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- Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061976665
感想・レビュー・書評
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プロレタリア文学という先入観を持って読んだせいか、もっと重々しい作品を想像していたが、読んでみると、思想性はあまり感じず、人間の心の機微を丁寧に描いた作品という印象が強かった。
冒頭の浅草の場面や、自宅での家族・友人とのやり取りの場面などは、まるで映像を観ているかのように鮮明に目に浮かんだ。
折江の心の浮き沈みが、時代背景の閉塞感ともシンクロして、読んでいる側も息苦しくなるほどだった。
ただ、全体的には後味は悪くない、むしろ希望さえ感じるような作品だった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
治安維持法による共産党弾圧を背景に、自身も執行猶予中の作家の折江の夫惣吉は家庭を顧みなくなり、夫婦間もギクシャクとし、妻の哀しい触角で浮気を感じる。折江の友人の和歌と関係がある惣吉は証拠があろうと和歌が白状しようと頑として否定する。もう一人の友人数子を宮本百合子、和歌を田村俊子、折江を佐多稲子、惣吉を窪川鶴次郎と読める私小説。折江が惣吉と性愛を結んで事実を有耶無耶にし、自分が被害者の立場から夫との共犯者の加害者の立場になったと思い、和歌を憐れむのが全く理解出来なかった。夫婦とは色んな形があるものだな。
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