫婦 -
最終巻は前巻以前と比較して話の展開が早く、ある意味“後日談”のようになっている。
結局のところ、頼朝もいつか来た道を辿るという、人間の愚が強調されているが、その中にも、幾ばくかの良心が存在することを吉川は示したかったのだろう。
それを、義経とその郎党、阿部麻鳥、あるいは富樫泰家に代弁させているのではないか。 -
前巻に引き続いて、麻鳥や吉次といったサブキャラクターが義経と連絡を取ろうと駆け回っており、どことなく、作者が物語の締めくくりをつけるのに苦慮しているような印象もあります。悲劇の主人公となるはずの義経は、戦いがやむことのないこの世の無常を強く思うようになり、ストーリーの上での派手な振舞いや感情描写が抑えられていることも、少し予想とは違っていました。
『勧進帳』で有名な安宅の関のエピソードや、藤原泰衡の裏切りによる義経の最期も描かれているのですが、分かりやすい盛り上がりに欠ける印象で、何だかあっけなく幕切れになってしまったように感じました。とはいえ、年老いた麻鳥夫婦とそれを見つめる麻丸の姿で、壮大でありながら儚さに思いを致さずにはいられない物語を締めくくるのも、これはこれで納得のできる終わり方だったようにも思います。 -
ついに完結。
業は繰り返される。人間の苦しみを断つために自らの死を選んだ義経。その意志を本当の強さとして描きたかったと思うのだが、私にはとても寂しく辛いものに思えた。
最後の麻鳥夫婦のシーンがあって、何か救われた気がした。
いまから800年以上も昔の人々が、こんな壮大な物語を創り上げていたことが、凄いことだと思う。 -
麻鳥が、最初から一番好きだったので、いい終わり方でした。
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ついに完。1巻を読んだのが20年くらい前だから大半の内容は忘れているけど、この巻で義経、頼朝らの死、そして(完)の文字、なんとなく寂しく感じた。
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とうとう大作を読破。大河ドラマ「平清盛」のスタートに合わせて今年1月から読み始め、7ヶ月かかってようやくゴール。長かった。2012年上半期の思い出の書となった。
本巻では、逃避行を続ける義経が主人公と思いきや、そうではなく、主役は町医者の麻鳥とその妻の蓬夫妻だった。静御前から預かった手紙を渡すために義経を探し続ける麻鳥。娘の円と共にホームレスになったり、獄に繋がれたりしながら気ままな夫と家出した息子の帰りを待つ蓬。この名もなき一庶民が最後を締める巻となった。最終章はこの2人が吉野を旅し、今までの長い思い出を振り返るという終わり方だったが、ぐいぐいと引き込まれていくようだった。
義経に関しては、勧進帳など若干のエピソードは有ったものの、逃避行を追いかける視点ではなく、あっという間に平泉に到着し、あっという間や藤原泰衡に攻め滅ぼされるという、やや淡白な描き方だった。ドラマにあるような、弁慶立ち往生というアングルも無し。義経が自害し、範頼も頼朝に追い込まれ、頼朝も呆気なく落馬後に病死という呆気なさにちょっと肩透かしをくった感じ。まさに諸行無常である。
しかし、本作品は面白かった。平安末期は今まで大河ドラマではお馴染みなものの、小説は初めてだったので、貴重な読書体験となった。
しばらくは現在並行して読んでいる「運命の人(山崎豊子著)」読破が目標だが、その後、長編小説を何を読もうか…。本作品繋がりで「義経(司馬遼太郎著)」にしようか、父から借りている「織田信長(山岡荘八著)」にしようか、はたまた吉川英治作品の他を読むか…。楽しい悩みである。