日の果てから (講談社文芸文庫)

著者 : 大城立裕

• 講談社 (2000年6月9日発売)

作品紹介・あらすじ

1945年4月、アメリカ軍沖縄本島に上陸。凄絶な地上線の"地獄絵"の中、逃げ惑う住民。刑務所も遊廓も、そこに縛られる人々も何もかも、沖縄は死の渦のなかで回転しやがて敗戦とともに浄化される。神女殿内(のろどんち)の家柄である神屋家を絡め、文化、歴史、風土を背景に太平洋戦争末期の沖縄戦を神話的世界にまで昇華させた傑作長篇。平林たい子賞受賞。

感想・レビュー・書評

[麦さんの感想 · 2021年7月20日]

戦争の影響で沖縄の文化がどう変わったかを探ろうという試み「三部作・戦争と文化」の第一部。

砲撃から逃れるため人々が南へと歩いていく。刑務所もまた、その体制をどうにか保ちながら移動する。色んな身分や立場の人たちがいるが、多くの命が失われる中で、戦争はそんな垣根をも壊していく。

沖縄の月はやはり特別のように感じるがなぜだろう。酷たらしい戦場でありながら、島全体の神秘性と人々の信仰心が沖縄という土地をことさら濃く浮かび上がらせる。

壕から壕へと追い立てられる戦火のさなかでも洗濯はしたくなる気持ちは何か解る気がする。

著者プロフィール

大城立裕（おおしろ・たつひろ）
１９２５年沖縄県中頭郡中城村生まれ。沖縄県立二中を卒業後、上海の東亜同文書院大学予科に入学。敗戦で大学閉鎖のため、学部中退。’４７年琉球列島米穀生産土地開拓庁に就職。’４８年野嵩（現普天間）高校教師に転職し文学と演劇の指導にあたる。’４９年『老翁記』で小説デビュー。’５９年『小説琉球処分』連載開始。’６７年『カクテル・パーティー』で芥川賞受賞。『恩讐の日本』、『まぼろしの祖国』、『恋を売る家』など著作多数。また沖縄史料編集所所長、沖縄県立博物館長などを歴任。

「2015年 『対馬丸』 で使われていた紹介文から引用しています。」