管絃祭 (講談社文芸文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061975590

作品紹介・あらすじ

有紀子の同級生の夏子や直子は「広島」で爆死した。夏子の妹は四人の肉親を失う。皆その後を耐えて生きる。沈潜し耐える時間-。事物は消滅して初めて真の姿を開示するのではないか、と作者は小説の中で記す。夏の厳島神社の管絃祭で箏を弾く白衣の人たちの姿は、戦争で消えた「広島」の者たちの甦りの如くに見え、死者たちの魂と響き合う。第十七回女流文学賞。

感想・レビュー・書評

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  • ずっと前から気になっていた作品。

    選び抜かれたような日本語が心に響きます。
    最後の章の幻想的な管絃祭の描写が悲しみを一層深くします。

    大切な人と厳島神社、そして管絃祭を一緒に見に行こうと思います。

  • ずっと読みたかったが、Kindleで読めそうになった途端、やはり紙の本で読みたくなって、初版の古本を入手して。
    手に入りにくさ故だろうか。
    戦争を語るのに、この本以上のものがあるだろうか。翻訳はされただろうか。
    高校の教科書に「兵隊宿」が取り上げられているのだから、日本語のもつ力がずっと受け継がれていくことに希望をもとう。
    異なる場所や時代を生きてきた者にも、人生への向き合い方を静かに示唆してくれるような、芸術的作品である。

  • タイトルは宮島で陰暦6月17日に行われる管弦祭からとられているが、それは小説の末尾にのみ現れ、それまでの回想の物語に対する鎮魂歌となっている。小説全体は有紀子を一応の主人公としつつも、彼女の周縁のさまざまな人々の戦中、戦後史が編年体風にではなく、自由な時間軸の中で語られてゆく。特に戦前、被曝前の広島の地名が限りない愛着のもとで語られるが、そこに共感できれば(たとえ広島の地を知らなくても)しみじみとした物語として受け止めることができるだろう。これというプロットがないのだが、そこがまたこの小説の価値なのだ。

  • 雅楽の不思議な響きの間に見える空虚。
    そこから湧き出たような思いで読ませて頂きました。


    毎年、夏になると思いだす本です。

    (2011.8.10)

  • 広島を出て行った人、広島にとどまった人、さまざまな登場人物を通して、あの8月6日の広島の記憶を抱えて生きること、広島が故郷であること、ということが描かれていました。
    登場人物の一人は著者自身が投影されています。
    最近この著者の作品を続けて読んでいるが、美しい日本語も、人間の心の機微の描き方も、とても好きだと感じる。しかし、一度読んだだけでは読みきれない、複雑な深さも感じる。何度も繰り返し読んでいこうと思った作品。

  • 日本の原爆文学4で読んだ。最後の場面が管弦祭である。その中に原爆投下の場面が出てくる。

  • 2022.06.21 図書館 大活字本

  • 淡々と綴られる人々のことばやしぐさの連続に心を打たれる。それがあるとき突然、不連続になることの苦しみ。簡単に不連続になる、というより、連続することを閉ざされた、止められた、といってよい。止められた恨み、止められたと思ったら、そうではなくて、続いていかされる生のなかで、生きろ、と無理強いされる苦しみ。「苦しみ」と書いてみるのは簡単だが、その心持ちがわかるためにどうしたらいいのだろうか。ただ毎日が何もなくすぎていくことの重みを考えよう。

  • 淡々と綴られる人々のことばやしぐさの連続に心を打たれる。それがあるとき突然、不連続になることの苦しみ。簡単に不連続になる、というより、連続することを閉ざされた、止められた、といってよい。止められた恨み、止められたと思ったら、そうではなくて、続いていかされる生のなかで、生きろ、と無理強いされる苦しみ。「苦しみ」と書いてみるのは簡単だが、その心持ちがわかるためにどうしたらいいのだろうか。ただ毎日が何もなくすぎていくことの重みを考えよう。

  • かなり昔にドラマ化されたのを見たような気がするが、気のせい?

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著者プロフィール

昭和4年4月11日、広島県に生まれる。昭和27年早稲田大学第一文学部文学科(国文学専修)卒。小説家。評論家。日本芸術院会員。河出書房、筑摩書房勤務、昭和37年退社。38年「往還の記--日本の古典に想う」で田村俊子賞。56年「兵隊宿」で川端康成文学賞。平成6年日本芸術院賞。著書に『竹西寛子著作集』全5巻別冊1(平8 新潮社)『自選竹西寛子随想集』全3巻(平14〜15 岩波書店)『日本の文学論』(平7)『贈答のうた』(平14 いずれも講談社)など。

「2004年 『久保田淳座談集 心あひの風 いま、古典を読む』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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