神戸・続神戸・俳愚伝 (講談社文芸文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061982123

作品紹介・あらすじ

"東京の何もかも"から脱出した"私"は、神戸のトーアロードにある朱色のハキダメホテルの住人となった。第二次世界大戦下の激動の時代に、神戸に実在した雑多な人種が集まる"国際ホテル"と、山手の異人館「三鬼館」での何とも不思議なペーソス溢れる人間模様を描く「神戸」「続神戸」。自ら身を投じた昭和俳句の動静を綴る「俳愚伝」。コスモポリタン三鬼のダンディズムと詩情漂う自伝的作品三篇。

感想・レビュー・書評

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  • 父に勧められて読んだ。
    自由人たちのお話。淡々としてるのに妙に引き込まれる面白さ。1人だけあだ名で呼ばれない原井さんのキャラクターが好き。

  • 2016/1/3購入

  • 戦中・終戦直後の神戸周辺の風俗が描かれていますが、いかにも神戸が外国人が入ってきて風俗が乱れていたという世界を紹介しているような気がします。神戸・続神戸とも今ひとつ。俳愚伝では俳句を始めたばかりの著者が「馬酔木」句会に出席した際に水原秋桜子、石田波郷に出会った場面は面白く書かれていました。戦前の京大の句会に入り、「アカ」とされたということになってしまいます。ここでも日野草城が山口誓子、水原秋桜子と並んで登場するのが嬉しいですね。かなり古色蒼然とした本でした。

  • ★おそるべき 君等の乳房 夏来る は神戸の夏だったのか★

    西東三鬼は本名を斎藤敬直、今から113年前の1900年5月15日に岡山県で生まれて51年前の1962年4月1日に61歳で亡くなった歯科医師をしながら俳人だった人。

    私は『西東三鬼集 現代俳句の世界9』( 朝日新聞社・朝日文庫1984年)という本で初めて彼に接したのですが、その本には序文に五木寛之の「ドストエフスキ的人物の遠景」と題された刺激的な一文があり、私がもっともさかんに俳句熱にうなされていた中2のときに読んで、多大に影響されたものでした。

    本書は俳句ではなく、戦中戦後に神戸に暮らした時の自伝「神戸」「続神戸」と、その前後の俳句の世界の動向を表した「俳愚伝」の散文三作品。神戸の山手の不思議なホテルを巡って、個性と国際色豊かで、したたかで愛するべき庶民が太平洋戦争前後にどう生きたかが描かれ、悲惨だけれども明るく暖かかった暮らしぶりが活き活きと伝わるものです。

    彼と同じくして、寺山修司や秋元不死男の俳句と短歌にも触れる機会を得たこともありますが、それまで漠然と、おばあさんになっても短歌や俳句をはじめとする詩歌を相手に生きていくのも案外悪くないんじゃないか、などと思っていた私は、詩人や俳人歌人には申し訳ありませんが、詩歌じゃ何も始まらないし何も変わらないんじゃないかと思いはじめて、つまり短絡的に言ってしまえば、いわゆる短詩形文学の表現の限界とでもいいますか、まあそういうことを生意気にも思ってしまって、まだその分野で大成したわけでもないのに、あっさりと意気消沈して熱が冷めてしまったのでした。

    それはともかく西東三鬼は衝撃的でした。
    それまで、形式ばらない私でさえ本格的に俳句をやるには、どこかの秘密結社じゃなかった俳句結社に入って誰かの弟子にならなきゃなんないし、一所懸命に歳時記なるものと首っ引きになって、あらゆる季語を熟知することに努めていたのに、彼はこのハードルをいとも簡単に蹴飛ばして、どんな師弟関係もなしにすばらしい俳句を作り、しかもなんとその俳句は見事に季語を無視したもので、さすがに自由律といって五・七・五まで崩すということは全面的にはしていませんが、いずれにしろ個性的な俳句というのではなく、誰も真似のできない西東三鬼の俳句を確立したことは間違いないと思います。

  • 今のとこ、個人読書史最高峰。

  • この本の紹介文を見たとき、すぐに思い浮かんだのが色川武大=阿佐田哲也だった。戦中、戦後の混沌とした状態を綴る話はあるようであまりない。そんななかで、色川の一連の作品は金字塔のごとく聳え立っているので、怪しげな人々との交遊を描く作品を読むと、どうしても比較してしまう。色川が文句なしに面白くギラギラとした剥き出しの生を活写しているのに比べ、この本はさほど面白くない。ただ、書かれた時期を考えると、この本のほうがはるかにさきであるので、歴史的な価値はあると思う。

  • My most favorite novel in the past few years!
    そうだ、神戸へ行こう!

  • 神戸を舞台にした戦時下の小説より奇なるお話【赤松正雄の読書録ブログ】

     週末あれこれ新聞を整理しているなかで、神戸新聞夕刊の「随想」というコラムが目に留まった。写真家・森山大道さんの『遠い日の神戸』(5月1日付け)である。そこでは、仕事机脇のキャビネットの中に、常に入っていて、「日常にさり気ない安らぎをもたらせてくれている」うえに、「人間存在の確かさと、生きることの哀感が共振するメッセージとして、ぼくの生へと伝わってくる」本を3冊あげている。エリアス・カネッティの『マラケシュの声』、エリック・ホッファーの『波止場日記』、西東三鬼の『神戸・続神戸』である。思わず惹き込まれた。早速、このうちの西東のものを読んだ。なかなか面白かった。

     ホッファーの本は、かつて大学時代に永井陽之助先生に薦められて手にしたことはあるが、神戸を第二の故郷にしながら、この本は知らなかった。ひたすら恥ずかしい。

     先の大戦下の神戸を舞台に、ありとあらゆる職業の内外の人々が集まった「国際ホテル」での出来事の数々。正編で10話、続編で5話から成り立つが、フィクションは避けて、実際にあったことのみを書いたという。事実とするなら、文字通り「小説よりも奇な」る話が次々と登場、下手な小説など傍にもよせつけないほどの奇抜さだ。

     西東三鬼は俳人として著名(この本には『俳愚伝』も収められており、昭和における「俳句」への弾圧の実態を鋭くえぐっている)だが、25歳からの数年をシンガポールで過ごした。白洲次郎が遊学したイギリスでその人間性の大半を形成したように、彼にとってのシンガポールはその個性のバックボーンを確実に作ったのではないかと思われ、興味深い。

  • ああ、読みたい、読みたい。

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著者プロフィール

明治33年、岡山県生まれ。18歳で両親を失い、東京の長兄のもとで歯科医となり、患者に誘われて33歳で俳句を始める。俳号の三鬼は「サンキュー」のもじり。3年後に発表した「水枕ガバリと寒い海がある」が俳壇を騒然とさせ新興俳句の旗手となる。戦時下に詠んだ「昇降機しづかに雷の夜を昇る」が世情不安を煽ると弾圧され、以後潜伏の身に。昭和17年に神戸に転居、終戦後には現代俳句協会を創設し、山口誓子を擁して俳誌「天狼」創刊の中心となる。自らも「激浪」を主宰。一時は雑誌『俳句』(角川書店)の編集長も務めた。昭和37年に永眠。

「2017年 『西東三鬼全句集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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