何処へ・入江のほとり (講談社文芸文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 86
感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (332ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061975996

作品紹介・あらすじ

栄達出世を夢みつつ、人生への懐疑にゆれる悩める青年健次の魂の行方を追う「何処へ」。瀬戸内海沿いの旧家に集まる兄弟姉妹らの心の翳と哀感を描く「入江のほとり」。父の死を綴る「今年の春」、母の死を書く「今年の初夏」。生涯基督教の神を求めながら棄教し、晩年に回心した"懐疑しつつ信仰を求めた求道者"正宗白鳥の代表作八篇。

感想・レビュー・書評

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  •  冷静で温度の低い物語が淡々と語られていて読みやすいが、話としての面白さや派手さは少ない。
     この文庫の中の話には主人公の行く先が不明で、明確なエンドがない話、『その後はどうなったんだよ……?』と不安しか覚えない話が幾つかあった。
     ただ、主人公の憂鬱や不安感、行き場のなさなどの鬱屈した感情の書き方は巧み。読んでいて、あーーーーと視線が遠くへ行って、己の半生を振り返ったり色々と考えたりしたくなる。

  • 近代人なるものの理想的なありかたとは
    モラトリアムにほかならない
    その退屈に負けて人は、現代社会の野蛮人となりゆく
    つまり成熟は二つの道だ
    無為の人となるか
    みずからの意思で死を選び取るか?

    明治40年から、昭和30年代にかけて書かれた短編を集めたものだが
    その思想性はまったく古さを感じさせない
    悩みにこそ真実がある

  • なにも為し得ない話

    しかし、冒頭の料亭へと
    健次が再び向かうラストは
    冒頭への帰結を果たし、
    ひとつの物語の終わり方として
    美しいと思う。

  • 出口が無いことにはうすうす感づいてるんだけど、わざと見ないようにしている。冷たくて切ない青春小説。

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著者プロフィール

正宗白鳥(1879.3.3~1962.10.28) 小説家。岡山県生まれ。東京専門学校(早大の前身)文学科卒業。キリスト教に惹かれ受洗、内村鑑三に感化される。後に棄教の態度を示すが、生涯、聖書を尊重した。1903年、読売新聞社に入社、7年間、美術、文芸、演劇の記事を担当、辛辣な批評で名を馳せる。『紅塵』(07年)、『何処へ』(08年)を刊行するや、代表的自然主義作家として遇される。劇作も多く試み、『作家論』『自然主義文学盛衰史』『など評論でも重きをなした。『入江のほとり』『人を殺したが…』『内村鑑三』『今年の秋』等、著書多数。

「2015年 『白鳥評論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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