司馬遷―史記の世界 (講談社文芸文庫)

著者 :
  • 講談社
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レビュー : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061975880

作品紹介・あらすじ

「司馬遷は生き恥さらした男である。」に始まる本書は、武田泰淳の中国体験もふまえた戦中の苦渋の結晶であり、それまでの日本的叙情による歴史から離れて、新たな歴史認識を展開した。世界は個々人の集合であり、個の存在の持続、そして、そこからの記録が広大な宇宙的世界像と通底する。第一篇「司馬遷伝」、第二篇「史記」の世界構想。

感想・レビュー・書評

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    「司馬遷は生き恥さらした男である」
    という印象的な書き出しで本書は始まる。

    匈奴討伐に失敗した李陵を庇ったことで武帝の逆鱗に触れ、宮刑に処された司馬遷。
    彼の受けた屈辱と絶望、憤りと執念をもって書かれた『史記』。

    著者は、司馬遷が『史記』において描いた世界構想を明らかにせんとする。
    曰く、世界の歴史とは政治の歴史であり、『史記』の意味する政治とは「動かすもの」のことである。
    「動かすもの」、つまり歴史・世界の動力となるもの、それが政治的人間であり、それこそが『史記』の主体をなす存在なのだと言う。

    司馬遷は世界の中心となった政治的人間としての「個人」、すなわち帝王を描く「本紀」を書いた。
    そしてその中心の周縁、あるいは新たな中心となる存在としての諸侯を「世家」で書くことで、世界が常に空間的に持続することを説く。
    そして「列伝」において、英雄豪傑を始めとするあらゆる政治的人間を描いた。

    著者の解き明かす『史記』の世界は(司馬遷の意図が真実そこにあるかは措いて)刺激的でおもしろい。
    ただ全体的にどこかファナティックな、著者自身の執念のようなものが感じられる。
    それを考えると、評伝とは言え確かに“文芸”作品なのだと思う。

  • 「史記」は、武帝より屈辱的な刑罰を受けた司馬遷が、世の中への憤りと諦観をもって纏めた歴史書であることが理解できた。解説を読むと、その情念は著者にも共通するものとのこと。
    内容的にはやや哲学的でした。

  • 学校で勧められた。
    史記の全体像が分かって面白い。
    ずーーーっと前の時代の人にも、悲しみとか怒りとかがあって、それを糧に仕事を成し遂げたんだっていうことが、印象的だった。
    司馬遷、っていう歴史上の人物の、人間的な面が伝わってきた。

  • 「歴史は、繰り返されない。それは明らかだとしても、その「歴史」なるものを生み出す人類に荷わされた、宇宙の生物としては一種特殊の「性格」と「運命」は、あいかわらず我々にこびりついているばかりでなく、ますますふくれあがり、明確化され(或る意味ではアイマイ化され)つつある。(略)壮大なる夢と、みじめったらしい執着がからみあって、人類の精神をひきつらせている。「人間よ!お前はそもそも何物なのであるか?」という問いが、あらためて、さらに深く重く広く我々を息苦しくさせ、また反面では(不思議なことに)愉快にさせる。イエス・キリストが生誕されるよりも前に、かの司馬遷という男は、男らしくもこの難問に立ち向かい、そのけなげな姿勢と大きな影は、不気味な日蝕の如く、現代の我々の日常に覆いかぶさっている。」(1965年新版への序文)

    この思わせぶりな序文が、私は好きだ。武田泰淳は、上海で日本の敗戦を知った時に原爆によって日本壊滅の噂を聞き、「かつて日本という国があった」という長い長い長詩を書いたという。既に司馬遷を読み込んでいた彼は、人類史の中に、人間と国とを当価値に置く物差しを獲得していたのである。どういう物差しか。それは例えば以下のようなものだろう。

    「動かすもの」は人間である。世界を動かすものは人間以外にない。(66p)

    昭和18年にそこを掴んで離さなかったことで、その他の様々な司馬遷論をリードする。

    「司馬遷は生き恥をさらした男である」(25p)有名な冒頭の言葉が武田泰淳の人生にどのようにリンクするのかは知らない。司馬遷が「史記」を完成させる第一の契機が父親の憤死であったことは確かだろう。立ち上がりはそれでも、「現代への批判者」として立ち上がるためには「生き恥」が必要だった。

    理性的で生真面目で超一級の知識を持ち国随一の文章力を持った人間、そういう人間だからこそ、感情を爆発させて筆を走らせた時に、奇跡は起きたのだろう。蓋し、歴史を描きたいと思う人には、史記は必ず通るべき門だと思う。
    2013年9月27日読了

  • 【読みたい】
    齋藤先生の『勉強力』より

  • 「史記」は、黄帝から前漢の武帝までの歴史を記した本です。この本の作者は、司馬遷です。彼は「史記」を完成するために宮刑に処せられる屈辱を我慢しました。”人固有一死,或重于泰山,或轻于鸿毛”という精神後代の人を絶えず激励しています。私も自分の生命もっと意味があるように、頑張ります。

  • 読み途中。やはりこういう、小説じゃない読み物は進みが遅い・・・これに合わせて史記も大人買いしたものの、全然読めてない。恥ずかしい。

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著者プロフィール

一九一二(明治四十五)年、東京・本郷の潮泉寺住職大島泰信の息子として生まれる。旧制浦和高校を経て東大支那文学科を中退。僧侶としての体験、左翼運動、戦時下における中国体験が、思想的重量感を持つ作品群の起動点となった。四三(昭和十八)年『司馬遷』を刊行、四六年以後、戦後文学の代表的旗手としてかずかずの創作を発表し、不滅の足跡を残した。七六(昭和五十一)年十月没。七三年『快楽』により日本文学大賞、七六年『目まいのする散歩』により野間文芸賞を受賞。『武田泰淳全集』全十八巻、別巻三巻の他、絶筆『上海の蛍』がある。

「2018年 『新・東海道五十三次』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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