愛の生活・森のメリュジーヌ (講談社文芸文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 404
レビュー : 37
  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061975781

作品紹介・あらすじ

『わたしはFをどのように愛しているのか?』との脅えを透明な日常風景の中に乾いた感覚的な文体で描いて、太宰治賞次席となった十九歳時の初の小説「愛の生活」。幻想的な窮極の愛というべき「森のメリュジーヌ」。書くことの自意識を書く「プラトン的恋愛」(泉鏡花文学賞)。今日の人間存在の不安と表現することの困難を逆転させて細やかで多彩な空間を織り成す金井美恵子の秀作十篇。

感想・レビュー・書評

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  • 19歳からの10年間に書かれた短編を集めた本。だんだん文章が締まって、密度が上がっていくのがわかる。そういう意味では、最初の数編はちょっと我慢しながら読んだ。若い娘さんがふらふらする話って、元若い娘からするとあまり新鮮味がない。思い出して気恥ずかしいばかり。

    でもそのあと、「兎」でぐっと面白くなった。ふわもこガーリーストーリー風に始まったのにひどく血腥くて、この短編集で一番好きだ。幻想もの好きな人は、この一篇だけでも要チェックだろう。次点は、盛り場で育っただらしなく美しい姉弟の関係を描いた「黄金の街」。

    どの話でも、主人公が求める人は、物理的・倫理的・構造的にアクセスできないところにいる。この求めるものが手に届かない感じが、なんとも甘い毒に感じられた。

    • 花鳥風月さん
      なつめさん こんにちは

      この本、あまり面白さを説明できない頃に読んだきりだったので、なつめさんの感想に「なるほど~」とうなっています。

      ...
      なつめさん こんにちは

      この本、あまり面白さを説明できない頃に読んだきりだったので、なつめさんの感想に「なるほど~」とうなっています。

      そういえば静男(なつめさんにならって最近は私も心の中でこう呼んでいます(笑))が金井美恵子ダメって言ってるとレビューで書いてらしたのも何か興味深くて… どのへんが静男の感性と合わないのか考えてみたくなります。
      2012/06/20
    • なつめさん
      花鳥風月さん こんばんは

      静男がどの作品を批判していたのか忘れてしまったのですが(メモしておけばよかった!)... このふたりって本当に違...
      花鳥風月さん こんばんは

      静男がどの作品を批判していたのか忘れてしまったのですが(メモしておけばよかった!)... このふたりって本当に違う世界で生きていそうな気がします。

      同じように手に届かないものを描くのでも、金井さんの物語はどこか甘美で、その欠落さえ愛でているような感じがするのにたいして、静男だと実際に擦り傷だらけになってぶつかっていって、でも全然辛さが薄れない苛立ちをもてあましているような。

      静男ワールドに慣れてしまって、この本のガーリーな毒気に波長を合わせるのにちょっと時間がかかりましたが、それにしても「兎」は名作ですね。静男を追いつつ、金井さんの本もときどき読もうと思います。
      2012/06/20
  • 金井美恵子さんの初期作品を集めたもの。
    何というかどの一行も気を抜けないというか、とにかく精緻、などというしょうもない言い方ではとてもくくれず逆に飲み込まれる(気がする)。
    この本ではないがとあるインタビューで著者が言っていた言葉をずっと心に留めている
    「意識的に小説を書いてきたり読んできたりした人間が、小説そのものに対する批評性をもたずに文章を書くということは不可能ですね」

  • 森のメリュジーヌやばい
    ていうか美恵子やばい!

    「彼女の微笑の意味の最大の意味は愛であり、その中にしのび寄って来る死、悪意とからかいの針、優しさ、苦痛、空虚、悲しみ、それから燃えあがる意志――。」
    「きっと、何かいいことがあるかもしれない。疑わしいことだけれど、何かいいことがあるかもしれない。信じはしないけれど、何か、いいことがあったって、かまわないじゃない?!」
    「十全な愛。わたしには愛することが出来るのでしょうか?本当にわたしは愛してしまったのか?わたしが愛しているとしたら何故なのか?わたしは何故愛するのか?わたしが愛しているのはFなのですか?」

    いちいち響くことをかく。「愛の生活」をいまのわたしとおなじ19でかいたとは。脱帽。
    痛いくらいに愛してみたいとおもった。
    窮極の愛をわたしは今生で獲得できるのだろうか(無理だろうなぁでも希望は捨てたくない!)
    自分の身体を、心を、完全に犠牲にしてまで誰かを愛してみたい。

    「恐ろしいくらい。恐ろしいくらいあたしは墜落して行く。」

  • 「兎」いいないいなと思うのです。
    さあゆっくりと死のうかってラムいりココアを飲んで言ってみたい。

  • 或いはわたしの失われた脳みその片側に残る寂寥を想う。それがいつからか可視化されて、消えてしまった愛の、醜く血生臭い黒に似ていると、生まれる前から知っていた。秘密めいたランプの橙色の明るさは、夜明けの絶望に掠れた声をあげている。欲望の捌け口を朝と朝の隙間に見つけて、まっすぐ立てなくなってしまった。

  • 「表現は象徴なんかではなく、もっと本質的な意味で直接的・行為的なものですよ」

  • 最初の二編『愛の生活』と『夢の時間』は、正直少し読みづらかったです。時間と場面が急にとんで過去の話になるなど、話を掴みきれず、私にはまだ早いのかもしれないとも思いました。

    しかし、三つ目の『森のメリュジーヌ』からは、おもしろいと思い始めました。10~20ページ程度の短編の方が、濃密で独特な世界観に浸ることができました。

    『森のメリュジーヌ』は、常闇の森のなか彼女をさがし、指を燃やすという、幻想的な世界が好きでした。

    他に好きだったのは、『空気男のはなし』です。サーカスに出演する空気男モモは、“あたりまえの常識的な種類の食物を、無邪気に、ただ、驚くべきほどの分量の食物を、食べ(p212)”ました。球体のような太り方をしていた彼は、“ゴム風船のように空虚をいっぱいにつめ込むことが出来る(p215)”のでした。

    また、『兎』は、グロテスクで、目を覆いたくなる話でした。

  • 2008年11月17日~18日。
     女性にしか書けないんじゃないか、といった印象を持った。美しくグロテスクで独りよがりでもあり、人を惹きつける。不在という存在。
    「兎」はそんじょそこらのホラー以上に怖い。

  • 金井美恵子が風俗小説を書き始めてからの作品から読み始めた自分としては、初期短編のいかにも詩的な雰囲気にはじめは戸惑った。でも、抽象的な言葉が連発されるその中にも、そういった言葉は執拗に描かれる細部に編み込まれているので、読む側の意識は飛翔していかずに現実めいたものに繋ぎとめられ続ける。1冊読み切れるだろうかと不安に思いながら読んでいたが、やはり、気がつくと読むのに没頭していて、その理由がはっきりとわからないだけに、不思議な心地になった。

  • はや20年前に読んだ『それでも作家になりたい人のためのブックガイド』で挙げられていた。読みたい本リストに載せられたまま20年放置。

    ついに読了。衝撃。

    表題作『愛の生活』は19歳の時の作品。これは驚く。
    『母子像』エレクトラコンプレックスとマザーコンプレックスの交錯。

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著者プロフィール

金井美恵子(1947.11.3~) 小説家。高崎市生まれ。1967年、19歳の時に「愛の生活」が太宰治賞候補作となり、作家デビュー。翌年、現代詩手帖賞受賞。小説、エッセイ、評論など刺激的で旺盛な執筆活動を続ける。小説に『プラトン的恋愛』(泉鏡花賞)、『タマや』(女流文学賞)、『兎』、『岸辺のない海』、『文章教室』、『恋愛太平記』、『柔らかい土をふんで、』『噂の娘』、『ピース・オブ・ケーキとトゥワイス・トールド・テールズ』、『お勝手太平記』など多数。また第一エッセイ集『夜になっても遊びつづけろ』より『目白雑録』シリーズまで、エッセイ集も多数刊行している。

「2015年 『エオンタ/自然の子供 金井美恵子自選短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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