アメン父 (講談社文芸文庫)

著者 :
  • 講談社
3.69
  • (3)
  • (5)
  • (8)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 40
レビュー : 1
  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061982420

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • くっきりとした記憶のわきから靄のような記憶が割り込んできていつのまにかその輪郭は明確になり、そしてその間にも別の記憶が朦朧としたままどこからろもなく湧きだしてきて…ということを考える。

    とてもあいまいで、いろいろと見聞きはしてきたし、それよりなにより(赤の他人にくらべて)長きにわたり実際に触れあってきたけど、知っている、とははっきりと言いきれない、父親のすがたかたち生きかたを、まわりくどい言い方を厭わずに書きつらね続けた(おそらく著者だったらここで「生きかた」なんて言いまわしは使いたがらないだろう)ことにつよい感嘆をおぼえるのである。

    なにかをおもいだしているうちに、ふっと別のことがあたまをよぎり、つぎの瞬間にはそのことが頭のなかの大半を占めているというような、記憶のよみがえりかたがそのまま文章になったようで、そういう箇所に出くわすたびにゾクゾクしてしまう。とおもうのは自分だけだろうか。

全1件中 1 - 1件を表示

著者プロフィール

田中小実昌

一九二五年、東京生まれ。小説家・翻訳家。東京大学文学部哲学科中退。七九年、『香具師の旅』で直木賞を、『ポロポロ』で谷崎潤一郎賞を受賞。二〇〇〇年没。主な著書に『アメン父』『上陸』『自動巻時計の一日』『くりかえすけど』、訳書に『湖中の女』(レイモンド・チャンドラー)、『郵便配達は二度ベルを鳴らす』(ジェームズ・M・ケイン)などがある。

「2020年 『ほのぼの路線バスの旅』 で使われていた紹介文から引用しています。」

田中小実昌の作品

ツイートする
×