中世・剣 (講談社文芸文庫)

著者 :
  • 講談社
3.35
  • (2)
  • (5)
  • (12)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 59
感想 : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (293ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061976061

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • #英語 "The Middle Ages" by Yukio Mishima

    短編5作品

    中世   The Middle Ages
    夜の仕度 Preparations for the Evening
    家族合せ Family Card Game
    宝石売買 Precious Stone Broker
    孝経(こうきょう) The Book of Filial Piety
    剣(けん) Sword


    「いつ来るかわからぬ赤紙にそなえて、遺書のつもりで書いた作品」が「中世」
    川端康成が三島の才能を認めるきかっけとなった作品が「中世」と「煙草」

    「家族合せ」
    主人公の名前は、主税(ちから)
    忠臣蔵の大石主税(ちから)と同じ名前。
    どんな意図が?つい、深読みしたくなります。


    ~~~
    川端のノーベル賞受賞後、三島と伊藤整の三者対談にて。三島は川端に、足利義尚(よしひさ)のはなしを書いてほしいと言っている。義尚については三島自身が「中世」ですでに書いているが、川端の書く義尚が読みたかったのだろうか。

  • 「中世」
    応仁の乱は終わったものの
    将軍足利義尚は若くして死んだ
    悲しみにくれる父の義政が鬱々とした毎日を送り
    義尚の霊を呼び出そうとする一方
    老医師は義政のために不老薬を手に入れようと奔走するのだった
    三島作品のなかでも最初期のものにあたる
    言ってみれば年寄りの回春話で
    いかにも初期の三島らしいものだが
    なんでも出征前の遺書代わりに書いたというふれこみだ
    たぶん義政に天皇を
    老医師には自分の理想を重ねているんだろう
    敗色濃厚な空気が、内容に強く反映されており
    その扱い方で、「明るさは滅びの姿であろうか」の太宰治と
    ウマが合わないのも納得できる
    ただし、出征直前の検査で三島は落とされた

    「夜の支度」
    学徒動員の入隊検査にハネられた青年が
    その鬱屈と性欲を持て余しつつ、彼女の疎開先を訪れる
    彼女は、青年との一夜を持つために
    嘘をついて母親を旅行に出したのだが
    それを彼女ひとりがやり遂げたという事実によって
    なぜか青年の自尊心は傷つけられるのだった

    「家族合わせ」
    「仮面の告白」および「金閣寺」の原型と思われる作品だが
    同性愛はあまり強調されておらず
    むしろここでは、死んだ妹への屈折した愛情が告白されている
    戦争中に両親をうしなった兄妹の話
    娼婦になってしまった妹は、家に男を連れ込んで兄を苦しめるのだった
    三島の中で「大人になること」と「死を受け入れること」が
    強く結びついているとわかる

    「宝石売買」
    ダイヤモンドはただの石、という認識にもとづくならば
    その価値を決めるのはしょせん人間の気分であるが
    ここに登場する貴族の娘は
    姉から受け継がれた宝石の価値を
    己の意志によって裏付けするのだった
    しかしその意志は
    堕落を求める心から逆説として導き出されたものであるらしいことに
    彼女はまだ気づいていなかった

    「孝経」
    ひそかに堕落を求める心がロマンチシズムを生み
    隠し持ったロマンチシズムが羞恥心を生む
    羞恥心は逆説的にロマンチシズムへの逃避を肯定するだろう
    しかし、逃避行のうちに堕落した自分自身の影が見いだされたとき
    羞恥を深める人々は
    さらに隔絶した欺瞞の物語世界へ逃避を図るのだった

    「剣」
    大学の剣道部主将が
    合宿先で規律を破った部員たちに
    誇りを傷つけられ
    腹を切って死んでしまう話
    純粋な少年のファシズムというべきか
    しかしそれは、真の意味でアンチ・オイディプスなのかもしれない

  • 『中世』
    擬古文体のうえに、物語の起伏もないので、読み物としてはつまらないとおもう。

  • 何ともすっきりしない読後感の短編が6編。
    すっきりしないが文章は美しい。
    そして彼が描く「年上の男性に憧れる少年」はみんな何とも言えず可愛らしいのだ。流石。

  • 再読。「剣」以外は比較的初期(昭和20年代前半)の短編。イビツな家族ものが多かった印象。しかしこの心理描写の綿密さ、恐ろしい。

    時代もの(足利義政)の「中世」のお耽美さはやはりたまらない。「剣」の青年たちの潔癖さや歪んだ友情(愛情)も。

    ※収録作品
    「中世」「夜の支度」「家族合せ」「宝石売買」「孝経」「剣」

  • 初期三島の短篇集。純粋精神に基づく高貴な美意識には絶えず死と隣り合わせの緊張感に奮えていて読むのが辛かった。これほど綺羅びやかに美しく厭世観を著す人は三島の他には思いつかない。美しすぎて滑稽にすら感じる。彼の主義主張に私はついていけない。なのに「いつ来るかわからぬ赤紙にそなえて遺書のつもりで書いた作品」である『中世』の絢爛な頽廃感を秘める魔力に抗うことはできない。

  • 剣を読んだ時にはビビりました。文字を読んでいて、この小説ほど情景が浮かんできたものはありません。

全7件中 1 - 7件を表示

著者プロフィール

三島由紀夫

一九二五(大正一四)年東京に生まれる。本名、平岡公威。学習院高等科を経て東京大学法学部を卒業。在学中の四四(昭和一九)年に処女創作集『花ざかりの森』を刊行。戦後四七年大蔵省に入り翌年退官。四九年に刊行した『仮面の告白』で名声を確立し、以後、文筆活動に専念する。『潮騒』にて新潮社文学賞、『白蟻の巣』にて岸田演劇賞、『金閣寺』にて読売文学賞、『絹と明察』にて毎日芸術賞、『サド侯爵夫人』にて芸術祭賞などを受賞した。六八年、「楯の会」を結成し、七〇(昭和四五)年、自衛隊市ヶ谷駐屯地で自決。

「2020年 『三島由紀夫 石原慎太郎 全対話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

三島由紀夫の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
三島由紀夫
ドストエフスキー
三島由紀夫
三島由紀夫
ヘミングウェイ
フランツ・カフカ
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×