- Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061976719
作品紹介・あらすじ
1899年ロシアの名門貴族として生まれ、米国に亡命後『ロリータ』で世界的なセンセーションを巻き起こしたナボコフが初めて英語で書いた前衛的小説。早世した小説家で腹違いの兄セバスチャンの伝記を書くために、文学的探偵よろしく生前の兄を知る人々を尋ね歩くうちに、次々と意外な事実が明らかになる。
感想・レビュー・書評
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ナボコフを読むのは初めてなのだけれど、こんなにみずみずしくて人を引き付ける文章を書く人だったとは。お兄ちゃん大好きな弟の、最短距離を行かない不器用さと誠実さが胸にすっと入り込んでくる。
謎の女ニーナを追う旅と、断片的に挿入されるセバスチャンの著作紹介のどちらも目が離せない。物語の中で登場人物を補完するために参照される架空の本を、実際に読んでみたいと思ったのは初めてだった。どれもすごく面白そうなのだ。
セバスチャンの本の登場人物によく似た人が本編に現れたり、弟君がお兄ちゃんがはまった落とし穴に落ちかかったり、セバスチャンの人生・セバスチャンの書いた物語、弟君の人生・弟君が書いた(という設定の)本編が相互に反射するような構成になっている。物語が終わるとき、弟君はどこへ行ってしまうんだろう、弟君の現実に戻れるんだろうか、と不安な雰囲気がただよう。愛情過多の哀しさというか。
しかしニーナはほんとに怖いというか迷惑な女だったよ...詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
11/27 読了。
BLだった。BLだったよ。 -
夭逝した作家の兄セバスチャンの伝記を書くために彼の足跡を辿る腹違いの弟V。兄の旧友や元恋人などを辿っていくうちに、浮かび上がる謎めいた「最後の恋人」の存在。ニーナとは誰なのか、筋書きの表面だけを追えば一見ミステリー仕立てではあるのだけれど、内実はもっと複雑。
なんというか、ナボコフの小説の構成というのは、一種変質的ですよね。ものすっごく細かい細工ものをつくる職人のこだわりというか。2時間もあれば読み終わる売れ筋の国産エンタメ小説が容易にカタルシスを得られる簡単なパズルだとしたら、ナボコフの作品はいくらこねくりまわしても全面けして揃わない多面体のルービックキューブのようなものに思えます。
本作でも、セバスチャンの残した数点の小説について綿密に内容が語られ(そこまで書くなら読ませてくれ!笑)、しかもその内容に照応した人物が語り手Vの前に次々と現れてきたり、思いがけない人物が繋がっていたり、嘘をついていたり、どんどん絡めとられてずぶずぶ深みにはまっていってしまう。
ニーナにはまんまと「やられた!」感があったのですが、冷静に考えると語り手Vが彼女と同じやり方で嘘をついていないとは言い切れないんじゃないかという疑惑も沸き起こってきます。ラストでの同一化はいろんな解釈が可能だと思うのだけれど、セバスチャンの経歴はナボコフ自身と重なる部分が多く、そしてVもまたウラジミールのイニシャルであることを考えると、むしろあのラストは「すべてがナボコフだった」という解釈もありなのかな、なんて思ったりもしました。 -
世に知られた人物は死後、伝記が書かれることがある。読者は伝記を読むことによりその人物がどんなことを感じたり考えたりしながら生涯を送ったかを知ることができる。自伝と違って他人が書く伝記は断片的に知り得た事実を推測と想像でつなぎ合わせて生涯を綴る。それは真実を伝えているのだろうか。架空の作家(亡命ロシア人)の伝記を書こうとする語り手(異母弟)の物語は架空の作品内容と関係者の証言、語り手の想いと思い出が錯綜し、平坦な地面を歩いているといきなり泥沼に足をとられるような内容だった。
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理想のテクストへの旅路。セバスチャンという存在は、本の中で無限に反復されていく。でもその本についてわれわれに教えられるのは、Vだけ。
謎にたどり着くための最後の言葉は、ロシア語。 -
早世した作家で腹違いの兄・セバスチャンの伝記を書き記そうとする”ぼく”は、彼を知る人々を訪ね歩くのだが……。
引用されるセバスチャンの作品と”ぼく”の出会う現実との照応関係に目が眩む。読み解こうとすればするほど曖昧としてくるセバスチャン・ナイトの生涯は迷宮のよう。また、前衛的であり、巧妙なミステリ・パロディでもあるそれらの作品はなんとも魅力的。『プリズムの刃先』や『成功』を読んでみたい。 -
・ナボコフが初めて英語で書いた小説。
・十分味わいきれず。悲しみが基調の作品で好ましかった。特に最後の取り違えシーン。 -
いま読んでいるところ。