流離譚 下 (講談社文芸文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (560ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061982031

作品紹介・あらすじ

安岡文助の次男嘉助は天誅組に入り京都で刑死するが(上巻)、一方長男覚之助は勤王党に関わって、入牢、出獄の後、討幕軍に従って戊辰戦争に参戦、会津で戦死する。戦いの最中に覚之助が郷里の親族に宛てた書簡を材に、幕末維新の波に流される藩士らの行く末を追って、暗澹たる父文助の心中を推し測りつつ物語る。土佐の安岡一族を遡る長篇歴史小説。全二冊完結。

感想・レビュー・書評

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  • 安岡家の流離譚は、土佐の幕末から維新の歴史と重なってゆく。坂本龍馬や中岡慎太郎、久坂玄瑞などの志士たちとの接点が語られるところもあり、ひとつの家系の歴史では収まらなくなっていくところが読みどころ。

    しかし底流にあるのは市井の声。
    書簡を紐解くことによって現代と当時とが幽かに道を通ずることの、そこはかとない神秘性に感動する。

    本作をものすことに、どのくらいの歳月がかかったのか不明だが、おそらく相当なエネルギーを割いて書簡にあたり、現地に足を運び、ひたすらに過去のその時をいまに現出させようと挑む。その、ひとりの人間(著者)のおそるべき執念を覗き見ることができたことだけでも収穫。ここまでのレベルでこだわり抜いた作というのも、なかなか世に無い。

  • 戊辰戦争で東北雄藩と戦って死ぬ藩士を軸に安岡一族の歴史を書く。 安岡文助の次男嘉助は天誅組に入り京都で刑死。そして本家を継いだ兄・覚之助は会津で戦死する。三男の道之助は自由民権運動へ。そして本家および3兄弟の西家の没落。覚之助が郷里の親族に宛てた書簡を材に詳細な歴史が語られる。覚之助を慕って明治に入り東北へ居住した一族。一人一人が歴史の中で精一杯生きたにもかかわらず僅か100年ほどの間に埋もれてしまい、墓さえも見つからない。人の一生の虚しさも感じさせる感動の巨編でした。

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著者プロフィール

安岡章太郎

一九二〇(大正九)年、高知市生まれ。慶應義塾大学在学中に入営、結核を患う。五三年「陰気な愉しみ」「悪い仲間」で芥川賞受賞。吉行淳之介、遠藤周作らとともに「第三の新人」と目された。六〇年『海辺の光景』で芸術選奨文部大臣賞・野間文芸賞、八二年『流離譚』で日本文学大賞、九一年「伯父の墓地」で川端康成文学賞を受賞。二〇一三(平成二十五)年没。

「2020年 『利根川・隅田川』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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